第14話『声』(脚本)
〇病室
雪島アイナ「ゴホゴホ」
花村大河「大丈夫?」
雪島アイナ「すこし しんどいかも」
花村大河「無理しないで」
雪島アイナ「でもね がんばるよ」
雪島アイナ「だって、もうすぐ そつぎょうしきだからね」
花村大河「だから、明日から卒業式終わるまで 面会は控えるよ」
雪島アイナ「うん さみしいけどしかたないよね」
花村大河「卒業式が終わったらすぐに来るから」
雪島アイナ「そつぎょうしきぐらい」
雪島アイナ「クラスのみんなとすごしなよ」
花村大河「アイナちゃんと過ごしたい」
雪島アイナ「うれしい」
雪島アイナ「けど、むりはしないでね」
〇病室
雪島アイナ「ゴホゴホ」
雪島アイナ「チがまじってる」
雪島アイナ「はあぁ」
雪島アイナ「もつかな」
〇病室
大内加奈子「どうしたの?」
大内加奈子「私を呼び出すなんて珍しいわね」
雪島アイナ「せんせいにね」
雪島アイナ「さいごのおねがいがあるの」
大内加奈子「・・・・・・」
〇学校の校舎
〇教室
花村大河「いよいよ、明日か」
花村大河「卒業式」
宮森「そうだな」
花村大河「あとでアイナちゃんに連絡しとこ」
宮森「卒業式楽しみにしてるだろうな」
〇病室
雪島アイナ「はあはあはあ」
雪島アイナ「く、くるしい」
大内加奈子「唇も紫になってる」
大内加奈子「大丈夫だから落ち着いてね」
雪島アイナ「あした、そつぎょうしきなのに」
〇男の子の一人部屋
花村大河「アイナちゃんから返事ないけど大丈夫かな」
〇総合病院
卒業式当日
〇病室
大内加奈子「残念だけど、卒業式は諦めて」
雪島アイナ「おねがいだから いかせてください」
雪島アイナ「きのーより、たいちょーはよくなりました」
大内加奈子「ダメ!」
大内加奈子「声が霞んでるじゃない」
大内加奈子「少し体調が良くてもダメ」
雪島アイナ「みんなにわるいよ」
雪島千砂「大丈夫、そんなこと誰も気にしないわ」
雪島千砂「お願いだから病院にいて」
〇教室
宮森「いよいよ、今日で卒業だな」
石上「じゃあ、みんな あと少しで体育館に移動するから 準備しとくんだよ」
宮森「はーい」
花村大河(アイナちゃん、どうしたんだろ)
花村大河「アイナちゃん?」
〇校長室
安村校長「承知しました」
安村校長「本日は欠席ですね」
安村校長「誠に残念です」
安村校長「恐れていたことが起きてしまったか」
〇病室
雪島千砂「ごめんなさい、アイナ」
雪島アイナ「・・・・・・」
雪島アイナ「もういいの」
雪島アイナ「どうせ、こんなことになるっておもってた」
雪島千砂「アイナ」
雪島アイナ(ごめんね、大河くん)
雪島千砂「どうぞ」
花村大河「お邪魔します」
雪島アイナ「大河くん!?」
〇教室
宮森「お前、マジかよ!」
花村大河「ああ」
花村大河「俺はアイナちゃんのところに行く」
宮森「でも、そんなことしたら 花村は卒業式に参加できなくなるぞ?」
花村大河「それだって構わない」
宮森「一生に一度だぞ?」
花村大河「こちとら これまで2回も卒業式に参加してきた!」
花村大河「一回ぐらいサボったって問題ない!」
花村大河「アイナちゃんのことに比べれば 俺の卒業式なんて些細なことだ」
宮森「なんだ、それ」
宮森「確かに、お前の言う通りだ」
石上「どうしたんだ? もう会場へ移動するよ」
宮森「せんせーい」
宮森「俺、花村君と卒業式サボりまーす」
花村大河「えっ!? 宮森君!?」
石上「どういうことだい!?」
石上「説明したまえ」
宮森「ほら、花村、早く説明しろ 時間ないぞ」
花村大河「あ、うん」
花村大河「大切な友達の卒業式に行ってきます」
宮森「同じく」
石上「ちょ、ちょっと待った」
石上「卒業式だよ? 前代未聞だよ!」
花村大河「というわけで、失礼します!」
花村大河「また後で卒業証書とか荷物は 受け取りに来ます」
宮森「同じく」
石上「2人とも!」
〇病室
花村大河「というわけ」
花村大河「面会は先生にも許してもらってる」
花村大河「卒業式に参加しよう、アイナちゃん」
雪島アイナ「どうやって?」
雪島千砂「今からじゃ準備は間に合わないかと」
花村大河「大丈夫です」
〇体育館の舞台
宮森「アイナちゃん、聞こえる?」
宮森「俺、他校の体育館でめっちゃ浮いてるわ」
宮森「一生の話のネタになるよ」
〇病室
雪島アイナ「みやもりくん」
花村大河「これで卒業式に参加できるよ」
雪島千砂「アイナ」
雪島アイナ「なに? おかあさん」
雪島千砂「卒業式の日にやることあるんじゃない?」
雪島アイナ「ん?」
〇校長室
安村校長「本当に驚かされる」
安村校長「まさか、自分たちの卒業式をサボって 来てしまうなんてな」
安村校長「責任だの言っていた自分が恥ずかしくなる」
安村校長「私たちもしっかり責任を果たさないとな」
〇病室
雪島アイナ「にあうかな?」
花村大河「とっても似合ってるよ」
花村大河「あとは呼名が始まるまで 一緒に卒業式を見よう」
雪島アイナ「うん」
〇病院の診察室
看護師「先生、よろしいんですか?」
看護師「雪島さん、本当は面会なんて出来ないぐらい 体調が悪いですよね」
大内加奈子「今日ぐらい大目に見てあげてください」
大内加奈子「全責任は私が負います」
看護師「分かりました」
大内加奈子「これが私にできる卒業の贈り物だから」
〇体育館の舞台
「続いて、通信制課程 卒業式参加希望者の呼名を行います」
宮森「いよいよだぞ」
〇病室
雪島アイナ「き、きんちょうする」
雪島アイナ「きょうのわたし、こえがでないよ」
花村大河「練習を思い出して」
〇病室
花村大河「雪島アイナ!」
雪島アイナ「は、はい」
〇中庭
宮森「じゃあ、俺が名前を呼んであげるよ」
雪島アイナ「うん」
宮森「では」
宮森「花村大河」
花村大河「えっ!?」
花村大河「俺?」
雪島アイナ「ははははは」
〇病室
花村大河「どうしたの? アイナちゃん」
花村大河「体苦しいの?」
雪島アイナ「ちがうの」
雪島アイナ「わたしにも そつぎょうしきのまえに」
雪島アイナ「ほうかごみたいなおもいでが できたんだなって」
花村大河「これからは思い出をもっと作ろう」
花村大河「海に行ったり、花火見に行ったり お花見に行ったりさ」
雪島アイナ「ぜったい つれていってね」
花村大河「もちろん」
雪島アイナ「ふふ」
〇仮想空間
アイコ「わ、私はアイコって言います」
〇仮想空間
アイコ「だから、教えてよ」
アイコ「学校のこと」
〇仮想空間
アイコ「『私の声、聞こえますか?』」
〇仮想空間
アイコ「『私に会いに来てよ』」
〇病室
雪島アイナ「ほんとに たのしかったなぁ」
花村大河「あっという間だったね」
雪島アイナ「うん」
花村大河「ほら、アイナちゃん、そろそろじゃない?」
雪島アイナ「そうだね」
〇体育館の舞台
「雪島アイナ」
〇病室
雪島アイナ「はい」
〇体育館の舞台
アイナの声「はい」
〇病室
雪島アイナ「わ、わたしのこえ きこえたかな」
花村大河「聞こえたよ」
アイナさん、一生の思い出になったでしょうね。生まれて初めての卒業式🥲
大河くんがアツすぎますね✨ 自身の卒業式お構いなしって💦
ユイコロでの偶然の、正体を偽ってのコミュニケーションからのここまでの進展、ステキです😊