〇神社の石段
松尾のじいちゃん「残り１こや！　はぁー、難儀やで」
英田 乃亜（あいだ のあ）「すごい数ですよね」
松尾のじいちゃん「明日には取り外す思うと、なんや切ないなぁ」
英田 乃亜（あいだ のあ）「一日だけのお祭りですもんね」
英田 乃亜（あいだ のあ）「よいしょっと・・・」
松尾のじいちゃん「英田くん、もうちょい右や」
英田 乃亜（あいだ のあ）「ここですか？」
英田 乃亜（あいだ のあ）「うわっ」
荒木 煌一(あらき こういち)「あっぶな」
英田 乃亜（あいだ のあ）「あ・・・」
松尾のじいちゃん「煌ぼん、ナイスキャッチ」
荒木 煌一(あらき こういち)「脚立、買い替えた方がよさそうやな」
荒木 煌一(あらき こういち)「ノア、怪我してへん？」
英田 乃亜（あいだ のあ）「・・・うん」
松尾のじいちゃん「煌ぼん、いよいよ明日本番やんか」
松尾のじいちゃん「ビデオ回しとくさかいな！」
荒木 煌一(あらき こういち)「ピアノの発表会ちゃうで」
松尾のじいちゃん「明日の大トリは、煌ぼんの狐踊りやろ」
荒木 煌一(あらき こういち)「フェスでもないからな」
荒木 煌一(あらき こういち)「なぁ、ノア──」
松尾のじいちゃん「ん？　どこ行くんや？」
英田 乃亜（あいだ のあ）「えっと、」
英田 乃亜（あいだ のあ）「ちょっとお手洗いに！」

〇和風
　　鳥居のそばでキスをして
　　第９話　お祭り前夜

〇神社の本殿
英田 乃亜（あいだ のあ）「はぁ・・・」
　　あの日・・・宇治に出掛けた日の夜から１ヶ月が経った。
　　煌一は変わらず接してくれるけど、
　　僕は・・・
英田 乃亜（あいだ のあ）「!」
みかん「ああああぁ・・・」
煌一の母「あちゃー・・・」
みかん「これ、明日、使うやつですよね・・・？」
煌一の母「せやなぁ・・・」
みかん「これ、接着剤、で・・・」
みかん「・・・無理か」
煌一の母「せや、おんなじの持ってはるお店があったはずや！」
煌一の母「あの、祇園の・・・」
みかん「うち、借りてきます！」
煌一の母「あんたは巫女舞の確認あるやろ」
英田 乃亜（あいだ のあ）「あの」
英田 乃亜（あいだ のあ）「僕、買ってきましょうか」

〇温泉街
英田 乃亜（あいだ のあ）「ふぅ・・・」
おゆき「ノアさん！」
おゆき「大きい風呂敷、泥棒さん？」
英田 乃亜（あいだ のあ）「盗んでないですよ!?」
英田 乃亜（あいだ のあ）「明日のお祭りのためで・・・」
おゆき「ふふ、ノアさんもすっかり神社の人やねぇ」
おゆき「煌ぼんとは、どう？」
英田 乃亜（あいだ のあ）「どう、って」
英田 乃亜（あいだ のあ）「・・・彼、明日のお祭りで踊るじゃないですか？」
英田 乃亜（あいだ のあ）「練習が忙しいみたいで、最近あまり話してなくて」
おゆき「そうなんや、寂しいなぁ」
英田 乃亜（あいだ のあ）「別に、寂しくは」
　　思わず目が泳いでしまう。
　　・・・おゆきさんなら、何か知っているかも？
英田 乃亜（あいだ のあ）「あの・・・」
おゆき「なんどす？」
英田 乃亜（あいだ のあ）「コウイチって、その」
英田 乃亜（あいだ のあ）「彼女、いるんでしょうか？」
おゆき「へぇ、どうしはったん急に」
英田 乃亜（あいだ のあ）「いやあの、この前見たんです」
おゆき「見たて、彼女さんを？」
英田 乃亜（あいだ のあ）「わからないけど、そう見えたというか」
おゆき「・・・どんな人やったん？」
英田 乃亜（あいだ のあ）「えっと、暗くてよく見えなかったですけど、髪の長い・・・」
おゆき「そうどすか」
英田 乃亜（あいだ のあ）「おゆきさん、知ってます・・・？」
おゆき「うーん、ノアさんにそう見えたんやったら」
おゆき「彼女なんちゃうかなぁ？」
英田 乃亜（あいだ のあ）「えっ」
おゆき「なんちゅう顔してはるの」
英田 乃亜（あいだ のあ）「へっ」
おゆき「ノアさん」
おゆき「その人が誰かより、」
おゆき「そのときノアさんがどう思ったんかが、大事なんとちゃいます？」
英田 乃亜（あいだ のあ）「へ・・・」
おゆき「ふふ。早よ戻った方がええんちゃいますか？」
英田 乃亜（あいだ のあ）「あ・・・」
英田 乃亜（あいだ のあ）「ありがとう！」

〇神社の本殿
　　そのあと、急いで神社に戻って荷物を届けた。
　　明日の準備があるのか、煌一の姿は見えなかった。
　　明日、お祭りが終わったら・・・
　　煌一に聞いてみようと思う。
　　あのとき一緒にいた人って？
　　そして、あの質問の意味を──