ハレの惡左府

山本律磨

ⅩⅣ(脚本)

ハレの惡左府

山本律磨

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〇豪華な王宮
  平安宮・清涼殿
美福門院「我が帝はこれより殯の宮に入られる」
美福門院「文武百官勤めを止め喪に服せ」
「ははーっ」
美福門院「関白。左大臣の姿が見えぬ」
美福門院「よもやこの後に及んでなお、 私への当てつけではあるまいの?」
関白実通「そ、そのような事は決して・・・」
関白実通「常より非人と交わっておりますれば 蝕穢の為、参内を停止させました」
美福門院「ものは言いようよな」
美福門院「いかに氏長者といえど その権勢、永劫に続くと努々思うでないぞ」
関白実通「ははっ!」
美福門院「藤原摂関の世は二度と舞い戻らぬ」
美福門院「そうですよね?『我が子ら』よ」
雅仁皇子「はい!お義母さま!」
雅仁皇子「王家は私たちがお守り致します!」
顕仁皇子「・・・ご安心を」
美福門院「頼みますよ。雅仁皇子」
雅仁皇子「畏まりました」
顕仁皇子「・・・」

〇古びた神社
左府「・・・」
鬼丸「左府さん」
鬼丸「本当にお城に行かなくていいのかよ?」
左府「参内ならもう間に合わぬ。 それに、あれは城ではない」
鬼丸「ありがとうな。トンボもきっと喜んでるよ」
左府「勘違いするな。私が女院の命に背いたは 敵と味方をはっきりさせるためだ」
鬼丸「敵と味方・・・?」
左府「鬼丸。武の修練をしておけ。 己が身を守れるくらいはな」
鬼丸「どういうこった?」
左府「これよりは戦さぞ」
鬼丸「いくさ・・・」
武者丸「・・・」

〇屋敷の一室
左府「・・・ふむ」
左府「顕仁の派閥は入っておらぬな」
信西「はい」
信西「しかしながら身共まで王者義定に加わるは些かあからさま過ぎるかと」
左府「構わぬ。 そなたは雅仁皇子の乳父ではなく、 あくまでも学者として参画するのだ」
左府「次の帝は既に確定している。 後は席の奪い合いとなろう」
左府「頭の血の巡りが悪い連中の多い中、 大学生(だいがくしょう) 信西殿がいてくれれば私も心強い」
信西「恐悦至極です」
左府「古より皆死あり、民は信なくば立たず」
左府「関白、藤原実道」
左府「凡庸なる権威を追い落とし、 新たな世を作ろうぞ」
信西「その凡庸、いえ関白様ですが・・・」
左府「・・・?」

〇屋敷の一室
左府「この私が参内停止だと? なぜ早く言わぬ!」
左府「よもや信西殿ほどの者が、 我が顔色を伺っておったか?」
信西「め、滅相もございません」
信西「王者議定は身共が全力で遅らせ、 一両日中にも参内の許可を」
左府「おのれ関白。悪あがきを・・・」
左府「まあいい。 こちらには雅仁様の鶴の一声がある」
信西「つきましては、左府様にひとつ やって頂きたいことがございます」
左府「是も否もない。申せ」
信西「顕仁殿下を足止めして下さい」
左府「あの引籠りに帝位を継ぐ気などないぞ。 議定においても蚊帳の外ではないか」
信西「それがちと厄介な仕儀に相成りまして」
左府「厄介だと?」
信西「ご両人。入られませ」
義朝「失礼致す」
清盛「よう、左府」
左府「どうした二人揃って」
清盛「俺の『身内』が迷惑をかける」
義朝「私の『縁者』が面倒をおかけ致す」
左府「・・・」
左府「チッ、平氏と源氏も分裂しおったか」
左府「当主として、 しかと手綱をひいておらんからだ!」
「申し訳ない」
左府「源平の傍流どもが 顕仁殿下奉戴を目論んでいるという訳か」
信西「武家の分裂は厄介にございます。 下手を打てば殺し合いが始まります」
左府「ああ、小競り合いではすまなくなるぞ」
信西「それゆえの『足止め』」
信西「顕仁一派の暴走をくい止めるは、 左府様の剛腕をおいて他にありませぬ。 どうかお力を・・・」
清盛「頼む、比類なき惡左府よ」
義朝「この通りにござる」
左府「・・・」
左府(迂闊者どもめ・・・)
  CONTINUED

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