ハレの惡左府

山本律磨

急転直下(脚本)

ハレの惡左府

山本律磨

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ハレの惡左府
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〇古い洋館
  親王顕仁の舘

〇養護施設の庭
鎮西八郎「いよっ!日本一!」
平右馬助「見事見事!わっはっは!」
  ←源氏傍流 鎮西八郎
  平氏傍流 平馬右助→
左府(俗物ども。目が(女▽女)になっているぞ)
左府(斯様な連中と一刻でも関わらねばならぬ 我が勤めを呪いたい)
鎮西八郎「え?あの踊り子、全員男なの?」
平右馬助「全く左府殿は凄え宴を催すもんだな~」
左府(帰りたい)
左京大夫「流石はハレとケを自在に操る 左大臣様の宴。 よい冥土の土産ができました」
左府「お褒めに預かり」
顕仁皇子「礼には及ばん」
顕仁皇子「左京大夫は近頃異様に涙脆くなっている。 それだけのことだ」
顕仁皇子「昨日は雨に濡れた野良犬を見ただけで、 一刻半泣き続けていた」
左京大夫「もう、切なくて切なくて」
左府(疾く(速攻で)帰りたい)
顕仁皇子「左府よ。 そろそろ政の話に移りたいのだろう。 戯れの女装どもを下がらせろ」
左府「戯れ・・・」
左府「戯れを下がらせるなら、私にも 下がらせて頂きたい者どもがおります」
「・・・ああ?」
左府「・・・」
鎮西八郎「しかしあれだ、左府殿も大変ですなあ。 白面武者や検非違使に睨まれておるとか」
平右馬助「帝調伏の噂、嘘であれ真であれ 流石は比類なき惡左府どの。 いやいや、剛毅剛毅!」
左府「者ではかったか」
平右馬助「は?」
左府「犬を引っ立てて下され」
鎮西八郎「無礼な!いかな左大臣殿とて・・・」
左府「侍(さぶろう)程度が 私と同等の口をきくな!」
平右馬助「なんだと!」
顕仁皇子「ええい!わずらわしい! 源平武者は 貴族の機嫌すら伺えぬか!」
顕仁皇子「佞言ひとつ吐けぬなら下がっておれ」
平右馬助「チッ・・・では御免。ゆくぞ鎮西八郎殿」
左府「佞言とは手厳しい。 私も俗に見られたものだ」
顕仁皇子「ハレの惡左府。世の俗の権化ではないか」
左府「ならば貴方様はいかほどの聖(ひじり)か」
左府「源平のはみ出し者どもを館に招くなど 隠遁の身の侘しさに苦しんでおるよう お見受けしますが」
左府「私などは幼少より有象無象が擦り寄り、 寂しさとは無縁の人生を送って参りました」

〇幻想

〇養護施設の庭
顕仁皇子「早う本題に入れ! 即断即決が汝の是とするところであろう!」
左府「平右馬頭、源鎮西八郎 両名と今すぐ縁を切られよ」
顕仁皇子「・・・」
左府「謀反の噂が立っております」
顕仁皇子「武家の諍いなど預かり知らぬ」
左府「その汚らわしい諍いに 王位継承が巻き込まれようとしているのだ」
左府「知らぬとは言わせぬぞ、左京大夫!」
左京大夫「ひいっ!」
顕仁皇子「まことか?左京大夫」
左京大夫「お許し下され。みどもはただ 新たなる世の脅威より殿下を守ろうと」
左府「お前達に帝の座を狙う気はなくても、 無能者の神輿に担がれる事もある」
顕仁皇子「『お前達』とは我も入っておるのか」
左府「・・・これは、口が過ぎました」
左府「即断即決を是としておりますゆえ」
顕仁皇子「・・・ふん」
左府「即断ついでに今ひとつ具申仕る」
顕仁皇子「これは五部大乗経・・・」
左府「意味はお分かりですな。頭を丸められよ」
左京大夫「な、なんと! 殿下は何も悪い事などしておらぬ!」
左府「沙門となり仏道に帰依されよ。 さすれば世の煩わしさより 解き放たれましょう」
顕仁皇子「帰依されよ・・・」
顕仁皇子「消え去れということか?」
左府「まことに陰気な御仁だ。 貴方が帝となれば都が、 いや日ノ本全土が陰の気に包まれる」
左京大夫「口が過ぎるぞ、藤原頼長!」
顕仁皇子「・・・」
顕仁皇子「・・・いや。汝の言う通りだ、左府」
左京大夫「・・・殿下」
顕仁皇子「分かっておる。我は王者の器ではない。 汝に言われずともそのつもりであった」
左府「あきらめるとは明らかとなる意。 賢明な御判断です」
顕仁皇子「剃髪し崇徳と名乗る」
顕仁皇子「荒武者どもとも縁を切る それでよいであろう。 うぬも二度と我の前に現れるな」
左府「畏まりました」
  『申し上げます!申し上げます!』
近衛兵「申し上げまする!」
左京大夫「なにごとか?」
近衛兵「門前にて左府様の舎人童が・・・」
  『どけよ!急いでんだ!どけ!』
鬼丸「左府様!いるか!左府様!」
左府「なんだお前はいつもいつも・・・」
左府「それともこの私の記憶が 繰り返されているのか?」
鬼丸「冗談言ってる場合じゃねえ! やばいんだよ、お館が!」
左府「館?我が東三条殿がどうした?」
鬼丸「侍がどんどん攻め込んで来てんだよ」
左府「どこの手の者か?関白か?右府か? それとも女院の近衛か?」
鬼丸「検非違使・・・」
左府「チッ・・・義朝め 己が家来も御しきれぬとは」
鬼丸「その義朝だよ!源義朝が攻めて来たんだ!」
左府「な、何だと!?」

〇後宮の廊下
公春「検非違使!ここを左大臣頼長卿が東三条殿と知っての狼藉か!」
  『無論である』
公春「よ、義朝殿・・・何故?」
義朝「顕仁親王殿下と左大臣藤原頼長に、 謀反の疑いこれあり」
義朝「速やかに東三条殿並びに 朱器台盤を押収せよとの命である」
公春「命とは関白殿の命か?女院様の命か?」
義朝「否」

〇豪華な王宮
  『次の帝、後白河帝の勅である』

〇養護施設の庭
左府「馬鹿な!」
顕仁皇子「後白河・・・」
顕仁皇子「すでに諡を定めているとは 雅仁め、早々に院の政を敷くつもりか」
左府「クッ・・・」
顕仁皇子「どうやら摂関の世は来ぬようだな」
左府「何が起こっているというのだ・・・?」
顕仁皇子「ほう、都随一の天才が 斯様なことも分からぬか?」
顕仁皇子「それとも認めたくないだけか?」
左府「・・・」
顕仁皇子「お前は雅仁一派に陥れられたのだ」
左府「この左府が謀られただと?」
左府「この私を抜きにした新時代だと?」
左府「ありえぬ!断じてありえぬ!」
顕仁皇子「謀反か・・・」
  『舞え舞え蝸牛』
  『舞え舞え蝸牛』
顕仁皇子「そんなに我と戦がしたいか、雅仁!」
  CONTINUED

次のエピソード:皇戦(すめらいくさ)

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