エージェント姉妹の一存

Safaia

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〇島の家
秋羅「それじゃあ、行ってくるよ」
小春「えぇ、気をつけてね」
秋羅「うん」
小春「・・・行ったわ」
歌夏(かな)「行ったな」
小春「五分後、私達も行動を開始するわよ」
歌夏(かな)「お、おう」
小春「おうじゃなくてサー!」
歌夏(かな)「さ、サー!」
歌夏(かな)(はぁ、なんでこんな事に・・・?)

〇城の会議室
  昨晩。
歌夏(かな)「秋羅はオレらの事情をくまなく探ろうともせず、それどころか今までずっとオレらの表向きの姿を信用し、ついて来てくれた」
歌夏(かな)「その秋羅が、本当にオレらの裏向きの姿を見ていいのか。それはあいつを育てたオレ達が決めるべき」
歌夏(かな)「違うか?」
マスターチーフ「・・・・・・」
マスターチーフ「良いだろう。その提案を受け入れる」
歌夏(かな)「それじゃあ・・・」
マスターチーフ「但し、私からの条件をお前達が受け入れられればの話だがな」
歌夏(かな)「条件?」
マスターチーフ「秋羅がエージェントとなる器にふさわしいか、その判断はお前達に委ねる」
マスターチーフ「猶予は三ヶ月。次の年明けまでに検討をつけるものとしよう」
歌夏(かな)「三ヶ月か・・・」
マスターチーフ「どうした? 怖気づいたのか?」
歌夏(かな)「・・・まさか」
歌夏(かな)「むしろ上等と言ったところだぜ」
冬樹「私も歌夏に同意する」
冬樹「私の頭脳にかかれば、三ヶ月以内に秋羅のスペックを計測するなど容易い」
小春「私も異論ありませんわ」
マスターチーフ「そうか」
マスターチーフ「では満場一致で可決されたというわけで、この話は終了とする」
マスターチーフ「懸命な判断に期待しよう・・・我が娘たちよ」
  それを言い残すと、男の影は煙にまかれて消えていった・・・。

〇城の会議室
小春「ふぅ」
小春「一先ずは一件落着と言った所かしら」
小春「歌夏、貴方の事は少し見直したわ」
小春「さっきは反発しちゃったけれど、マスターに意見を通せるなんて、少しは成長したじゃない」
歌夏(かな)「・・・」
小春「でも、これぐらいで図に乗るようじゃまだまだ半人前よ」
小春「これからも一層精進して──」
歌夏(かな)「ど」
小春「ど?」
歌夏(かな)「どぉぉぉしよぉぉぉ小春姉ぇぇぇぇぇ!?」
歌夏(かな)「オレ、とんでもないことしちまったぁぁぁっ!」
歌夏(かな)「三ヶ月でなんて判断のつけようがねぇぇぇぇ!!」
小春「えぇぇ、図に乗るどころかむしろテンパっている!?」
冬樹「ふふっ・・・」
歌夏(かな)「冬樹、お前なに笑ってんだ」
歌夏(かな)「というか、今、一枚撮っただろ!?」
冬樹「証言を黙秘する」
歌夏(かな)「ふゆきぃぃぃぃ!」
小春「そこまでよ、二人共」
歌夏(かな)「小春姉・・・でも・・・」
小春「そこまでと言ったのよ。私は」
小春「兎にも角にも、秋羅の死亡率が下がっただけでもよしとしましょうよ」
歌夏(かな)「でもよ、三ヶ月で・・・年末までにあいつをエージェントにするかどうか判断するなんて出来ねぇよ」
歌夏(かな)「せめて来年の今ぐらいだったら、もっと余裕があれば」
小春「一先ず落ち着きなさい」
小春「それだけユグドラシルの情勢が乏しいという事よ。きっと」
歌夏(かな)「・・・・・・」
小春(とは言ったものの、三ヶ月で決断を下すのはあまりにも無茶ぶりね)
小春(マスターチーフを前にああは言ったものの、判断基準はどのようにしたらいいかとか、念入りに絞るべきだったわ)
小春(いったいどうしたものか・・・?)
  ブーッ!!
秋羅「姉さん。僕だよ」
秋羅「扉がピクリとも開かないんだけど、何かあったの?」
小春「あ、秋羅!」
小春「ごめんなさい。今開けるわね」
小春「で、どうかしたのかしら?」
秋羅「どうかしたのって、厨房に行っていたんだよ」
秋羅「歌夏姉さんが、どうしても鍋が食べたいって言うから食材の確認をしてたの・・・」
秋羅「って、歌夏姉さんどうしたの? 汗だくだくじゃん!?」
歌夏(かな)「あ、あぁ。これはだな」
歌夏(かな)「お前が帰ってくるまで高速で屈伸してたんだ。その所為もある」
秋羅「その所為もある?」
小春「実は、さっきの電話を対処した後、クライアント先から連絡があってね」
小春「先方がこれでもかと言える程のお得意様だったから、歌夏が凄く緊張しちゃって・・・」
秋羅「そっか」
秋羅「フルオーダー式のコンサルタントだものね、姉さん達は」
小春「そう。そうなのよ!」
小春「それで、鍋の具材はどうなったのかしら?」
秋羅「それなんだけど、思っていたより食材が足りなくてね」
秋羅「明日買いに行けるなら買いに行きたいんだけど・・・」
小春「そう、それは困った・・・わね」
小春「待って、買い物?」
小春「ねぇ秋羅、足りない具材ってどんなの?」
秋羅「長ネギやニンジン・・・あと、キャベツとフグ肉だよ」
秋羅「フグは今が旬だからね。きっと商店街に行けば売っていると思うんだ」
秋羅「でも、姉さん達のクライアントがあるのでは無暗に家を空けるわけには」
小春「今すぐに。いえ、明日絶対に買いに行きなさい!」
秋羅「えぇっ!? 姉さん仕事があるじゃないの?」
小春「先のお得意様の件なら随時報告の話だったの。急を要するわけではなかったから安心して」
秋羅「そ、そう?」
秋羅「じゃあ取り敢えず明日市場に行ってみるよ」
小春「えぇ、そうして頂戴」
秋羅「それじゃあ僕、お風呂場に行って湯を溜めてくるね」
秋羅「ピブは要る?」
小春「お願い」
歌夏(かな)「それで、どうするつもりだよ。小春姉」
小春「ふふん、それはね・・・・・・」

〇通学路
歌夏(かな)「小春姉の提案だからどんなものかと期待してみれば」
歌夏(かな)「朝っぱらから弟をストーキングかよ」
小春「ストーキングだなんて、失礼なこと言わないで?」
小春「これも秋羅がどのようなエージェントになるのか見極める為の重要なステップなのよ」
小春「エージェントたるもの、尾行は何時いかなる時も堂々とせよ。お分かり?」
歌夏(かな)「相手が弟じゃなければな」
冬樹「私は小春姉に同意する」
冬樹「エージェントたるもの堂々とした振る舞いをとれる胆力を持つべき」
歌夏(かな)「冬樹、手前にだけは言われたくねぇよ」
歌夏(かな)「なんたってお前は今・・・」
歌夏(かな)「ドローンじゃねぇかっ!」
小春「歌夏、大きな声を出さないで。 マトに気づかれる」
歌夏(かな)「けど、小春姉。こんなのツッコまない方がおかしいじゃねぇか?」
歌夏(かな)「オレ、セーラー服。小春姉がスーツ姿ときて、もう一人の相方がドローンって」
歌夏(かな)「誰がどう見ても目立ち過ぎるだろう?」
小春「仕方がないでしょう? 冬樹はこんなお日様サンサン照りの時に出られるわけがないし」
小春「私に至っては外着が用意できなかったから」
歌夏(かな)「それはそれは苦しい言い訳ですこと・・・?」

〇通学路
  数分後。
歌夏(かな)「取り敢えずここまでは気づかれる事なく進んでいるな」
歌夏(かな)「マトにも特に変わった点は見当たらねぇ」
小春「そうね」
小春「でも油断は禁物よ。いくら秋羅が鈍感だと言っても、何処からか予想外の展開が待っているかもしれないわ」
歌夏(かな)「はいはい、わーってるよ」
歌夏(かな)「・・・それにしても・・・」
老人「おぉ、君は秋羅くんじゃないか」
老人「久しぶりじゃな。元気にしておったか?」
秋羅「長老。お久しぶりです」
秋羅「以前よりも髭が白く・・・いやぁ、見違えました」
老人「長老はよしてくれよ。私はもうあの家を卒業したのだから」
老人「しかし、君には幾つも世話になったのもまた事実」
老人「今度、人手がいるようなら何時でも言ってくれよ。 力になるからの」
秋羅「ありがとうございます」
若松さん「あら、秋羅くん。おはよう」
秋羅「これは若松の奥さん。おはようございます」
若松さん「これから朝市通い? 精が出るわねぇ・・・」
秋羅「いやぁ、奥さんに比べたらまだまだです」
秋羅「あ、そうそう。肉じゃがは味付け前にバターを入れてくださいね」
若松さん「煮崩れしないんでしょう? 分かってるわよ」
こうた「秋羅の兄ちゃーん」
秋羅「こうたか! おひさー!!」
歌夏(かな)「すげぇ慕われているな」
小春「えぇ、そうね」
小春「相手によって話題と言葉遣いを変えている。これは見応えがあるわ」
歌夏(かな)「そうか? これぐらい普通だと思うけど・・・」
  くわっ!
小春「甘い、甘いわよ。歌夏」
小春「エージェントたるもの、好みの相手を決めるべからず」
小春「どんな時も、どのような状況の中でも、相手の呼吸に合わせ、交流に移す。それがプロよ」
歌夏(かな)「えーっ・・・」
歌夏(かな)(今の会話の中にそんな利点があったのか?)

〇川に架かる橋
  更に進むこと五分。
歌夏(かな)「そろそろ商店街だな」
歌夏(かな)「あの三人以降、誰とも会わなかったから予想より早く辿り着きそうだ」
小春「そうね」
小春「おや? あれは・・・・・・」
明菜「あ、秋羅くん。おはよう」
秋羅「明菜さん。おはようございます」
秋羅「今日も朝練? 精が出ますね」
明菜「違うよ。今日はたまたま家の外に出ただけ」
明菜「秋羅くんの方は何しに来たの?」
秋羅「僕? 僕は買い物だよ」
小春「誰なの、あの典型的な文学少女じみた女は」
歌夏(かな)「ファーストコンタクトで出た言葉がそれかよ?」
歌夏(かな)「あれ、新庄(しんじょう)高校の明菜さんだな」
歌夏(かな)「秋羅のクラスメイトだ」
小春「そうなの?」
冬樹「中森明菜。16歳。女。新庄高校声楽部所属」
冬樹「二世帯住宅育ち。実父は既に他界している。・・・スリーサイズは──」
歌夏(かな)「わー、わー、わーっ! そこまで明かさなくて良い!!」
秋羅「?」
明菜「どうしたの? 秋羅くん」
秋羅「いや、なんか・・・」
秋羅「ところでさ、今日はぼたもちは一緒じゃないの?」
明菜「うん。実はね・・・」
秋羅「えぇぇっ、ぼたもちがお見合い!?」
明菜「そうなの。 三丁目の人が同種を飼っていてね」
明菜「それでしばらく向こうに泊まって様子を見てみないかって事になって」
秋羅「そっか・・・まぁ、ぼたもちもいい大人だものな」
秋羅「ゆくゆくはお母さんになるのか」
明菜「お母さんと言えばね。ついこの間・・・」
秋羅「へぇ。ママさんがエアロビクスを」
明菜「そうなの。それでリビングで練習していたら照明を割ってしまって」
明菜「ほら、うちってぶら下げるタイプでしょう。大した怪我はなかったんだけど、お婆ちゃんが怒髪天で」
秋羅「ほうほう」
歌夏(かな)「おい。もうかれこれ十分は話しているぞ」
冬樹「正確に言えば十二分四十九秒である」
歌夏(かな)「そんな数字は良い」
歌夏(かな)「それより早くしないと朝市に間に合わな・・・」
  歌夏は後ろを振り返ったが、誰も居ない。
歌夏(かな)「あれ、小春姉は?」
冬樹「小春姉ならあっち」
秋羅「いやぁ、生薬と防虫剤を間違えて飲んで腹壊すとか、ほんと間抜けな話ですな」
明菜「そう思うでしょう。だから私もおかしくってつい・・・」
明菜「そう言えば、秋羅くんのお姉さん方は元気?」
秋羅「姉さん達? そうだな──」
メイド…?「もし? そこのお二方」
秋羅「うわっ、なんですか!?」
メイド…?「商店街までの道を尋ねたいのですが、よろしいですかな?」
秋羅「商店街ならこの先をまっすぐ進んだ後に、二つ目の角を右に曲がって下さい」
メイド…?「分かりました」
メイド…?「ご協力感謝いたします」
明菜「なんだったのだろう?」
秋羅「さぁ・・・?」
秋羅「待てよ、商店街?」
秋羅「あぁーっ!! そうだった。 僕もそこに用事があるんだった」
秋羅「ごめん明菜さん。うちの話ならまた今度するね」
秋羅「ぼたもちの健闘もお祈りしているから!」
明菜「えぇっ!? 秋羅くん!?」
歌夏(かな)「なんとか軌道修正出来たみたいだな」
歌夏(かな)「それにしても小春姉。その恰好はいったい・・・?」
小春「仕方ないでしょう。近くの店に寄ったらこれしか用意されてなくて」
小春「違和感はあっただろうけど、これで任務は続けられる。そうでしょう?」
歌夏(かな)「もう手段は選んでられねぇってわけか。理解した」
冬樹「左に同じく」

〇原宿の通り(看板無し)

〇商店街
歌夏(かな)「なんとか商店街に着いたな」
歌夏(かな)「この分だと朝市が終わる前には買い物が終わりそうだ」
小春「えぇ」
小春「ところで冬樹、ドローンは?」
冬樹「ここに着く前に充電切れた」
冬樹「だから当面はこのソフビで会話に参加する」
歌夏(かな)「こうなるとハイテクなのかそうでないのか分からんな」
小春「そうね」
小春「ところで、秋羅は何をしているのかしら?」
秋羅「・・・・・・」
小春「さっきから微動だにせず、ただじっと佇んで」
小春「これじゃあ他所様の通行の妨げになっているだけじゃないの」
歌夏(かな)「いや、そうとも限らないぜ」
小春「え?」
歌夏(かな)「元より、秋羅が意味もなくあんな場所で佇む野郎と思えるか?」
小春「いいえ、思わないわ」
歌夏(かな)「だろう? ならばもう少し様子を見てみようぜ」
秋羅「・・・・・・」
  くわっ!
歌夏(かな)「あ、急に走り出した!」
小春「急いで追いかけるわよ!!」
歌夏(かな)「え、でも、この人混みの中だぞ。間に合うのか?」
冬樹「問題ない。私が監視カメラを使って追いかける」
冬樹「二人はお手元のスマホからその様子を見張ってけ」
歌夏(かな)「へ、へぇ・・・そりゃすげぇな」
小春「それじゃ、お手並み拝見といきましょう」
  次回へ続く。

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