球~行き着く先は、世界の端~

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35 シャラと小娘(こむすめ)たち(脚本)

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〇屋敷の一室
  鈴蘭はおおらかに笑いながらミムレットに向き合った。
鈴蘭(リンラン)「ねえ、お嬢さん」
ミムレット「ミムレットだ」
鈴蘭(リンラン)「ミムレットさん。 ハランを借りてもいいかい?」
  ミムレットはハランを背に、牙を剥いて唸った。
ミムレット「嫌だ!どこに連れていく気だ?」
鈴蘭(リンラン)「あらあら、大丈夫だよ」
鈴蘭(リンラン)「ちょっと話したいことがあるの」
  鈴蘭は穏やかに語りかけた。
ミムレット「だったらここで良いだろ!」
  ミムレットは一歩も譲らなかった。
鈴蘭(リンラン)「あらあら、困ったねぇ」
  ちっとも困った様子ではない鈴蘭に、唸り続けるミムレット。
シャラ「話が進まん」
シャラ「小娘は私が預かる」
シャラ「用があるならさっさと済ませろ」
ミムレット「はあ?行くわけない──」
  ガシッと襟首をつかまれたミムレット。
ミムレット「ミギャァァア!!」
  抗議の声も虚しく、ミムレットは引きずられていった。
ハパルム「もー、ミムレット、少しは反省して──」
シャラ「お前もだ、小娘」
ハパルム「え?」
ハパルム「どうしてえぇぇ?」
  同じく引きずられて行ったハパルム。
  彼女らを見送って、鈴蘭は笑った。
鈴蘭(リンラン)「かわいい子達だ」
ハラン「かわいいだろう?」
鈴蘭(リンラン)「・・・でも、話してなかったのね」
鈴蘭(リンラン)「私のことも、姉君のことも」
  ハランは、わずかに睫(まつげ)を伏せた。
鈴蘭(リンラン)「ねえ、ハラン」
鈴蘭(リンラン)「あの子達は、率いなければならない兵でも」
鈴蘭(リンラン)「導かねばならない弟子でも無いのよ?」

〇後宮の庭
  庭園まで引きずられてきたミムレットとハパルム。
ミムレット「何するんだよ!」
シャラ「話の邪魔になるだけだ」
ハパルム「そ、そんなことないです!!」
  ミムレットとハパルムは、かわるがわる抗議した。
シャラ「うるさいな」
ハパルム「なっ」
ミムレット「こいつ、言うに事欠いて・・・」
ミムレット「──もういい!白黒つけてやる」
シャラ「やる気か?小娘」
  ミムレットは低く唸りながら、シャラをにらみ据えた。
ハパルム「ミムレット!抑えて、抑えて!」
ミムレット「──やらないよ」
  ミムレットは力を抜いて尻尾を下げた。
ミムレット「敵わないのは、知ってるさ」
ミムレット「どうしてアタシは──」
ミムレット「おまえやハランみたいに、強くなれないんだろう」
  ──シャラ──
  ミムレットに、遠い昔の面影が重なる。
  口もとを震わせながら、その少女は言った。
面影の少女「どうして?」
面影の少女「どうして私は、シャラみたいに強くなれないの」
面影の少女「頑張って、頑張って、頑張った」
面影の少女「でも、出来なかった」
  ──もう、頑張れない──
  ──ごめんなさい、姉さん──
シャラ「シュロ──」
  花風に呟いたシャラに、ハパルムが首をかしげた。
ハパルム「シュロ?」
  シャラは、空に顔を向けた。
シャラ「・・・妹だ」
ハパルム「妹さんがいるんですか?」
ミムレット「また、妹弟子(いもうとでし)とかだろ?」
シャラ「実の妹だ」
ミムレット「へえ?おまえ、姉さんだったのか」
ハパルム「妹さんは、外にいるんですか?」
シャラ「もういない」
  ミムレットもハパルムも、はっとして耳をそば立て、目を見開いた。
ハパルム「あっ、ご、ごめんなさい」
ミムレット「アタシも、悪い。茶化すつもりじゃなくて・・・その」
ミムレット「・・・戦か?」
  シャラは、庭園の柱に手を伸ばし、表面を指先でなぞった。
シャラ「人の手など、借りなかったさ。妹は」
シャラ「さっきの問(とい)」
ミムレット「え?えと」
シャラ「私より「強くなれない」のはなぜか」
シャラ「おまえと私達とでは、修行に使える 「時間」が違う」
シャラ「私達は武の道一本だ。それだけに打ち込み、それで食ってる」
シャラ「おまえは違うだろう?」
シャラ「それに」
シャラ「ハランや私の一門は、他の人間より長生きだ」
シャラ「そもそもの残り時間も違う」
ミムレット「でも」
ミムレット「時間があっても、おまえ達みたいにはなれない・・・気がする」
  シャラは声をたてて笑った。
シャラ「その時は諦めろ。伸び代がなかったと」
ミムレット「真剣に聞いてる!」
シャラ「真剣に答えたさ」
  シャラはミムレットに歩み寄った。
シャラ「小娘、心に刻め」
シャラ「修行に励めば、強くなる」
ミムレット「知ってるよ!」
シャラ「「ある程度までは」だ」
ミムレット「ある程度?」
  シャラは真っ直ぐ、ミムレットの頬を両手で包んだ。
ミムレット「な、何するんだ」
  シャラは、そのままミムレットの頬を撫でた。
シャラ「人には限界がある。どんなに努力しても、頭打ちになる日が来る」
  静かに、噛(か)み含めるように、シャラは続けた。
シャラ「努力の果てに「ある程度まで」が来る」
シャラ「悲しかろうが苦しかろうが限界が来る」
  ミムレットの頬をはなすと、シャラは銀色の頭をワシャワシャと撫でた。
シャラ「そうなったら、せいぜい──」
シャラ「頑張った自分を褒めてやれ」
シャラ「それだけは教えてやれんのだ。 私も、ハランも」
  シャラは踵を返した。
ハパルム「あ、あの!」
シャラ「ん?」
  足を止めたシャラに、ハパルムが呼びかけた。
ハパルム「1つ、教えてほしいことがあります」
シャラ「なんだ」
ハパルム「え、えと──」
ハパルム「この街に来た、目的です」

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