第三幕『明日美の誕生』(脚本)
〇空港ターミナルビル
〇新橋駅前
通行人「演技もすごく上手でー」
通行人「これから主演もバンバンやるんだろうな って思ってたのに・・・」
通行人「ショックですー」
通行人「園山今日香・・・ ボク、結構ファンだったんですよ」
通行人「残念です」
通行人「今どき珍しい、芯の強そうな 女優さんだと思ってたけどねぇ・・・」
〇黒
皆さん
ごめんなさい──
・・・少しだけ、待っていてください
〇空港ターミナルビル
〇黒
一 年 後
〇空港ターミナルビル
田所「仕上がったようだな」
田所「明日美──」
「・・・はい」
明日美「お久しぶりです、田所さん」
田所「・・・さすがオレが見初めた逸材よ」
明日美「あたし・・・ 必ずスターになってみせます」
明日美「姉の想いも背負って──」
田所「なっ・・・」
田所「ははっ、その意気その意気!」
田所「さぁ、シンデレラストーリーの幕開けだ!」
〇黒
〇大劇場の舞台
「はいよろこんで!」
〇キラキラ
明日美「オーダー入りまーす!」
〇劇場の舞台
関係者「・・・ふむ」
関係者「あの黒髪の子、華があるな──」
田所「アレはウチの新人でしてね」
関係者「ほう、田所さんのところの」
田所「・・・園山明日美といいます」
関係者「園山・・・?」
関係者「まさか──」
田所「園山今日香の双子の妹です──」
関係者「えっ!」
関係者「・・・田所さん」
関係者「私、今度プロデューサーとして ゴールデンで2時間ドラマやるんですがね」
関係者「主人公の親友役を ぜひ彼女にお願いしたい」
田所「えっ、し、しかし、 彼女はまだデビューしたての新人で・・・」
関係者「いや、あの纏っているオーラは ただの新人じゃない──」
関係者「お姉さんに負けず劣らずの逸材ですよ!」
関係者「それに・・・ あの園山今日香の双子の妹が」
関係者「ウチのドラマでテレビデビューとなれば 宣伝効果は計り知れない──」
関係者「田所さん!ぜひお願いします!」
田所「は、はぁ・・・」
田所(ふふ・・・)
田所(シナリオ通り──)
〇黒
それから──
〇大教室
明日美「もう・・・リコのバカッ!」
関係者「カーット!」
関係者「いやー、いいよいいよ、明日美ちゃん!」
明日美「・・・ありがとうございます」
関係者「やはり私の目に狂いはなかった──」
〇黒
お仕事も少しずつ増えてきて──
〇宇宙船の部屋
明日美「博士!ワルイーダーがまた現れました!」
関係者「ほんと、なんでもそつなく 演じるよなぁ・・・」
〇黒
スターへの階段を──
〇豪華な部屋
桜子「ごきげんよう、女優の太田原桜子です」
桜子「本日の『桜子のズバッとトーク』 ゲストは・・・この方」
明日美「・・・こんにちは、園山明日美です」
桜子「それでは、はじめてまいりましょ」
桜子「明日美ちゃん、はじめまして よろしくねぇ」
明日美「お会いできて光栄です よろしくお願いします──」
〇撮影スタジオ
田所「桜子さんのオファーを断れず 受けてしまったが」
田所「トーク番組なんて・・・」
田所「ボロが出なきゃいいが──」
〇豪華な部屋
桜子「へぇ、じゃあ全然 女優になるつもりはなかったのねぇ」
明日美「はい、姉は子どもの頃から お遊戯会でも主役やったりして 目立ってましたけど」
明日美「あたしは、そういうの苦手で・・・ 引っ込み思案で いつも姉の後ろに隠れてました」
明日美「双子なのに、光と影 なんてよくたとえられて」
桜子「ふぅん」
明日美「でも──」
明日美「ある時、あたし変わったんです」
明日美「姉が・・・あんなことになって」
明日美「実はその一年前に」
明日美「幼い頃から女手ひとつで育ててくれた 母も病気で亡くなって・・・」
明日美「あたし・・・ひとりぼっちに なってしまって──」
桜子「あらまぁ・・・」
明日美「あの頃は、毎日泣いて暮らしていました」
明日美「だけど、気づいたんです」
明日美「姉のスター女優になりたいという夢」
明日美「その夢を懸命に応援していた母の想い」
明日美「それを叶えられるのは・・・ あたししかいないんじゃないかって──」
明日美「そう思ったら、急に心強くなったんです」
明日美「あたしは姉と母と 今も一緒に生きているんだ」
明日美「・・・ひとりぼっちなんかじゃない」
明日美「だから、思い切って女優の道に──」
明日美「桜子さん?」
桜子「あなた・・・立派よぉ──」
桜子「ダメ、涙止まんない・・・」
明日美「あ、あの・・・」
桜子「あなた、私のこと、 芸能界の母と思ってもらっていいから!」
明日美「はぁ・・・」
桜子「・・・泣きなさい」
桜子「さぁ、母の胸で思いっきり泣きなさい!」
明日美「い、今は大丈夫です・・・」
〇劇場の楽屋
田所「・・・やれやれ」
田所「ボロが出るんじゃないかと 心配しておったんだが」
田所「よくもまぁ、あれだけ 次から次へと口から出まかせを──」
明日美「・・・出まかせじゃありません」
明日美「アドリブと言ってください──」
田所「・・・」
田所「ははは!図太くなりおって!」
田所「いいぞ・・・スターになるには そのくらいの図太さが必要だからな」
田所(うーむ・・・想像以上のたくましさよ──)
〇新橋駅前
通行人「最初は七光り的な感じなのかなって 思ってたんですけどー」
通行人「演技も上手だし、しっかりしてるし、 お姉さん譲りだなーって」
通行人「この前の『ズバッとトーク』観て 応援したいなって思いましたー」
通行人「もともとお姉さんの今日香さんの ファンだったんですけど」
通行人「明日美さんも負けず劣らずで・・・ すっかりファンになっちゃいました」
通行人「いろんな不幸を乗り越えて・・・ 気丈よね、まだ若いのに──」
〇黒
好感度も人気もうなぎのぼり
そして、ついに──
〇会見場
カメラマン「明日美さーん! 目線こちらにお願いしまーす!」
〇黒
夢みたい──
〇コンサートの控室
明日美「・・・撮影、頑張んなきゃな」
「・・・今日香?」
明日美「え?」
〇黒
つ づ く