第11話『突然』(脚本)
〇学校の校舎
〇教室
宮森「花村、帰りにどっか寄ってこうぜ」
花村大河「いいよ」
〇ファミリーレストランの店内
宮森「花村はもう指定校推薦で決まったんだっけ?」
花村大河「うん」
花村大河「宮森君もだよね」
宮森「ああ、だから、ほとんど自由だわ」
宮森「それにしても早いもんだな」
宮森「あと少しで卒業だぞ」
花村大河「うん」
花村大河「卒業か・・・・・・」
宮森「どうかしたか?」
花村大河「何でもないよ」
宮森「アイナちゃんとはどうなんだ?」
花村大河「まったく連絡とってない」
宮森「そっか」
宮森「一度途絶えると連絡取りづらくなるよな」
花村大河「そうだね」
花村大河「何してるのかな」
〇通学路
花村大河「最近、クラスのみんなとも 打ち解けることが出来てるし」
花村大河「良かった」
花村大河「アイナちゃん!?」
〇大きい病院の廊下
雪島千砂「大河君、本当にごめんなさい」
雪島千砂「以前アイナが酷いことを言ってしまい こんなことを頼めるような立場ではないんですが」
雪島千砂「どうしても、大河君に来てもらいたくて お呼びしてしまいました」
花村大河「いえ」
花村大河「今はそんなことを言ってる場合じゃないですから」
〇病室
花村大河「アイナちゃん」
雪島アイナ「・・・・・・」
花村大河「調子はどうなんですか?」
雪島千砂「山は越えました・・・・・・ でも、またいつ同じ波が来るかはわからないって」
雪島千砂「だから、その前に一度大河君に アイナと会って欲しくて」
雪島千砂「そしたら、アイナも少し良くなるかもって」
雪島千砂「ワガママなお願いでごめんなさい」
花村大河「いえ、俺もアイナさんのことは ずっと気になっていたんで」
雪島千砂「ありがとう」
花村大河「目覚めることはないんですか?」
雪島千砂「今、疲れて寝ているだけだから そのうち起きると思います」
花村大河「少し会わない間にこんなに弱っちゃって」
花村大河「アイナちゃん、聞こえる?」
雪島アイナ「・・・・・・」
雪島千砂「ずっとね、アイナは 大河君に対して後悔してたわ」
〇病室
雪島アイナ「私、大河くんに酷いこと言っちゃった」
雪島千砂「・・・・・・」
雪島千砂「大河君に謝りましょう」
雪島千砂「きっと許してくれる」
雪島アイナ「絶対嫌われたから無理だよ」
雪島千砂「そんなことない」
雪島アイナ「なんで、そんなことわかるの?」
雪島千砂「大河君はきっと良い子だから」
雪島アイナ「どんな顔をして謝れば良いの?」
雪島アイナ「私には分からない」
雪島千砂「じゃあ、お母さんが代わりに謝ってあげる」
雪島アイナ「それじゃ、ダメなの」
雪島アイナ「私の口からちゃんと謝らないと」
雪島アイナ「死に切れないよ」
雪島千砂「そんなこと言わないで」
雪島アイナ「こんなときに、ユイコロがあればなぁ」
〇病室
雪島千砂「これ、アイナからの手紙です」
花村大河「手紙?」
雪島千砂「本当ならアイナから万が一があったときに 大河君に渡すよう言われていました」
雪島千砂「だけど、私の勝手な判断で いま渡しておきます」
花村大河「読んでいいですか?」
雪島千砂「はい」
〇病室
雪島アイナ「花村大河くんへ」
雪島アイナ「この手紙を読んでいるということは 私はこの世にもういないと思います」
雪島アイナ「この手紙で1番伝えたいことは」
雪島アイナ「『ごめんなさい』ということです」
雪島アイナ「あのとき、いろいろと感情がたかぶって 言ってはいけない言葉を吐いてしまいました」
雪島アイナ「あとから何度も何度も後悔して あのときをやり直したいと何度も思いました」
雪島アイナ「あの日のことを毎日のように夢で見ます」
雪島アイナ「これで、大河くんを傷付けてしまったのは 2回目になりますね」
雪島アイナ「本当にごめんなさい」
雪島アイナ「大河くんが無事高校を卒業して 大学生になれることを祈っています」
雪島アイナ「雪島アイナより」
雪島アイナ「もし願いが叶うなら」
雪島アイナ「もう一度だけ 直接“ごめんね”と“ありがとう”を言わせてほしかったな」
〇病室
花村大河「・・・・・・」
雪島千砂「どうでしたか?」
花村大河「友達について何も知らないんだ」
雪島千砂「えっ?」
花村大河「アイナさんのお母さん」
花村大河「一つ提案があるんです」
雪島千砂「な、なんでしょう?」
〇病院の診察室
大内加奈子「久しぶりね」
大内加奈子「アイナちゃんに会ったの?」
花村大河「ええ」
大内加奈子「私に何か用がある顔してるわね」
花村大河「そうです」
花村大河「先生、お願いがあります」
大内加奈子「何かしら?」