エピソード1(脚本)
〇本棚のある部屋
レム睡眠というのであったか、まどろみの中で、かなこは焦ってパソコンに向かっていた。
夢だということも気づかず、かなこは夢の中で仕事に追われていた。
・・・
明日までに作らねばならない書類・・・
・・・・・・
7割方片づけたと思ったところで、もう間に合わない時間になり、かなこは部屋を出てカギもかけず、いきなり走り出した。
・・・
・・・・・・
何も覚えていないが、電車が遅れ、よくわからない変な人に絡まれ、気がついたら遅刻確定の時刻になっていた。
・・・ああ、まずい、ヤバイ、もう私はおしまいだ。
・・・
・・・・・・
かなこに何かを訴えかけようとしていた、変な人・・・よくみると義母だった。
声が聞こえない。
意地悪な本物の義母とは違い、気の弱そうな表情だった。
むしろ弱そうにすらみえた。
それでも、時間がないというかなこをつかまえて、必死で邪魔をしてきた。かなこは叫んだ。
「お願いですからやめてください!」
・・・
・・・はっ!
かなこは、自分の叫び声で目を覚ました。
・・・
・・・・・・
・・・
・・・・・・ここは?
ぼんやりして、ひどい頭痛がしていた。
・・・ここは? ・・・・・・痛っ
身体が重い。起き上がれない。
まるで頭を殴られたかのような痛み。・・・
・・・
・・・・・・・・・額を流れるものがあった。
真冬に流れる汗なんかない。
血だった。
〇部屋の前
・・・どこかに、ハンカチかティッシュは!・・・!?
〇個室のトイレ
無造作にドアをあけると、トイレだった。
・・・とりあえず、トイレットロールを引っ張り出して額に当てる。
〇本棚のある部屋
・・・・・・幸いなことに、傷は大したことはない。
一体、なんの傷だろう。
・・・頭を打った?
・・・・・・それとも、誰かに何かされたのか。
・・・一体、ここはどこなんだろう?
あたりを見回した。
見たことのない部屋だった。
・・・
・・・・・・
本がたくさんある。それとCDやレコードも、棚にぎっしりと詰まっている。
・・・「あッ!」
かなこは思わず声を出していた。
・・・・・・今何時?
腕時計を見ようとしたが、ゆうべしていたはずのそれは、腕にもついていない。枕元にもない。
部屋にも、もちろん時計はない。
・・・ただ、外はまだ暗いことはわかった。
・・・雨。
東の空から少しだけ光が漏れている。
たぶん、朝4時か5時。
・・・よかった。
仕事に遅れずに済む。
・・・窓の外を見ると、見慣れた風景だった。ここは義実家だ。
・・・何の部屋だろう。通されたことがない部屋だ。こんな部屋があったのか。
ゆうべのことを思い出そうとする。
・・・・・・
・・・そうだ、確か義母に呼び出されて、夫と一緒にここへ来た。
義母はいつも突然、義実家で食事会をするから来いという。
・・・さっさと食べて帰るつもりだったのに、気づけばこんな部屋で寝ていた。
〇部屋の前
・・・「えっ」
ドアが、開かない。
外から鍵がかかっているようだ。
〇本棚のある部屋
・・・どうしよう。
ドアは内側から開かないつくりになっている。
今日は、朝7時に出勤するつもりだった。そうしないと間に合わない。
学校教員の朝は早い。
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