エージェント姉妹の一存

Safaia

僕らはみんな・・・。(脚本)

エージェント姉妹の一存

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〇商店街

〇商店街
歌夏(かな)「すげぇ、ステップ・走りに一寸の狂いも無い」
歌夏(かな)「その動きに誰一人視線が追いついていねぇ」
小春「本当だわ」
小春「監視カメラからの映像だから少しラグがあるけど、これは・・・」
冬樹「以前、秋羅は町内会の球技大会に出場したと話していた事があった」
冬樹「先程のこうたもその時に輪を深めた模様」
歌夏(かな)「そういや二月程前にそんな話していたような?」
小春「すっかり忘れていたわね」
魚屋のおやじ「おぉ、秋羅くん。おはよう」
秋羅「おはようございます! おやっさん」
秋羅「あの、フグの肉はありますか?」
魚屋のおやじ「あぁ、フグ肉ね」
魚屋のおやじ「今朝早くに仕入れたもんがあるよ。ちょっと待っててね」
魚屋のおやじ「はい、お待ちどぉさん」
魚屋のおやじ「腐るとあれだからパックしてクーラーボックスに入れておいたからね」
秋羅「そんな。わざわざそこまで気を使わなくても」
魚屋のおやじ「いやいや、常連さんなんだからむしろ気を使うべきなのだよ」
魚屋のおやじ「ボックスの予備はまだたくさんあるから、明後日でも返してくれりゃあそれで良い」
秋羅「すみません。わざわざ・・・」
歌夏(かな)「ここでも慕われ屋が働くのか」
歌夏(かな)「見習いたいなぁ、その人望」
小春「そうね」
小春「マスターが彼を推薦したがってた理由が少しわかって来たかも」
冬樹「次、八百屋の方に動く」
冬樹「来た道を引き返していくから・・・ん?」
小春「冬樹、どうかしたの?」
冬樹「・・・なんでもない。とにかくばったり出くわさないように気を付けて」
小春「え、えぇ・・・・・・」
秋羅「おばちゃん。おはよう」
八百屋のおばさん「いらっしゃい秋羅くん」
八百屋のおばさん「それで、今日は何をお買い求めかしら?」
秋羅「えぇ。実は今日、うちで鍋をする事になって」
秋羅「それでニンジンとキャベツと長ネギがあったらなぁ、と」
八百屋のおばさん「成る程ね」
八百屋のおばさん「ニンジンと長ネギならなんとかなる・・・けど」
秋羅「けど?」
八百屋のおばさん「生憎、キャベツが無いのよ」
秋羅「えぇっ!?」
小春「あら、トラブル発生のようね」
歌夏(かな)「表情から察するにお目当ての品が無かったみたいだな」
歌夏(かな)「まぁ、買い物ではそういうハプニングはつきものだ」
小春「そうね」
小春「それに秋羅はそれぐらいでへこたれる弟ではないわ」
冬樹「小春姉、歌夏。今一度報告が」
小春「なに?」
冬樹「少しばかり・・・いや、かなり厄介な事になった」
「えっ?」
秋羅「成る程、配達のトラックが遅れているんですか」
八百屋のおばさん「そうなのよ」
八百屋のおばさん「電話で話を聞いてみたら、高速道路の料金所でトラブルがあったみたいでね」
八百屋のおばさん「申し訳ないけど、朝の分は諦めてくれない?」
秋羅「そうですか」
秋羅(弱ったなぁ、小春姉さんの手前で買うって言っちゃったし)
秋羅(かといって無い物ねだりするわけにもいかないか)
秋羅「分かりました。では、キャベツはやめて白菜を──」
秋羅「ん?」
アームド兵器「オォォォォォ・・・!!」
秋羅「な、なんだぁ・・・!?」

〇商店街
小春「な、なによ。なんなのよ、あれ」
歌夏(かな)「ハリウッド映画とかでよく見るロボット兵器みたいだけど?」
小春「そりゃ見たらわかるわよ」
小春「問題はどうしてそんな大それたものがこの町にあるわけ!?」
小春「冬樹、あれはいったい何?」
冬樹「今、製造元を特定中。しばし待たれよ」
小春「なるべく急いで頂戴」
八百屋のおばさん「あわわ・・・なんかやばいのがうちに来ちゃったわ」
秋羅「おばちゃん、家の中に入ってて」
秋羅「それと警察と自衛局に通報を」
八百屋のおばさん「え、えぇ。分かったわ!」
アームド兵器「オォォォォォ・・・!!」
秋羅(なんなんだ、あいつ。なんでこんな商店街に!?)
アームド兵器「女ぁぁぁ、出てきやがれぇぇぇっ!!」
秋羅「!」
歌夏(かな)「小春姉、今のは!」
小春「えぇ、驚いたわ。まさかロボットが喋るだなんて」
歌夏(かな)「そうじゃなくて、今の声だよ」
歌夏(かな)「奇声がましくてよく聞き取れなかったけど、あれって・・・」

〇黒背景
モヒカン男「女、借りを返しに来たぜ!」
モヒカン男「この街を火の海にしたくなけりゃ、出てくるんだなぁぁあぁぁっ!!」

〇商店街
小春「この声、昨日の情報屋?」
小春「しつこい人。こうなったらマジで嫌われるわよ」
歌夏(かな)「言っている場合か!?」
歌夏(かな)「早く対処しねぇとここら一帯がやばい事になるぞ!」
小春「落ち着きなさい」
小春「ここで派手に登場しても、かえって混乱を招くだけよ」
歌夏(かな)「じゃあどうすりゃいいんだよ?!」
小春「待って。 ここはうちの情報屋の技術を信じて・・・」
冬樹「二人共、お待たせ。情報開示済んだ」
小春「ほら来た」

〇屋敷の書斎
冬樹「自衛局の管理サーバーを経由して調べた結果、あの人型兵器は『アイアンブレイド』の所有していた武器だと判明」
歌夏「『アイアンブレイド』!? それってつい昔に破産、消滅したテロリスト一派じゃねぇか!」
歌夏「どうしてそんなピークを過ぎた組織があんな大それた兵器を・・・?」
冬樹「存在が消える前、連中は兵器や基地の土地権をブラックマーケットに売って部下達への退職金のあてにしていた様子」
小春「その内の一品があのうるさい人に買われたってわけ?」
冬樹「そーゆーこと」
冬樹「どうも造ったはいいが使いどころが分からず放置されていた代物であるらしい」

〇商店街
小春「ズルいわよそんなの。ファンタジーの世界じゃないんだから」
歌夏(かな)「向こうからすりゃオレ達の方がファンタジーだ」
歌夏(かな)「それより」
アームド兵器「どうした!? 来ないならこっちから行くぞぉぉぉっ!!」
着飾った女性「きゃあああ!!」
腰の曲がった男「!?」
歌夏(かな)「両腕にバルカン砲やミサイルなんて積んでやがる」
歌夏(かな)「ブレイドの奴ら、いったいどんな工事をしたらあんな破壊道具を生み出せるんだ?」
小春「ろくに戦いもせず破産したのも頷けるわね」
小春「冬樹、貴方はあのロボットのコンピュータに忍び込めないかやってみて」
冬樹「既に施行済み」
小春「商店街の各ゲートを封鎖し、付近の住民への避難指示を」
冬樹「それも施行済み。防衛省の提示を装いながらやっている」
歌夏(かな)「それでいてよく足がつかないものだな」
小春「それだけ逃げ足が速いってことよ。うちって」
小春「さぁ、私達は如何に目立たずに状況を打開するか考え・・・」
歌夏(かな)「こ、小春姉!」
小春「今度はなによ?」
歌夏(かな)「秋羅が!」
アームド兵器「女ぁ、早くしねぇとここらを焼ききるぞぉぉぉっ!!」
「おい、そこの大きいの!!」
アームド兵器「あ”!?」
秋羅「下手なことは止めるんだ。さもないと自分が後悔するだけだぞ」
アームド兵器「なんだぁ青いの、俺にケチ付けるってのか!?」
小春「あ、秋羅!?」
歌夏(かな)「あの馬鹿。誰に向かって説教しているのか分かっているのか?」
秋羅「貴方の怒りは強いのは分かった」
秋羅「けど、周りを巻き込んでまでそれを表すのは間違ってる」
秋羅「こんな事を今すぐ止めるんだ。さもないともっと恐ろしい事になるぞ」
アームド兵器「黙れ、黙らないとお前も燃やすぞぉ!!」
秋羅「僕がどうなろうが構う事は無い」
秋羅「けど」
秋羅「詐欺なんて警察に訴えればいいだけじゃないですか・・・!」
アームド兵器「・・・は?」
秋羅「貴方が誰に騙されたのかなんて知らない」
秋羅「でも、今手を止めて正しい道を選択すれば、きっと楽になれる」
秋羅「だから一度心が折れたくらいで諦めないでください」
アームド兵器「ちょっ、おまっ、さっきから何を言ってやがる!?」
秋羅「主にこちらの台詞だ! 個人の怨嗟で他人を巻き込まないで!」

〇商店街
小春「冬樹、秋羅はいったい何を言っているの?」
冬樹「不明。皆目見当つかず」
歌夏(かな)「あー、こりゃあれだな」
歌夏(かな)「オレ達からするとあいつは自分達への報復の為に参った」
歌夏(かな)「しかしその事実を知らない秋羅からすると、女に騙された野郎があんなデケェものを積んで報復に来たと見受けられる」
歌夏(かな)「・・・みたいな?」
小春「なんなのよ、それ!?」
小春「解釈が可愛過ぎるじゃないの!」
歌夏(かな)「そうでもないんじゃない?」
歌夏(かな)「どちらにせよこのまま放っておくと秋羅があいつのマトになっちまう」
歌夏(かな)「早急にオレらも動かねぇと・・・」
小春「待ちなさい」
小春「このままがむしゃらに突っ込んでも、更に被害が増すだけだわ」
小春「それにあそこには秋羅が居るのよ。 今のあの子に私達の素顔を晒すわけには・・・・・・」
歌夏(かな)「小春姉」
小春「なんてね。エージェントは何時だって最善の策を講じるものよ」
小春「堂々と佇むのはもうおしまい。ここからは堂々と前に突っ走るのみ」
歌夏(かな)「おぉ。珍しく前向きじゃないか!」
歌夏(かな)「それで、どんな策があるっていうんだい?」
小春「一先ず、歌夏はこれに着替えてくれる?」
歌夏(かな)「・・・え?」
秋羅「こんな事をしても誰も幸せにはならない」
秋羅「だから、今すぐ手を止めてください!」
アームド兵器「うるせぇ、俺に指図すんじゃねぇっ!!」
  兵器の右腕、バルカン砲が秋羅に向けられる。
秋羅「・・・っ!」
  秋羅は自分の死期を悟り、目を瞑る。
  と、次の瞬間──
小春「おおぉぉぉっ!」
アームド兵器「なっ!?」
  小春の飛び蹴りがその照準をずらす。
秋羅「!!?」
???「なんて無駄のねぇ動き。流石だ」
???「だがな──」
歌夏(かな)「そういうのはオレの仕事だぁぁ!!」
アームド兵器「うげぁっ!」
秋羅(小春姉さん、歌夏姉さん・・・)
小春「そこの坊や、怪我は無い?」
秋羅「う、うん」
秋羅「それより歌夏姉さん、その恰好・・・」
歌夏(かな)「言うな! それ以上口をきいたら潰すぞ!!」
秋羅(何を?)
アームド兵器「ぐ・・・」
アームド兵器「ようやく現れたな手前ら」
小春「えぇ、お陰様で」
小春「悪いけど、今の私達はものすごーく虫の居所が悪いの」
小春「だから速攻で蹴りをつけさせてもらうわ」
小春「ハニー、行くわよ」
歌夏(かな)「お、OK。マイダーリン!」
  歌夏の返事を受け取った後、小春はネクタイを締め直し、兵器を見上げる。
アームド兵器「うっ!」
  兵器の中のパイロットはそれに臆したのか、一歩二歩下がる。
小春「一家の大黒柱の力見せてやるわ」
アームド兵器「ちぃぃ・・・」
アームド兵器「図に乗るなぁぁぁぁ!!」
アームド兵器「消えた!?」
秋羅「上だ!」
小春「タキシード・・・」
小春「踵落とし!」
アームド兵器「ぐわっ!」
小春「ハニー! パスッ!」
歌夏(かな)「サーッ!」
歌夏(かな)「ウェディング・・・ミドルソバットォォォ!!!!」
アームド兵器「ぎゃしっ!?」
小春「ふぅ」
小春「ざっとこんなものかしら?」
歌夏(かな)「へへっ」
アームド兵器「手前ら、図に乗るなとあれ程っ!」
アームド兵器「あ、あれ?」

〇黒背景
モヒカン男「弾が出ない。どうして?」
???「そうは問屋がおろさない、というやつ」
モヒカン男「だ、誰だ!?」
冬樹「制御端末のルーターをいじくれば尚のこと」
冬樹「一先ずお前、これでおしまい」
モヒカン男「え!?」

〇商店街
アームド兵器「な、なんだぁ・・・!?」
秋羅「な、なに!? 何が起きているの?」
小春「坊や、今すぐそこを離れて!!」
秋羅「う、うん!」
  兵器は両腕をクロスし、空高く舞い上がった。

〇雲の上
  そして・・・
  3
  2
  1

〇商店街
秋羅「・・・・・・」
小春「ふぅ。一先ずはこれにて終了ってね」
小春「お疲れ様、引き返すわよ」
歌夏(かな)「サーッ!!」
秋羅「ちょ、ちょっと待ってよ!」
秋羅「貴方たちは一体・・・」
小春「私達は何者でもない」
小春「ただの通りすがりの夫婦よ」
秋羅「えっ・・・」
八百屋のおばさん「秋羅くん。大丈夫!?」
八百屋のおばさん「さっきのメカメカしたものは!?」
秋羅「え、えーっと」
秋羅「なんか、知らない内に空高く舞い上がってったよ」
八百屋のおばさん「へ、へぇ」
八百屋のおばさん「あ、そうそう。さっき配達業のあんちゃんから連絡が入ったんだけどね──」

〇城の会議室
  その晩。
秋羅「はい、お待ちどうさま」
歌夏(かな)「うっひょぉぉぉっ、待ってたぜ!!」
歌夏(かな)「秋羅、わざわざありがとな」
秋羅「うん」
秋羅「ところで歌夏姉さん、あの時の商店街の・・・」
歌夏(かな)「それ以上聞いたら潰すぞ」
秋羅(だから何を?)
小春「まぁまぁ歌夏、もういいじゃないの」
小春「実はね、昨日のお偉い様からブライダルフェアのCMのモデルの依頼が舞い込んできて」
小春「で、そのコンセプトテーマが『戦う新郎新婦』だったわけなのよ」
秋羅「成る程、それであんな激しいアクションを・・・」
秋羅「でもそれって、コンサルタントとして成り立つものなの?」
小春「うちはフリーランス事業なのよっ!」
秋羅「そうだったのか!?」
歌夏(かな)「おい秋羅。このキャベツ、芯が通っていて美味しいな」
秋羅「そう? それはよかった」
秋羅「あの撮影の後、料金所で足止めくらっていたトラックがやって来てね」
秋羅「新鮮な内に冷蔵庫にしまっておいたんだ」
歌夏(かな)「へぇ、料金所で・・・そんな事もあるんだな」
冬樹「・・・ふっ」
歌夏(かな)「なんでお前がドヤ顔決めるんだよ?」
冬樹「別に」
秋羅「それじゃあ僕、今の内にお風呂のお湯を溜めてくるよ」
秋羅「姉さん、ピブは要る?」
小春「えぇ、お願い」
歌夏(かな)「なぁ小春姉」
小春「ん?」
歌夏(かな)「今日のモヒカンなんだけどさ、またうちにちょっかいかけないかね?」
小春「なによ。貴方はそんな細かい事を気にする性格ではない筈よ?」
歌夏(かな)「けどさぁ、ああいうタイプは悪運が強いっていうぜ」
小春「大丈夫よ。 いざとなれば本部の力を頼ればいいし」
小春「それに、この街を愛しているのは私達だけではないわ」
歌夏(かな)「えっ?」

〇ビルの裏
モヒカン男「はぁ、はぁ・・・ったく、えらい目に遭ったぜ」
モヒカン男「あのくそ共、次に会ったらただじゃおかねぇ」
モヒカン男「一先ず装備を整えねぇと。この格好ではとても町を歩けねぇ・・・」
モヒカン男「お」
モヒカン男(良い所に来たぜ)
モヒカン男(恨みは無いが、ちと怖い目にあってもらおうか)
モヒカン男「おい、そこのおやじ・・・ちと、話を──」
老人「ん?」
モヒカン男「ぐはっ!」
老人「なんか言ったかのぉ、ちと距離が悪くて聞こえなかったわ」
モヒカン男(なんだこの老人、振り向きざまに俺のどてっ腹を・・・!)
モヒカン男「おいジジィ、いきなり何しやがる!?」
モヒカン男「俺は怪我人だぞ! もう少し丁重に扱えやぁ」
モヒカン男「ぐあっくっ!!」
モヒカン男「杖で器用に殴るな!」
老人「あぁ? ジジィに向かって何たる口ぶりじゃ」
老人「これは話し合いが必要かの」
老人「のぅ、みんな?」
モヒカン男「ひっ!?」
老人「お前さんみたいな半端者には説教せねばならん」
老人「年寄りばそういう質でね。恨みは無いが、悪く思わんといてくれ・・・」
モヒカン男「ちょ、まっ・・・待てったら・・・!!」

〇街の全景
  人は人知れず守られて生きている。
  それはきっと、貴方も・・・。
  終わり。

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