球~行き着く先は、世界の端~

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34 鈴蘭の思い(脚本)

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〇屋敷の一室
  昔語りを終えたハランと鈴蘭。
  そしてシャラ。
ハパルム「誰が悪い・・・とも言いたくないな」
ミムレット「全員悪いだろ。結果は最悪だ」
ミムレット「ハパルムだって見ただろ? 争って荒れ果てて」
ミムレット「弱いやつがまた弱いやつから奪う様を」
ハパルム「確かにそうだけど・・・「球」を作った人たちはそんなこと望んでなかった」
ミムレット「お前の兄さんだって、ひどい目にあったのに!」
  ハパルムは目を見開き、身を硬くした。
ミムレット「・・・悪い」
ハパルム「大丈夫」
ハパルム「我慢してる訳じゃないよ?ミムレット」
ハパルム「「誰が悪い」って言いたくないのはね」
ハパルム「だって、みんな救いたかったし、救われたかった。それだけじゃないかな、って」
ミムレット「それだけ・・・」

〇中東の街
  ミムレットの脳裏に、記憶の影がちらついた。
  ハパルムと初めて会った時だ。
  ミムレットは一体のモンスターを倒した。
  ハランやハパルムが、食われそうになっていたから。
  けれど、そのモンスターはハパルムの兄さんだった。
ハパルム「どうして殺したの!」
  そう言って、ハパルムは泣きじゃくった。
ミムレット「だって、ハランも...あいつだって、喰われかけてたんだ」
ミムレット「でも、倒しちゃダメだった?」
ハラン「ミムレットはモンスターを倒した」
ハラン「でも、彼女は兄君を喪った」
ハラン「それだけだ」
ミムレット「それだけ、って」
ハラン「それだけだが──」
  ハランは何て言った?

〇黒背景
ミムレット「「それだけ」が」
ミムレット「難しい・・・」

〇屋敷の一室
  三角の耳をペタリと折りたたんだミムレット。
ハパルム「ミムレット?」
鈴蘭(リンラン)「お嬢さん達」
鈴蘭(リンラン)「団子はもういいのかい?」
  鈴蘭は二人の前に、団子を差し出した。
ミムレット「あんた敵だろ!すり寄ってくるな!」
ハパルム「そうですよ!あんな話しておいて」
鈴蘭(リンラン)「あはは。だからだよ」
ハパルム「えっ?」
  鈴蘭の切り返しに、ミムレットもハパルムも勢いを失った。
鈴蘭(リンラン)「お互いの腹の内は分かったろう? 向いている方向が違うって」
鈴蘭(リンラン)「泣こうが喚(わめ)こうが、説得は無駄」
鈴蘭(リンラン)「火蓋(ひぶた)が落ちれば、敵同士だ」
鈴蘭(リンラン)「でも、まだそうじゃない」
鈴蘭(リンラン)「だからさ」
  鈴蘭は団子の盆を引き寄せると、山の一つをつまんで、口に放り込んで見せた。
鈴蘭(リンラン)「つかの間の平和に、妹弟子(いもうとでし)と食事を囲みたいんだよ」
ミムレット「妹弟子(いもうとでし)?」
ハラン「ハパルム、ミムレット」
ハラン「挨拶をしよう」
ハラン「改めて──」
ハラン「お久しぶりです。師姉(しし)」
  ハランは、鈴蘭に深く一礼した。
鈴蘭(リンラン)「久しぶりね、師妹(しまい)」
  鈴蘭も、ハランに礼を返した。
ミムレット「しし?」
ハパルム「しまい?」
鈴蘭(リンラン)「あはは」
鈴蘭(リンラン)「よその国の人には、難しいか」

〇中華風の通り
  鈴蘭(リンラン)の国では
  師匠へ師事した順に、名称が変わる。
  ハランと鈴蘭の場合は──
鈴蘭(リンラン)「私が先に師事していたから 姉弟子──師姉(しし)ね」
ハラン「私は、師姉(しし)から見れば妹弟子── 師妹(しまい)になる」

〇屋敷の一室
  いまいちピンとこなかったミムレットとハパルムだった。
ミムレット「師姉(しし)って「球」を創ったやつだろ?」
ハパルム「違うよ、ハランさんから見たら鈴蘭さんも師姉(しし)ってことで・・・」
鈴蘭(リンラン)「いいよいいよ、覚えなくても」
鈴蘭(リンラン)「ハランも」
鈴蘭(リンラン)「修行の場でもないし、好きに呼んで」
ハラン「わかった。鈴姉(リンねえ)」
鈴蘭(リンラン)「さっきも言ったけどね。私は確かに、あんた達の信念とは相容れない」
鈴蘭(リンラン)「でも、ハランのことは大好きだよ」
鈴蘭(リンラン)「もちろん、お連れさん達もね」
鈴蘭(リンラン)「私たちは違う方を向いているけど」
鈴蘭(リンラン)「愛しい誰かに、変わりはないんだよ」
鈴蘭(リンラン)「それだけは信じてほしい」
鈴蘭(リンラン)「私も信じたいんだ」
鈴蘭(リンラン)「愛しい誰かを思う気持ちを」
鈴蘭(リンラン)「変わらずに持ち続けられる、と」

次のエピソード:35 シャラと小娘(こむすめ)たち

コメント

  • なるほど! 悪があるのではなく、それぞれの善がありますね。
    お互いに人を思ってのことなのに、方向性が違うというのが難しい。
    「それだけ」というのが、実は難しいことなのですね深いです😀

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