〇一戸建ての庭先
　　それから数日。

〇狭い畳部屋
熊澤康之「ほら、約束の金だ！」
鬼塚球磨子「・・・・・・」
鬼塚球磨子「確かに予定額だ・・・何だ、ちゃんとやれば出来るじゃ無いか・・・」
熊澤紀子「そうでしょそうでしょ〜？私達に掛かればこの程度朝飯前よ！」
鬼塚球磨子「・・・まぁ良い、この調子で次も間に合わせろよ？」
熊澤康之「勿論だ！」
福井桃太「（スゲェな・・・たったあれだけの期間で規定額を返せるだなんて・・・）」
福井桃太「（にしても妙だな・・・指定の額はそこらのバイトを１人や２人でやっても出来て２〜３ヶ月は掛かるってのに、）」
福井桃太「（それを短期間で可能に出来るのか？出来るならFX投資とかだろうが・・・）」
福井桃太「んな!?」
熊澤秀樹「えっへへ〜！」
福井桃太「あぁ！お前この前のクソガキ！」
熊澤秀樹「やった〜！やっぱりまた来てくれたんだね〜！」
福井桃太「お、おい！何のつもりか知らないが、あんまり大人を誂うと自分が痛い目見るぜ？」
熊澤秀樹「知らないよ〜だ！また来てくれたからこれ上げる！」
福井桃太「ぬわ！このガキまた！」
熊澤秀樹「ははは〜！」
福井桃太「・・・あのガキマジで覚えてろよ・・・」
福井桃太「ん？ちょっと待てよ？」

〇狭い畳部屋
熊澤秀樹「やった〜！やっぱりまた来てくれたんだね〜！」

〇狭い畳部屋
福井桃太「（え？ちょっと待て！一体どう言う事だ？やっぱり？また来てくれた？何であのガキがそんな事俺に言うんだ!?）」
福井桃太「（そもそもロクな会話もした事無いのにそんな事言えるか？何をどうして・・・）」
福井桃太「（・・・!?まさか！）」
　　『鞠』『蛸』『狐』『手袋』『猫』
福井桃太「・・・・・・」
福井桃太「・・・!?そうか！そう言う事か！となるとこっちは・・・!?」
熊澤秀樹「ははは〜！」
熊澤康之「だぁ秀樹の奴うるせぇなぁ・・・はしゃぐなら外でやれって・・・」
熊澤紀子「もう！私達が忙しくしてるってのに空気が読めないのね！」
鬼塚球磨子「・・・なぁ、」
熊澤康之「あん？何だよ？」
鬼塚球磨子「前から気になってたんだが、あの子は一体何だ？テメェらの子供か？」
熊澤紀子「え？そうですがそれが何か？もう随分前から口も聞いて無いけど・・・」
鬼塚球磨子「そうか・・・将来ロクな奴にならなきゃ良いな・・・」

〇コンビニ
　　数分後。
鬼塚球磨子「おかしいな・・・あんな短期間であれだけの札束を作れるか？場所に寄っては１ヶ月先じゃ無いと手元に渡らない・・・」
鬼塚球磨子「何より何だあの不自然な程の冷静さ・・・丸で何か策でもあるとでも言わんばかりの・・・」
福井桃太「鬼塚さん、遅くなりました・・・」
鬼塚球磨子「おい桃太！お前どこで油売ってたんだ！ピクニックでもしに来たのか!?」
福井桃太「あ、すみません、どうしても外せない用事が出来て・・・」
鬼塚球磨子「外せない？何だ言って見ろ？」
福井桃太「・・・！はい、鬼塚さん、前に俺がガキから貰ったメモの事覚えてますか？」
鬼塚球磨子「メモ？あぁ、あの訳の分からん並びの奴か・・・あれがどうしたんだ？」
福井桃太「はい、俺あれの意味が分かったんです！頭文字です！」
鬼塚球磨子「頭文字？」
福井桃太「はい！俺も最初意味不明でしたが、今日もあのガキに会ってやっぱりまた来てくれたと言われて確信したんです！」
鬼塚球磨子「ほ、本当か？単なる偶然じゃ・・・」
福井桃太「なら、実際見て読んで見て下さい！」
　　『鞠』『蛸』『狐』『手袋』『猫』
　　『（ま）り』『（た）こ』『（き）つね』　『（て）ぶくろ』『（ね）こ』
鬼塚球磨子「ほ、本当だ！確かに頭文字を繋げたら、『また来てね』と読める！」
福井桃太「はい、あのガキ俺にこう伝えたくてこのメモを渡した見たいなんです・・・」
鬼塚球磨子「・・・だが何の為にだ？私からは只はしゃいでるだけの様にも見えたが・・・」
鬼塚球磨子「それでこんな方法を思い付くのか？」
鬼塚球磨子「あ、待て桃太！お前今日もあの子に会ったんだよな？ならまた何か渡されなかったか？」
福井桃太「はい、渡されました！」
鬼塚球磨子「直ぐ見せろ！」
福井桃太「はい！」
　　『森』『野原』『大きい』『機械』『信号』『ラクダ』『弁当』『天気』
鬼塚球磨子「もしあの子のやってる事が本物なら、これも頭文字を繋げれば良い事になる・・・」
　　『森』『野原』『大きい』『機械』『信号』『ラクダ』『弁当』『天気』
　　『（も）り』『（の）はら』『（お）おきい』『（き）かい』『（し）んごう』『（ら）くだ』『（べ）んとう』『（て）んき』
鬼塚球磨子「物置、調べて？桃太、お前はこれ分かったのか？」
福井桃太「はい、それでさっき調べて見たんですが、案の定夜逃げの準備をしていた見たいなんです・・・」
鬼塚球磨子「夜逃げだって!?」