漆黒のデュランダル伝説 ~ただの中二病の俺が勇者に祭りあげられてしまった件~

ウロジ太郎

第4章第5節 『ドラゴンの恩返し』(脚本)

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〇空き地
  虹色のドームが発生している。
  ヨルムンガンドは、ボロボロで白目を剥いたまま、地面に倒れている。
  その傍らには地面にへたり込む只野。
  目の前には、黒いエネルギー波を発生させたデフレエルがいる。
只野男志「こ、殺すのは最後にするって」
デフレエル「あれは嘘だ。気が変わった」
  黒いエネルギー波が巨大化する。
デフレエル「極大の滅びの波動で、跡形もなく消し去ってくれる」
  そのときヨルムンガンドが目を覚まし、只野とデフレエルの間に割りこむ。
ヨルムンガンド「グオオオッ」
デフレエル「わからぬな。なぜ偉大なる龍の一族が、矮小な人間の味方をする?」
ヨルムンガンド「ギャオオオオオッ!」
デフレエル「よかろう。死が望みならば、くれてやる」
只野男志「やばいやばい! ・・・って。あれ?」
  空き地の中心にあった虹色のドームが急速に巨大化しつつある。
只野男志「虹色のドームが、でっかくなってる・・・? もしかして、何かやばいやつ?」
  その瞬間、虹色のドームが一気に拡大。
  空き地を虹色の空間が埋め尽くす。
只野男志「げっ・・・」

〇時空の裂け目
ヨルムンガンド「グオオオオッ!」
デフレエル「く・・・っ! まさか、ヨルムンガンド、貴様!」
デフレエル「最初から余を時空嵐に巻きこむつもりであったか!?」
只野男志「時空嵐!?」
只野男志「それ、普通の人間が巻きこまれて、大丈夫なヤツなの~~っ!?」

〇カラフルな宇宙空間
  何もない虹色の空間に、意識を失った只野が浮かんでいる。
只野男志「・・・・・・」
  はっとして、目を見開く。
只野男志「・・・はっ。こ、ここは!?」
只野男志「・・・そうだ。 俺、時空嵐とかに巻きこまれて」
  周囲には、虹色の空間が広がるのみ。
只野男志「ここ、どこ?」
只野男志「・・・もしかして、死んだ? 天国か地獄か、大霊界か・・・」
  死んでにゃあぞ
  只野の目の前に、ボロボロのヨルムンガンドの頭部がヌッと現れる。
ヨルムンガンド「小生の加護がまだ、効いているからにゃあ」
只野男志「どわぁああっ!?」
只野男志「な、なな、ヨルムンガンド? ・・・でっかぁ!」
  虹色の空間に浮かぶヨルムンガンドの身体は、遠くにかすれて見えなくなるほど長く、巨大だった。
只野男志「っていうか、シャベッタァァァッ!」
ヨルムンガンド「この空間は、元の世界とは法則がちがうからにゃあ」
ヨルムンガンド「それがいい感じに作用しているんにゃよ」
只野男志「なるほど。いい感じに」
ヨルムンガンド「ご主人、ケガはにゃあか」
只野男志「あぁ、うん。 おかげさまで・・・って、デフレエルは?」
ヨルムンガンド「迷子になってるはずにゃ」
ヨルムンガンド「あいつはこの空間、時空の彼方の初心者にゃからにゃ」
只野男志「・・・時空の彼方?」
ヨルムンガンド「にゃ。小生が封印されてる空間にゃ」
ヨルムンガンド「今は時空嵐で元の世界と繋がって、一時的に出入りできるにゃ」
只野男志「つまり、ここから出られるんだな!」
ヨルムンガンド「そうにゃ。 さぁ、時空嵐が消える前に脱出するにゃよ」
ヨルムンガンド「時間が無いにゃ。小生の角に捕まるにゃ」
只野男志「龍に乗って飛ぶとか。 なんかあれ思い出すな。昔話的な」
  ヨルムンガンドが急加速する。
只野男志「うわぁああっ!」
只野男志「速い速い! 落ちちゃう!」
只野男志「ギャーーーーッ!」

〇時空の裂け目
  虹色の空間の中に渦巻く嵐がある。
  その奥に穴が空き、街の風景が見える。
ヨルムンガンド「あと一息にゃ」
ヨルムンガンド「あとはあの穴を抜ければ」
ヨルムンガンド「・・・にゃっ!?」
  そのとき黒いエネルギー波が飛来し、空中で炸裂した。
只野男志「この攻撃・・・デフレエル?」
ヨルムンガンド「あそこにゃ!」
  遠くに、怒気に顔を歪めたデフレエルの姿がある。
只野男志「猛スピードで、こっちに飛んできてる! めちゃ怒ってる! はやく逃げよう!」
ヨルムンガンド「無駄にゃ。このままだと、時空嵐を抜ける前に追いつかれるにゃ」
只野男志「えぇっ。どーすんの!?」
ヨルムンガンド「小生が食い止めるにゃ。 ご主人は先に戻るのにゃ」
只野男志「だめだ! そんなの。 さっき2人で戻るって──」
ヨルムンガンド「時間がないのにゃ! ぶん投げるにゃよ。うまく着地してにゃ」
只野男志「えっ。ぶ、ぶん投げるって」
ヨルムンガンド「行くにゃよ~~」
ヨルムンガンド「名付けて、大邪龍魔球!」
只野男志「ちょ・・・ちょっ、まっ」
ヨルムンガンド「うにゃあぁぁあぁあっ!」
只野男志「う、うわあぁぁああああ~~っ!?」
  只野の身体が、時空嵐めがけて投げ飛ばされる。

〇空き地
  空き地を埋め尽くす虹色のドームから、只野が飛び出してくる。
只野男志「・・・ぎゃあっ!? ケツ打ったぁ! 割れる、割れちゃう!」
  うにゃああっ!
ヨルムンガンド「うにゃああっ!」
只野男志「・・・って、ヨルムンガンド!」
  只野がドームを見あげる。
  ドームには穴が空き、虹色の空間でヨルムンガンドとデフレエルが対峙しているのが見える。

〇時空の裂け目
デフレエル「ヨルムンガンドよ。 よくも余を虚仮(こけ)にしてくれたな」
デフレエル「その罪、万死に値する」
只野の声「ヨルムンガンド、逃げろ!」
デフレエル「そこにいたか、人間。 貴様の始末はあとでゆっくりと・・・む?」
只野の声「時空嵐の穴が、どんどん小さくなってきてる・・・?」
デフレエル「ヨルムンガンド、そうか貴様。 自らを犠牲に時間稼ぎを・・・おのれ!」

〇空き地
只野男志「・・・げっ。こっち来たっ!」
ヨルムンガンド「い、行かせにゃーーっ!」
デフレエル「なにっ。まだ動ける力が・・・うぐっ!?」
只野男志「巻きついた!」
ヨルムンガンド「逃がさない・・・にゃぁっ」
只野男志「もう、ボロボロなのに・・・なんで、そこまでして!」
ヨルムンガンド「ご主人、がんばってたからにゃ。 ずっと見てたにゃ」
ヨルムンガンド「だから小生も微力にゃがら・・・」
只野男志「俺は、自分が生き残りたいだけで」
ヨルムンガンド「小生は忘れていないにゃ」

〇通学路

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