雪まつりを楽しむわよ!(脚本)
〇貴族の部屋
メロエル城、サイネリアの部屋。
サイネリア「んんー! 今日もいい天気ね!」
サイネリア「今日も城下町に・・・」
タイクーン「行けたら良かったのになぁ・・・」
ギャラクシー「行けないんですよねぇ・・・」
サイネリア「言わないでよぉ・・・」
ギャラクシー「ああ、でももしかしたら 今日は許可がおりるかもしれません」
サイネリア「えっ? そうなの?」
タイクーン「ああ、そういや もうそろそろあの時期か!」
サイネリア「なにかあるの?」
ギャラクシー「サイネリア様はもう少し、 この国の文化に興味を 持ってください・・・」
サイネリア「あ、あははは・・・」
ギャラクシー「もうすぐ、雪まつりが 行われるんですよ」
ギャラクシー「我がメロエル王国は 雪が降らない地域ではありますが、 この時期は城下を飾って みんなお祭り騒ぎです」
ギャラクシー「幼い頃もご参加なさったでは ありませんか。 忘れてしまいましたか?」
サイネリア「んーと・・・」
〇雪洞
サイネリア(幼少期)「わーい! わーい!! まほうのゆきー!!」
タイクーン(幼少期)「まっ、まてよ! ころぶぞ!!」
サイネリア(幼少期)「わぁーい! たのしー! ぎゃらくしもはやくー!」
ギャラクシー(若い頃)「うん? なんか私だけ今とあまり 変わらないような・・・」
ギャラクシー(若い頃)「とにかく待ちなさい、2人とも!」
幼かったサイネリア様は、同様に
ガキンチョだったタイクーンと
私を伴って──
魔法で作られた雪の広場に
遊びに行ったんですよね・・・
〇貴族の部屋
サイネリア「・・・そんなこともあったわね」
タイクーン「あの時、どんどん先に行くアンタに ヒヤヒヤしたもんだぜ・・・」
サイネリア「子供だったもの・・・ 怖いものなんてなかったの」
ギャラクシー「──・・・」
サイネリア「・・・ん? ギャラクシー、どうかした?」
ギャラクシー「怖いもの、なかったんでしたっけ?」
サイネリア「え・・・?」
〇岩穴の出口
サイネリア(幼少期)「ぎゃらくし・・・」
ギャラクシー(若い頃)「サイネリア・・・ きみのことはこの私が・・・」
ギャラクシー(若い頃)「『────。』」
〇貴族の部屋
サイネリア「──!!」
ギャラクシー「──思い出したことが 他にもあるのかな?」
サイネリア「う、うーんと・・・」
サイネリア(今の記憶は・・・? ギャラクシーと昔、なにかあった?)
サイネリア(・・・思い出せない・・・ 大切なことのような気がするのに・・・)
タイクーン「俺はなんも思い出せないな? 疲れ果ててた記憶しかない」
ギャラクシー「まあ、君はそうだろうね。 ガキンチョだったし」
タイクーン「お前なぁ! 思い出の中でもガキンチョ 言ってたの、忘れてないぞ!」
サイネリア「ま、まあまあ!」
サイネリア「それで? 城下町に行く許可って・・・ なんでおりるの?」
ギャラクシー「ああ、もちろん視察ですよ」
ギャラクシー「飾り付けが進んでいるのか、 足りないものはないか、など・・・」
サイネリア「つまり、それって・・・」
ギャラクシー「「王女」としてなら、城下町に 行けるんじゃないか、という事です」
サイネリア「──・・・」
〇ヨーロッパの街並み
タイクーン「いつもより賑やかだな、街は」
ギャラクシー「そうだね。 飾り付けも女性たちが率先して やってくれているみたいだ」
ギャラクシー「とても華やかですね、王女様?」
サイネリア「え、ええ、そうですわね・・・」
タイクーン「・・・ぷっ」
タイクーン「くくく・・・無理してら」
サイネリア「あら、タイクーン? 何か面白いものでも見つけたの?」
タイクーン「ええ、それはもう! お淑やかな王女様という──」
タイクーン「いでっ!?」
ギャラクシー「いつものことじゃないですか、 王女様がお淑やかなのは・・・ 何言ってるんですか?」
サイネリア「うふふふふ!」
タイクーン(分かってるけど・・・ すげー腹立つな?)
ギャラクシー「それにしても意外でした。 王女様が城下に降りるとは・・・」
サイネリア「──逃げてばかりではいられないもの」
???「あー!! おねえちゃんだー!!」
サイネリア「──!!」
アン「おねえちゃん! ひさしぶりだねー!!」
サイネリア「あら、アン! 元気にしていた?」
アン「もちろんだよー!!」
アン「・・・でも今日のおねえちゃん・・・ おうじょさまみたい・・・」
サイネリア「・・・」
サイネリア「今まで黙ってたけど、そうなの。 私は、王女サイネリア」
アン「ええー!!」
アン「じゃあわたし、いままでずっと・・・」
アン「おうじょさまに しつれいなこと、してたー!?」
サイネリア「え!? いやいや、いいの! 大丈夫なのよ!」
アン「しらなかったから・・・」
サイネリア「黙っててごめんね・・・」
サイネリア「でも、アンのことは今でも 大切な友達だと思ってるよ!」
サイネリア「最初から王女だなんて言ったら、 きっとなれなかったお友達・・・」
アン「・・・うん、わたしもね、 おねーちゃんはともだちだよ!」
サイネリア「それなら、これからも 友達でいてくれるかしら?」
サイネリア「失礼だとか、そんなことは 一切気にしなくていいんだから!」
アン「おねーちゃんがいいなら、 もちろんわたしもいいよー!」
サイネリア「・・・よかった・・・」
アン「泣かないでー! おねーちゃん!」
ギャラクシー「・・・良かったですね、王女」
サイネリア「・・・うん」
サイネリア「アン、今日は王女として街に来たから、 お仕事があるんだ」
サイネリア「またいつか普通に遊びに来るから、 今の約束、忘れないでよ!」
アン「忘れないよ! わたしたちは、ずっとともだち!」
サイネリア「・・・うん!」
〇雪洞
サイネリア「うっわあああー!!」
サイネリア「すごい綺麗! これ、全部 魔法なのね!?」
ギャラクシー「そうですね。 幼い頃も説明しましたが・・・」
タイクーン「コイツが覚えてるわけないよな・・・」
サイネリア「そうそう! 覚えてるわけない!」
サイネリア「ってこら! さらっと「コイツ」呼ばわりしない!」
タイクーン「・・・失礼しました! ついうっかり!」
サイネリア「もう・・・ あら?あそこにいるのは・・・」
イチェルダ「これはこれは、王女様」
サイネリア「ごきげんよう、イチェルダ先生!」
イチェルダ「視察ですか? 珍しいこともあるものですね」
イチェルダ「ご公務に全く身が入って いらっしゃらなかったのに・・・」
サイネリア「す、すみません・・・」
イチェルダ「まあ、いいです。 こうして今年は来てくれたんですもの」
イチェルダ「あなたも1つ、雪を生み出して くださいませんか?」
サイネリア「雪を・・・? でも、私・・・」
イチェルダ「この前 お教えした魔法が ありますでしょう?」
イチェルダ「あれを応用すれば雪が作れるのです。 やってごらんなさい」
サイネリア「えーと・・・」
サイネリア「こうかな・・・」
イチェルダ「上出来です!」
イチェルダ「こんなに魔法の才能があるのに 今まで何故 勉強をサボったりして・・・」
サイネリア「・・・えーと」
イチェルダ「いえ、失礼。 王女様が作った雪は、洞穴から よく見える場所に飾りましょうね」
サイネリア「・・・洞穴?」
イチェルダ「・・・もしやと思いますが・・・」
イチェルダ「この雪まつりの意図を知らずに ご公務なさってるのですか?」
サイネリア「・・・はいすみません。 まことにいかんですよね」
イチェルダ「・・・分かってるならよろしい。 では、説明してさしあげます」
イチェルダ「この雪まつりは、昔より 「春を心待ちにする」という意味で 行われてきました」
イチェルダ「寒い冬には、食べ物もなく 昔の人々の生活は苦しかったので 早く春になれ、という気持ちを込めて」
イチェルダ「そして現代では人生での春・・・ パートナーが現れますようにと 願う人々が増えました」
サイネリア「パートナー・・・」
イチェルダ「想い人とあそこの洞穴に入って 祈りを捧げると、生涯ともに 過ごせるとの言い伝えもあります」
サイネリア「あの、洞穴・・・」
イチェルダ「・・・もっとも、王女様には 決められた相手がいらっしゃるので この洞穴に来る意味もないでしょうが」
イチェルダ「街の人々は、この祭りを とても楽しみにしているのです」
イチェルダ「・・・何としても、成功させなければ」
サイネリア「なるほど・・・わかりました。 ありがとうございます!」
イチェルダ「それでは、私はもう少し あちらの方の雪を固めてきます。 王女様もお気をつけて」
ギャラクシー「イチェルダさん、この寒い中 とても頑張っていますね・・・」
サイネリア「うん・・・」
タイクーン「イチェルダ先生は、騎士団のほうにも たまに来るんだぜ。 あの人、回復魔法もいけるからな」
サイネリア「そうなんだ・・・」
サイネリア(あの洞穴で2人が祈れば・・・ 生涯一緒に過ごせる・・・?)
サイネリア(ギャラクシーと幼い頃に・・・ それって・・・)
ギャラクシー「・・・サイネリア様? どうかしましたか?」
サイネリア「あっ、ううん! なんでもないのっ!」
サイネリア「寒いし、もう帰ろうかなぁ!!」
ギャラクシー「そう、ですね・・・ 確かにこの辺りはとても冷えますし」
タイクーン「俺は、この辺りの警備が どうなっているか確認してくる。 先にふたり、戻っててくれよ」
サイネリア「・・・・・・・・・」
ギャラクシー「・・・ほんとにどうしたんですか?」
サイネリア「あ、あのさ・・・ ギャラクシー・・・」
ギャラクシー「はい。なんでしょう?」
サイネリア「子供の頃にさ、ここの洞穴って・・・ 入ったことあるのかな?」
ギャラクシー「・・・・・・・・・」
ギャラクシー「忘れちゃったんですか?」
サイネリア「・・・えっ」
ギャラクシー「あの日・・・あんなに熱く 語り合ったじゃないですか・・・」
サイネリア「・・・ええ?」
ギャラクシー「「わたし、ぎゃらくしとずっと 一緒にいる!」って・・・」
サイネリア「そ、そうだっけ・・・?」
ギャラクシー「ひどいなぁー 忘れちゃったんですね?」
サイネリア「いっいや・・・ てか、近いってば、ギャラクシー・・・」
ギャラクシー「・・・まあ冗談はこれくらいにして」
サイネリア「じょ、冗談!?」
ギャラクシー「思い出せないほうがいいことも 世の中にはありますから」
サイネリア「──!」
サイネリア「思い出せないと、困ることの方が 多い気がする・・・」
ギャラクシー「・・・でもそれは、今じゃないです。 だから一旦、城に帰りましょう」
サイネリア(やっぱりなにかあった・・・! あの洞穴で、わたし・・・ ギャラクシーと・・・)
サイネリア(なにをしたっていうの・・・? まだほんの子供だったわたしは、 なにをしたの・・・?)
〇貴族の部屋
サイネリア「・・・ふう」
ギャラクシー「・・・お疲れですか?」
サイネリア「そうね、少し・・・」
ギャラクシー「紅茶をいれましょうか、 体が冷えたでしょう?」
サイネリア「そうね・・・ありがとう」
サイネリア(少し前に、ギャラクシーの占いで 身近な人と恋に落ちるなんて 言われたけど・・・)
サイネリア(そんなこと、いわれても・・・ 恋って何なのかわからないわ)
サイネリア(あのチャラ男王子だけは 嫌だってわかるんだけど!)
ギャラクシー「・・・お待たせしました」
サイネリア「あ、ありがとう! いただくわ・・・」
サイネリア「・・・・・・」
サイネリア「・・・あったかい」
ギャラクシー「それはなによりです」
サイネリア「ギャラクシーってさ、 かなり前から城にいるよね」
ギャラクシー「そうですね。 この城に雇われてからすぐに 王女のお目付け役になりました」
サイネリア「そうだったんだ・・・」
サイネリア「その、ここに来る前は なにしていたの?」
ギャラクシー「おや、私の過去に興味が おありですか?」
ギャラクシー「・・・男の過去を探るなんて あなたはいけない女ですね?」
サイネリア「えっ!? べ べつに深い意味は・・・」
ギャラクシー「ふふ、慌てなくてもいいですよ。 私には、語るほどの過去など ありません」
ギャラクシー「ただ、私は幼い頃から魔法の・・・ 治癒魔法の才能があり、 王家で働くことを夢見ていた」
ギャラクシー「・・・それだけです」
サイネリア「・・・ほんとに、それだけ?」
ギャラクシー「もう・・・ 何をそんなに聞きたがっているんです?」
ギャラクシー「さっきから、私が 気づいていないとでも?」
サイネリア「あ、いや・・・」
ギャラクシー「あの洞穴で昔、何があったのか──」
ギャラクシー「それがずーっと気になってる ご様子ですね?」
サイネリア「あああ、いやまあ・・・ そうなんだけど・・・」
サイネリア「・・・知るのが怖いような 気もしているの。 どうしてかしら・・・」
ギャラクシー「・・・・・・」
サイネリア「いままでずっと、私とギャラクシーと タイクーンと・・・」
サイネリア「ずっとずっと3人で 暮らしていけると思ってるのに・・・」
サイネリア「私の婚約者のことや、2人のこと・・・ 私の立場のこと・・・」
サイネリア「いろんな周りのことが変わってきて 私もどうすべきか悩み始めた」
サイネリア「このままずっと3人では いられないかも知れないんだと──」
ギャラクシー「サイネリア様」
サイネリア「私は、どうしたらいいの──」
ギャラクシー「姫!」
サイネリア「・・・あ」
ギャラクシー「過去を知ったら、もう元には 戻れないと・・・ そう考えているのですね?」
サイネリア「・・・うん・・・」
ギャラクシー「こんなに困らせることになるなら 最初からもっと伝えていれば 良かったな・・・」
サイネリア「・・・え?」
ギャラクシー「サイネリア王女様。 気丈で可愛らしく、明るく・・・ 私の太陽のような人・・・」
サイネリア「ええっ?」
ギャラクシー「あなたが知りたいことを教えましょう。 雪まつりの夜に、あの洞穴で」
サイネリア「洞穴で・・・」
ギャラクシー「あなたに危険がないように お連れしますので、ご安心を。 あの場所なら、話せます」
サイネリア「わかったわ・・・」
〇クリスマスツリーのある広場
ギャラクシー「私もお忍びで城下に来ることに なるなんて、思ってなかったな」
サイネリア「ふふ! 似合ってるよ、その服」
ギャラクシー「ぴたっとしていて、なにやら 着慣れないですが・・・」
サイネリア「確かにそうね・・・ 普段のギャラクシーの服から したら、フィットしてるわね」
サイネリア「・・・それにしても、すごい人。 みんなお祭りを楽しんでいるんだね」
ギャラクシー「そうだよ、ハニー」
サイネリア「は、はにー?」
ギャラクシー「俺たちは、お忍びできてるんだ。 恋人同士のフリをした方がいい」
サイネリア「な、なるほどね・・・?」
サイネリア(「俺」って言ったわ・・・ 聞いたことない、話し方・・・)
ギャラクシー「それじゃ、例の洞穴に行こう。 君の知りたいことを、全部 話してあげよう」
サイネリア「う、うん・・・」
〇雪洞
サイネリア「わあ・・・綺麗ね 夜見ると、また違って素敵・・・」
ギャラクシー「うん。神秘的で、美しくて──」
ギャラクシー「まるで君のようだ」
サイネリア「な、何言ってるの・・・」
ギャラクシー「さあ、あの洞穴に入って 真実を語り合おう」
サイネリア「う、うん・・・」
〇岩穴の出口
サイネリア「よいしょ・・・・・・っと。 結構、せまいね」
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