天使の悪戯~ワンルームに響く歌~

貴志砂印

第五話(脚本)

天使の悪戯~ワンルームに響く歌~

貴志砂印

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〇SHIBUYA109
  人間たちのキラキラした夢に引き寄せられ、遠くで見るよりも、近くで感じることを選んだ。
  その中で、路上で音楽を奏でる二人組に出会う
  力強い歌声と魂を揺さぶるような歌い方が特徴的で、言葉ひとつひとつに感情が込められて、まるで絵画の様な声の「ハルキ」さん
  透き通った声質に、なぜか懐かしさを感じさせる歌声が特徴的で、ポップロックやバラードなども素敵な「ヨミ」さん
  この二人がギターを奏でながら歌う。
  わたしは、あっという間に魅了されたんだ。
  いつの日か、周囲の人間たちのように「よかった」と感想を伝えたいと思うだけの日々。
  それが・・・叶ってしまった。
  いや、叶えてもらった。
  ・・・元・天使と言うヨミさんが、わたしの気持ちを察して叶えてくれたのだ
  そして今、ヨミさんに付き合って買い物をしている

〇センター街
ヨミ「「ハルキ」の歌い方がいい?」
アンジュ「はい! なんだか、心を揺さぶられるみたいな──」
ヨミ「――ベルティングボイス」
ヨミ「主にミュージカルやロックなどで使われる、高音域で力強く、感情を込めて声を出すための歌唱テクニック──」
アンジュ「そ、それって、技術的なものなんですか?」
ヨミ「理屈ではね」
ヨミ「声の出し方はトレーニングでどうにでもなるけど・・・実際の定義は人それぞれ」
ヨミ「強い裏声や、喉を締めたり張り上げた地声などをベルティングと呼ぶ場合もあるし、地声のような高音発声を言う場合もある」
ヨミ「理屈だけはいっぱいあるけど、本質的なものは天性のモノ・・・ギフトだと、あーしは思ってる」
アンジュ「練習だけじゃ、あんなに心に来ませんもんね!」
ヨミ「それーなー」
アンジュ「もしかして「ヨミさん」も・・・ 「ハルキさん」の声に──」
ヨミ「まぁ、そうなるよね」
アンジュ「うふふ 同じですね」
ヨミ「なかーま! なかーまっ!」
ヨミ「そして、お店に到着っ!」

〇レンタルショップの店内
アンジュ「わぁ」
ヨミ「さすがに、何のお店ですかぁ? みたいなリアクションはないよね?」
アンジュ「でも、初めて入りました! レコードショップ!」
ヨミ「・・・レコードって・・・」
アンジュ「元はrecordare(レコルダーレ)を語源としていて、「思い出す」「記憶する」の意味ですから」
アンジュ「レコードで合ってますよ」
ヨミ「おっ。 博学っ!」
アンジュ「先程の「ベルティングボイス」のお返しです」
ヨミ「えぇ・・・ でも、あれは、ハルキの知識」
アンジュ「そうなんですね」
ヨミ「ハルキは凄いよね」
アンジュ「ですね!」
ハルキ「俺がどうかしたか?」
ヨミ「うわぁぁ!」
ハルキ「いや・・・驚きすぎだろ」
ハルキ「幽霊でも見たくらいのリアクションだぞ」
ヨミ「いきなり出てくるから」
ハルキ「『出てくる』って言ってる時点で、幽霊扱いしてるだろ」
ライス(大森)「幽霊扱いは面白すぎますな〜」
サチ「ってかヨミちゃんだー」
ヨミ「あ、 サチちゃんと、ライスさんも!」
サチ「私たちも偶然、ハルキくんに会ってね。 ちょっと一緒に歩いてたんだ」
ライス(大森)「まさか その流れでヨミ様に会えるとは これは、これは・・・ 運命の神の思し召し!」
ハルキ「ライス・・・ 落ち着けよ・・・ そして、デヘデヘするな」
ライス(大森)「デヘデヘはしてませんぞ! これは 愛のあるデレデレでございます!」
ハルキ「知らんがな」
ヨミ「いつも ありがとね ライスさん!」
アンジュ「あの・・・ なんで「ライス」なんですか?」
ヨミ「大森さんは、いつも定食のライスを「大盛」にするから・・・ いろいろあって愛称がライスになったの」
アンジュ「ふふふ 変なの・・・」
ヨミ「でしょ」
ハルキ「・・・ヨミ? なんか最近、独り言増えたよな?」
ヨミ「え? そうかな?」
アンジュ「あ・・・ わたしが話しかけちゃったせいで──」
ヨミ「いいの」
ヨミ「あーしには、キミたちには見えない 新しい友達ができたからね ついつい話しかけちゃうんだよ」
ハルキ「ほぉ・・・」
ハルキ「それなら仕方ないな」
ヨミ「でしょ」
  ヨミさんの突拍子もない言葉を疑うこともせずに受け入れるハルキさん
  これが信頼なのか・・・
  それとも、ヨミさんが元天使だってことも知っているのだろうか?
  そんな考えが一瞬過ったが、新たな人間との交流を間近で見られている現状に、わたしは大きな満足感を得られていた。
  それに、ヨミさんとショッピングもできたのが・・・なんか、とっても嬉しかった。
  それから、しばらく話して、ハルキさんたちと手を振ってお別れした。
  わたしのことは、みんなには見えてないけど、わたしはずっと手を振っていた。
  その姿をヨミさんは笑ってたけど、わたしは手を振ることも楽しくて仕方なかった。
  
  人間の生活――楽しいな
  
  つづく

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