言の葉の網(脚本)
〇中華風の通り
清盛「・・・うん?」
清盛「お前か。出迎えご苦労」
時忠「遊興も程ほどになされませ。 昨今の百鬼夜行、 知らぬわけではありますまい」
清盛の弟 平時忠
清盛「おう、さっきそいつらに襲われちまったよ」
時忠「な、何ッ!?」
時忠「・・・まあ、無事ということは 大した連中ではなかったようですな」
清盛「安堵が早えよ」
時忠「野盗の二、三十人斬り伏せられぬようでは 到底武士の世など作れませぬゆえ」
清盛「トッキー、怖ええ~」
時忠「そやつらは?」
清盛「新入りだ、鍛えてやってくれ」
「元右大臣美丈夫家臣団です! 宜しくお願いします!」
時忠「では新入りよ、 まず清盛様が目指す世を教えてやる。 性根に叩きこめ」
美丈夫家臣「武士の世、でございましょう!」
時忠「否、平氏の世だ」
時忠「我らはいずれ『平家』となる。 そして平家に非ずば人でない世を作る」
時忠「それが新たな御世、平治だ」
美丈夫家臣「・・・か」
時忠「か?」
「カッケーーーーーー!」
清盛「時忠、我褒めも構わねえが 護衛の勤めもしかと果たしてくれよ」
時忠「は?」
清盛「その『大した事ない』獣が一匹、 夜陰に紛れてるじゃねえか」
〇モヤモヤ
鬼丸「よく気が付いたな」
〇中華風の通り
時忠「貴様ああああッ!」
鬼丸「動くな。動けばコイツの首をかき切る」
時忠「おのれケダモノ」
鬼丸「夜はケダモノの世界だ。 夜を統べられねえようじゃ、 平家とやらの御世もまだまだ遠いぜ」
清盛「言われてるぞ、時忠」
鬼丸「アンタに言ったんだよ。清盛」
清盛「・・・」
鬼丸「答えろ。何で左府さんを裏切った」
清盛「もう左大臣じゃねえだろ。 叛徒の首魁、藤原頼長だ」
鬼丸「アンタらがそう仕立て上げたんだろ!」
清盛「生きているのか?野たれ死んだと聞いたが」
清盛「そして島流しとなった崇徳院と共に 怪異怨霊と成り果て都を脅かしている。 それが百鬼夜行の正体との噂だ」
清盛「尤も、廃帝はともかく 鬼面の方は別人だったがな」
鬼丸「答えになってねえ」
清盛「話すさ。アイツの目を見てな」
鬼丸「俺に話せ。殺すぞ」
清盛「やってみろ。小鬼風情が」
鬼丸「・・・」
鬼丸「・・・チッ。さすがは日本一のもののふ。 肝が据わってらあ」
清盛「もしアイツが生きてるなら。 木っ端如きに俺を殺させりゃしねえよ」
時忠「死ね」
鬼丸「ああ?まだやんのか?」
清盛「おうおう、無意味な殺し合いをする気か? 言っとくが俺は係わらんからな」
時忠「フン。極楽蜻蛉めが」
美丈夫家臣「だがそこに痺れる憧れるゥ!」
清盛「小鬼よ」
鬼丸「鬼丸だ」
清盛「なあ鬼丸。噂ってのは『言の葉の網』 みてえなもんなんだよ」
鬼丸「網・・・?」
〇後宮前の広場
『幼帝呪詛』
『偽帝謀反』
『その崇徳院の生霊』
『そして惡左府の怨霊と思しき鬼面の者』
『全てはただの噂だったはず』
『言の葉の網』
『その網を紡ぎ、時に張り巡らせ時に手繰り寄せながら世を影から操っているヤツがいる』
『俺はそいつに抗えなかったんだ』
『その者の名は・・・』
『・・・・・・』
『あ、お前じゃねえ』
『・・・・・・』
『それっぽいけどアンタでもねえ』
『そう、コイツだ』
『後白河帝の側近、黒衣の宰相信西』
〇中華風の通り
鬼丸「信西・・・あの人が?」
清盛「頼長と並び立つ都の大学生。 ヤツは双璧から随一となるために、 アイツを謀反の首謀者に仕立て上げ 殿上から追い落とした」
清盛「良くて抹殺悪くても追放、 先の乱は頼長の全てを奪うために 王家を巻き込んだ信西の策だったんだ」
鬼丸「・・・」
清盛「何故頼長を助けなかったと言いたげだが、 こっちも生き残る為に必死なんだ。 多分アイツが同じ立場でもそうしたさ」
清盛「平安ってのはそうやって 四百年保たれて来たんだよ」
清盛「だから俺が終わらせてやる」
清盛「このドロドロとした 貴族(ハレ)の世をな・・・」
CONTINUED


