第107話 終わった恋なんてない(脚本)
〇施設内の道
2021年 オレゴン州 ポートランド 国立霊長類研究センター B棟外
エンチャント魔導法士「走れ!あのフェンスを越えたらワシらの勝ちだ!」
フェード「狙撃手がいるぞ、どうする?」
鸞「鳥獣忍術『鷆(ヨタカ)!』」
エンチャント魔導法士「うお!?なんだこれ、ススか!?」
鸞「術をかけられた者の黒色の割合が多い場合『相手が認識できない』術だ」
凪園無頼「じゃあ俺とキングとフェードにまでかけなくて良くねー?黒色の割合たけーじゃん!」
鸞「うっさいッ!判別してる余裕が無いんだ、文句言うな!」
そして皆が走りながらフェンスに向け走り続ける。フェンスはエンチャントの魔術によって『鉄板』に作り替え
全員が脱出したと同時に鉄板を『有刺鉄線』に瞬時に作り替えた
アナザー・オリジンとの邂逅から72秒。斎王一派無事に脱出成功
〇地下室
2021年 オレゴン州 ポートランド 国立霊長類研究センター A棟 一時保管室
シャルル「··· ··· ···」
パキパキと音が鳴る。水溜まりの氷膜を足で割るような小気味いい音が静かな部屋に響く
数秒前まで居たアナザー・オリジンが居なくなり、途端に冷羅の再生は速度を上げていた。
やがてむくりと冷羅が起き上がり、シャルルに現状の説明を聞くとただ立ち上がり
鬼月冷羅「ライム・ビーク」
壁にそっ···と手を置き、過剰な程凍らせながら壁を砕いてただ進んで行った。
やがて彼は外に平然と歩みを進めたが、彼の前に一人の男が立ち塞がった
〇施設内の道
2021年 オレゴン州 ポートランド 国立霊長類研究センター A棟 一時保管室
油谷 葉月「うー寒っ。冷羅さんゲートまで案内しますよ?」
冷羅はこの言葉を無視しようとした。当たり前の反応である。しかしその考えもすぐに改めることになる
油谷 葉月「『10%割引で飲むコーヒーは美味い』」
鬼月冷羅「『安くなった分優しさが増したかも』···お前どこでそれを···!」
立ち去れなかった。これを知っているものは僅かな人間だけ。なぜこいつが?疑問ばかり浮かぶ
しかし目の前の男は何も言わずただゲートの方へ歩き出した。冷羅はそれを戸惑いながら後を追う他なかった
男は静かに話し始めた
油谷 葉月「私はね···ずっと見てたんです。雪羅さんに出会って優しくしてくれたあの日からずっと···」
油谷 葉月「ギルドにいる時、喫茶店にいる時、家までの帰路、全て見ていました」
シャルル「ストーカー。気持ち悪···」
油谷 葉月「いえ?私は見守っていただけだ。今でも思い出す···あの仕草に表情に···私の世界は輝いた」
油谷 葉月「そんな輝きを···私だけの光を···恋敵は奪った。輝く世界から雪羅さんという『太陽』を奪った」
油谷 葉月「でもいいんです。恋敵がいなくてもきっと雪羅さんは私に振り向いてくれなかったでしょう···」
鬼月冷羅「何が目的だ···何が目的でお前らWoOSは動いてる」
冷羅の拳が静かに握られる。体は氷に覆われ目の前にいる男を『殺す』という意志のみが宿った
足が止まる。気づけばゲートの前に3人は居り周りには大勢のアナザー、一般兵、そしてアナザー・オリジンが居た
油谷 葉月「『恋を実らせる』それ以外ありますか?」
鬼月冷羅「何だと···?組織を使ってまでやる事が···それか?」
冷羅のその問いには答えず葉月は片腕をゲート出口へ広げ、ただ笑顔で佇んでいた
殺す、絶対殺す。怒りが沸き立ち思考が支配される。
だがそれを行わず踏みとどまる理性のブレーキ、アナザー・オリジンという絶対的存在に平静は保たれ冷羅は静かに歩みを進める
油谷 葉月「それでは···また会えるといいですね?『冷羅さん』」
男の静かな言葉が夜の闇にただ消えていく。氷帝と変化武器と共に闇に混ざりあった
To Be Continued··· ··· ···