エピソード1(脚本)
〇渋谷のスクランブル交差点
夜だ。
《なんでも改造》の看板はまだ灯っている。
集金人「レン、お前、そろそろ家賃の支払いだぞ」
集金人「もう待てない」
集金人「今払わなければ、規則通り店を回収せざるを得ない」
集金人「はぁ・・・・・・改造コアすらないお前の店が」
集金人「どうやって成り立っているのか全く分からん」
練「あぁ、心配ご無用です」
練「今週中には必ずお支払いします」
集金人を送り出した後、
練「はぁ・・・・・・」
ここは地球じゃない。
レーシング産業が高度に発展した世界だ。
そしてレース場を駆け抜けるのは、普通のレーシングカーではなく。
「メカ娘」と呼ばれるSF的存在たち。
普段は人間の少女の姿をしているが、
レース時にはスーパーカーへと変身する。
この世界に来て三か月。
元の世界で最強の改造師だった自分の技術で、
ここでもそれなりにやっていけると思っていた。
しかし、自分には機娘がいない!
車のことはわかっても、機娘のことはわからない!
さらに、来たばかりで全く知名度もない。
店を開いて二か月、改造を頼む機娘は一人も来なかった。
かろうじてドライバーは店を覗きに来たが、
証明書がないのを見て、すぐに立ち去った。
練「はぁ・・・・・・」
【改造一体目の機娘――スキル《天賦①》解放条件】
練「・・・・・・チッ!」
そうだ、転移した時に“金手指”は確かに貰った。
だが前提条件を満たせず、いまだ発動せずに眠っている!!
練「なあ、直接解放できねえのかよ!なんでわざわざ回りくどい条件なんか付けやがるんだ!」
思考が堂々巡りする。
沈む・・・・・・沈む・・・・・・さらに深く沈む・・・・・・。
練「駄目だ!このままじゃ終わる!」
練「何としても天賦を解放する! 機娘を一体、改造しなきゃ・・・・・・!」
しかし機娘たちはみな戦姫のように戦闘力が高い。
不意打ちして拉致し、強引に改造するなんて不可能だ。
倫理的にも問題だが、それ以前に命が危ない。
練「・・・・・・もう、こうするしかねえな」
ホワイトボードを手に取り、しばらく無言で考え込んだ――。
................
.......
...
夜の街角
深夜零時の街は冷え込んでいた。
夢の細い影が街灯に照らされ、少し心細げに揺れていた。
夢の細い影が街灯に照らされ、少し心細げに揺れていた。
フラフラと歩いた末に、彼女は一軒の改造ショップの前に立ち止まる。
白い蛍光灯に照らされた顔は蒼白で、ガラス越しに映る自分の姿をただ茫然と見つめていた。
昼間の出来事が脳裏に蘇る。
・・・・・・・・・
〇玄関内
MEI「夢・・・・・・これじゃあ卒業レースに出られない・・・・・・」
夢「マスター、まだ日数は残ってます!一緒に準備すれば──」
MEI「準備?」
MEI「ふざけるな!お前の性能が低すぎるんだ」
バン!
机を叩きつける音。
女の叫びは刃のように鋭く、夢の胸を切り裂いた。
MEI「少しでも性能が良けりゃ、私は落第せずに済んだ!全部お前のせいだ!」
夢「マスター・・・・・・わたし、もっと鍛えます・・・・・・だから・・・・・・」
MEI「鍛える?今すぐ成績を上げられるのか?卒業試験を突破できるのか?」
夢「わ、わたし・・・・・・できる・・・・・・」
MEI「ならさっさとやれ!できねえなら顔見せんな!失せろッ!」
ドンッ!
扉が閉じられ、音と共に関係も断ち切られた。
〇渋谷のスクランブル交差点
――機娘の性能を短期間で底上げするには改造しかない。
だが改造コアの価格は天文学的。
学院の学生に払える金額ではなかった。
夢はわずかな私金を握り、街中の改造ショップを駆け回った。
だがどこも門前払い。
資金が足りず、何も変えられない。
一日中走り回り、心身ともにボロボロ。
エネルギー補給もせず、空腹でふらつく。
あと数歩で力尽き、路上でスリープに入ってしまうだろう。
夢(そうなれば回収車に運ばれ、またマスターに迷惑をかけ、罵倒される――)
震える身体を支え、夢は視線を上げた。
そこで目に入ったのは、白い板に黒い文字で雑に書かれた貼り紙だった。
「無料改造!」
直後、けたたましいスピーカーの音が響いた。
「閉店だよ!倒産間近だよ!」
「数万、数十万、数百万の改造費が――今だけ無料!」
「そうだ!全部無料!全品タダだ!」
夢「えっ・・・・・・?」
〇地下に続く階段
練「俺はレン。どう呼べばいい?」
夢「・・・・・・ユメです」
夢「その・・・・・・改装って、本当に無料なのか?」
練「もちろんだ」
少し薄暗い店内で、少女はおずおずと男の後ろを歩いていく。
ユメは気づいた。
小さな店構えとは裏腹に、内部は思った以上に奥行きがある。
中には、細長い廊下が続いていた。
薄暗い照明の下、男は廊下の最奥にある扉に鍵を差し込む。
年季の入った扉が──
「ギィ・・・・・・」
と音を立てて開き、
中からは墨を流したような闇が溢れ出した。
夢「こ、ここ・・・・・・な、なに・・・・・・なんですか・・・・・・?」
練「改装室だよ」
練「ただ、ちょっと古いだけ」
そう言いながら、レンは壁を手探りする。
別の角度から見ると、まるで凶器を探しているようにも見えた。
ユメは扉の前で立ち止まる。
夢((い、今なら・・・・・・逃げられる・・・・・・?))
夢((この店主、変なことしないよね・・・・・・?))
夢((やっぱり・・・・・・無料って一番高いんだ・・・・・・!!!))
練「・・・・・・こほん。どうぞ」
ようやくスイッチを見つけたレンが、手を振って埃を払う。
闇は退いたが、
部屋は相変わらず薄暗く、雰囲気が良くなったとは言い難い。
さっきは不気味、
今はただ、死んだように静かだ。
レンは立ち尽くすユメを見て、
システム解放を焦るあまり、そのまま手を伸ばして引き寄せた。
練「ほら、入って入って!!!」
――ドン。
扉が閉まり、廊下は再び不気味な静寂に包まれる。
カチャリ、と内鍵がかかる音。扉の上に赤いランプが灯る。
【改造研修室(作業中)】


