エピソード5(脚本)
〇警察署の入口
「・・・どうして、こんなことに」
奏は、警察での任意聴取に応じていた。
・・・あの会食の日から1週間。
かなこは、あれから帰っていない。
恵の死体が発見され、奏はかつてつき合っていた「元彼氏」として事情を聴かれていた。
「・・・最近の連絡ですか? 正直にいいます。ありました」
「・・・ええ。一度だけ会いました。駅前のカフェで話しただけですけど」
警察の人間が、奏のことを疑っているのはわかっていた。
「・・・「よりを戻したい」って言われました。 俺、もう結婚してるんだから、できないって言いました」
「・・・正直なところ、うれしかったです。 だって、妻は俺を相手にしてくれないから」
「・・・信じてもらえないかもしれないけど、俺は本当に何も知らないんです。 かなこに聞いてください」
・・・その後約1時間。
奏は、自分は何も知らないと繰り返し主張した。
かなこが浮気をしているかも知れない、とは言わなかった。言えなかった。
言えば、本当になってしまう気がして。
・・・意味がわからない。
まさか、あいつが殺した?
・・・かなこには動機がない。すでに俺の妻なんだから。
刑事の話によると、恵の死亡推定時刻は、まだ調査中だというが、4日の夜から朝にかけてというところらしかった。
死体は、義実家の庭で発見されたという。
第一発見者は、母だ。
・・・なぜだかわからないが、母は、「かなこがやった」とばかり主張しているらしい。
・・・しかし、説明が要領を得ない、と刑事が言っていた。
「・・・でも、あいつには殺す理由も何もないと思いますけど。 だって会っていなかったし、会う必要もないから」
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