ゲーム三銃士

Watoto/3134

8章 闇に消えた家族(脚本)

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〇森の中のオフィス(看板無し)
  某日の夜、事務所にて──

〇明るいリビング
海世 永和「・・・暇だな」
陸尾 航「・・・だねぇ」
  呆れ返るほど平和な日々が続いていた、
  そして今日も平和な日として終わる・・・
  ──はずだった
  『ピロロロロ・・・』
  航の携帯電話が鳴る──
陸尾 航「ん・・・? 電話か・・・」
陸尾 航「はい!コチラ陸尾・・・」
陸尾 航「・・・何だって!?」
  電話口に驚愕の声をあげる航──
陸尾 航「・・・あぁ、分かった! すぐに向かう!」
海世 永和「・・・どうした?」
  驚いた様子を見て、
  会話の内容を聞いてみると──
陸尾 航「どうやら、花奏の家族が居る施設が 分かったらしい!」
海世 永和「なっ・・・!?」
  ──なんと、『宮下花奏の家族が居る
  と思われる施設の所在が分かった』
  との連絡が入ったのである。
陸尾 航「永和は快飛と花奏を呼んでおいてくれ、 俺は車を出してくる!」
海世 永和「あ、あぁ・・・」

〇大企業のオフィスビル
  その後、平和保護局にて──

〇諜報機関
  平和保護局の監視室に菅田隆、そして
  四人の姿があった──
菅田 隆「・・・で、アンタから個人的に 頼まれていたヤツだが、 大体狙いが付いた──」
菅田 隆「──場所としてはあんまり遠くはないが、 四方が山に囲まれている・・・ 地図上だとココだな・・・」
陸尾 航「・・・この地形に見覚えはあるか?」
  菅田が指した場所に見覚えが無いか、
  花奏に聞くと──
宮下 花奏「・・・はい、 少しだけですが見覚えがあります」
  記憶には無いが、おそらく見たことがある
  ──という反応だった
菅田 隆「あと、そこのお嬢ちゃんが追われている身 なら、向こうの警戒心も高いはずだ・・・ あんたらの強さは分かっちゃ居るが・・・」
菅田 隆「・・・行くってんなら無理はすんなよ」
陸尾 航「・・・あぁ、分かった ・・・ありがとう!」
  菅田の忠告に軽く答え、監視室を去る──

〇高層ビルのエントランス
陸尾 航「・・・にしても、どうやって行くかだな」
  監視室を出た後、ロビーにて
  頭を抱える3人の姿があった──
海世 永和「・・・それに、相手の状況が分からないとなれば、迂闊に近づく事も出来ない・・・ ・・・どうしたものか」
空乃 快飛「何かしらの『策』を練らないと いけませんね・・・」
  そんな手詰まりに近しい状態の3人に、
  近づく人影が──
???「ん? どうしたの?3人とも?」
陸尾 航「その声は・・・」
免田 叶江「どうしたの? 何か困ったことがあったら聞くよ?」
  陸尾航らの先輩にして、
  空乃快飛の科学者仲間である、
  武器研究科所属の免田叶江であった──
陸尾 航「あっ、叶江さん・・・ 実は・・・」

〇高層ビルのエントランス
陸尾 航「・・・ということで、 ほとんど手詰まり状態なんですよ・・・」
免田 叶江「なるほど〜・・・」
  航の話に考え込む叶江、
  すると突如、
  何かを思い出したかのように話し出した。
免田 叶江「あっ! そういえば私の発明品の中に、 周りから視認されにくくなる 『特殊光学迷彩バッジ』 ってのがあってね・・・」
海世 永和「『特殊光学迷彩バッジ』・・・?」
  あまりに捻りのない直接的な単語群に、
  思わずひょうきんな声を出してしまう──
免田 叶江「うん! 身につけて動く事によって、 バッジ内部にある特殊な粉末状の薬品が 放出されて──」
免田 叶江「──その薬品が衣服等に纏わりついて、 薬品が落ちるまでのしばらくの間、 周りから見えにくくなるって代物なの!」
空乃 快飛「・・・なるほど、 それって人体に影響とかは・・・?」
免田 叶江「無いよ? そもそも粉末状の薬品の主成分が・・・」
陸尾 航「その話はまた後で聞きますから・・・ とりあえず今はその発明品を、 譲っていただけないでしょうか・・・?」
  長くなりそうな話を強引に遮り、
  話を戻す──
免田 叶江「うん!全然譲るよ! ・・・あっ、使う時は絶対に 保護メガネを掛けるようにね!」
陸尾 航「ありがとうございます!」
  かくして、叶江から
  『特殊光学迷彩バッジ』を譲り受け、
  帰路につくのであった──

〇走行する車内
  帰宅途中──
  車内にて、作戦会議をする3人・・・
陸尾 航「入り方は決まったが・・・ どの時間帯に行くんだ? あと、ルートも決まってないし・・・」
海世 永和「深夜帯だろうな・・・ 四方が山に囲まれているなら、 暗闇の中で動いたほうが良い・・・」
陸尾 航「・・・今夜は夜更かしコースかぁ・・・」
海世 永和「ルートに関しては・・・ まぁ、山を越えるしかないな・・・」
空乃 快飛「うぅ・・・ 夜の山かぁ・・・ やだなぁ・・・」
  夜の街を走る車──
  車内にいる3人は、どこか
  不安を感じている様子だった・・・

〇黒
  翌日の夜──

〇けもの道
  時刻は午後9時を指す頃、
  山中に4人の姿があった──
陸尾 航「はぁはぁ・・・ 今どれぐらいだ・・・?」
空乃 快飛「・・・大体『8割ぐらい』 ・・・って感じですね・・・」
陸尾 航「そうか・・・ なぁ、花奏・・・ 本当についてきて良かったのか?」
宮下 花奏「はい・・・! それに、私が居なければ私の家族も 分からないですし・・・」
  山を登りながらも話し合う4人──
  そこに、忍び寄る怪しい影があった・・・
陸尾 航「・・・見回りか!? 皆、一旦静かに・・・!」
警備員「・・・何か話し声がした気がするが、 ・・・気のせいか・・・?」
  ──ライトを持った警備員が、
  脇道から現れた。
警備員「はぁ・・・ こんな山中に人が来るわけないのに・・・ トップも神経質な人だよ、ホントに・・・」
  特殊光学迷彩バッジの影響か、
  警備員はコチラに気付かずに、
  上層部への愚痴をこぼしながら、
  警備員は去っていった・・・
陸尾 航「マジか・・・ こんな山中にも警備員が居るとは・・・」
空乃 快飛「コレは警戒していかないと ダメそうですね・・・」
陸尾 航「うげー・・・」
  警備の厳重さに驚きながらも、
  4人は山の中を進んで行った・・・

〇黒背景
  山の中をしばらく進んだ後──
海世 永和「な、なんだこれ・・・」
  彼らの前に
  『信じられない光景』が広がる──

〇巨大な城門
  ・・・山の中、彼らの目の前に、突如
  大きな門が現れたのだ──
海世 永和「見張りは・・・居ないみたいだな・・・?」
空乃 快飛「・・・ですね・・・」
  周囲に人の気配はなく、
  代わりに門の奥から様々な音が聞こえる。
  生活音とでも言うのだろうか、
  ──まるで市街地のような音が聞こえる。
海世 永和「・・・よし、行くか・・・!」
空乃 快飛「・・・はい!」
  音の正体が気になりつつも、
  4人は門の中へと入っていった・・・

〇城門沿い
  大きな門を通り抜けるとそこには──
陸尾 航「なっ・・・!」

〇街中の道路
  ごく普通の市街地が眼前に広がる──
陸尾 航「な、なんでこんな山中に・・・ 市街地が・・・?」
海世 永和「まさか・・・ この中で街を作っているのか・・・!?」
宮下 花奏「皆さん・・・ コチラに来てください・・・!」
陸尾 航「あ、あぁ・・・」
  突然の市街地に少し驚きながらも、
  花奏の手招きに応え、ついて行く・・・

〇宿舎
  花奏について行くと、
  先に大きな建物が見える──
海世 永和「・・・あそこに花奏の家族が・・・?」
宮下 花奏「はい・・・!」
陸尾 航「・・・さて、どう潜入したら良いか・・・」
  建物を前に
  潜入する方法について頭を抱える航・・・
  それもそのはず、肝心の迷彩バッジは
  雨によって効果を失っていた・・・
陸尾 航「うーん・・・何かあるか・・・? 潜入する方法・・・?」
空乃 快飛「あの・・・ 一つ良いですか・・・?」
  快飛が恐る恐る聞く──
陸尾 航「ん・・・? 何だ・・・?」
空乃 快飛「実は、今発明品の『グラップリング』を 持ってるんです・・・ なので、コレを使って 屋上から入れないかな、と・・・」
陸尾 航「あぁー! ・・・確かに行けるかもしれない!」
  快飛の提案を飲み、
  実行に移そうとするが──
海世 永和「番犬が居るが・・・ どう近づくんだ?」
  建物の前に、
  大人が一人、余裕で乗れそうなサイズの
  凶暴そうな大型犬が居たのだ──
陸尾 航「・・・たぶん襲われたら ひとたまりもないよな、アレ・・・」
宮下 花奏「・・・」
  すると、
  花奏が静かに番犬の方へと向かう──
陸尾 航「なっ・・・! 危ねぇぞ!花奏!」
  航の制止を無視し、更に近づく花奏──
  すると・・・
宮下 花奏「・・・『コロ』!おいで!」
番犬「・・・! ワン!ワン!」
  なんと、花奏の呼びかけに
  番犬が嬉しそうに跳ね回る──!
陸尾 航「あー・・・ そう言う感じだったか・・・」
宮下 花奏「コロ、『待て』!」
番犬「ハッ、ハッ、ハッ・・・」
宮下 花奏「・・・さぁ、行きましょう!」
海世 永和「ま、まぁ・・・何はともかく、 コレで中に入れそうだな・・・」
  困惑しながらも、
  4人は建物の中へと入っていった──

〇古い施設の廊下
  建物の中へと入った4人、
  中身は寮のようだ──
宮下 花奏「コチラです、皆さん!」
海世 永和「警備は・・・居ないか・・・」
  花奏の案内について行くが、
  警備員は1人も見当たらない──
宮下 花奏「・・・おそらく今の時間帯は、 集会があるはずですので、 その影響かと・・・」
空乃 快飛「・・・なるほど」
  花奏の話を聞きながらついて行くと、
  とある部屋の前に着く──
宮下 花奏「・・・ココです!」
海世 永和「・・・そうか」
  『コンコンコン・・・』
  永和がドアをノックする──
???「はーい・・・?」
海世 永和「・・・失礼します」

〇宿舎の部屋
  部屋の中に入ると、
  老夫婦と活発そうな女性が居た──
宮下 隆之介「なっ・・・花奏・・・!?」
宮下 花奏「・・・ただいま帰りました!」
宮下 隆之介「・・・あぁ、おかえり! ・・・花奏!」
  軽い帰宅の言葉を交わし、
  話が切り替わる──
宮下 隆之介「・・・それで、そこの御三方は・・・?」
宮下 花奏「ココを出た後に、 私が路地裏で倒れていたのを、 助けてくれた人たちです!」
宮下 隆之介「なんと・・・それは・・・ ありがとうございます・・・!」
  3人に対して深々と頭を下げる
  おじいさん──
海世 永和「あっ、いえ・・・ 花奏を助けたのは私ではなくて・・・ コッチの航でして・・・」
陸尾 航「うわッ!? 急に背中押すなっての・・・!」
宮下 隆之介「花奏を助けて頂き、ありがとうございます ・・・申し遅れました、私 宮下隆之介(りゅうのすけ)と申します」
宮下 隆之介「・・・こちらが 妻の宮下倫子(りんこ)・・・ そして娘の宮下凛(りん)です・・・!」
宮下 倫子「ご紹介にあずかりました、 倫子と申します・・・ 花奏を拾って頂きありがとうございます」
宮下 凛「始めまして、凛と言います! かなっちゃんを助けてくれて、 ありがとうございます!」
陸尾 航「あ、陸尾航と申します・・・ あの・・・そろそろ本題に・・・」
宮下 隆之介「おっと・・・そうでしたね・・・」
  自己紹介も程々に、本題へと入る──
宮下 隆之介「花奏から聞いていると思われますが、 この施設・・・ いや、街では日々山地の開拓が 進められています──」
宮下 隆之介「コレだけ聞くと良いことに思えますが、 実際は不当な監禁・・・ そして労働を強制されています・・・」
宮下 隆之介「航さん・・・ いえ、御三方にお願いがあります・・・ どうかこの街から・・・ 皆を助けていただけませんか?」
  隆之介から直々に依頼を受ける、
  勿論、断る気は更々無い──
陸尾 航「えぇ、分かりました・・・! やって見せましょう!」
  依頼を快諾し、話を続ける──
陸尾 航「・・・あと、依頼を受ける上で一つ ・・・花奏を頼んでも良いですか?」
宮下 隆之介「・・・はい、分かりました」
宮下 花奏「・・・」
陸尾 航「・・・じゃあ、俺らは行って来るからな ・・・絶対に戻って来るから、待ってろよ」
宮下 花奏「・・・はい!」
  花奏を託し、部屋を出る──
陸尾 航「それでは・・・失礼しました」

〇古い施設の廊下
陸尾 航「・・・さあ、行くぞ! ・・・絶対に、こっからは暴れまくる!」
海世 永和「ふっ・・・ やっぱりこうなるのか・・・」
空乃 快飛「さぁ・・・行きましょう!」
  廊下に出た3人──
  その姿に躊躇いなど無く、
  いつものように元気なオーラに溢れていた

〇街中の道路
  街中では先程と違い、
  沢山の警備員が歩き回っていた──
  ・・・が、
  彼らはいつもの如く暴れまわっていた──
陸尾 航「退けェッ! 退かなきゃ張り倒すぞ!」
海世 永和「テメェらのトップはどこだ・・・! 言わなきゃはっ倒す・・・!」
警備員「なッ・・・!? さてはお前ら・・・ 平和保護局のッ・・・」
警備員「うッ・・・」
空乃 快飛「・・・どうやら、 身元は割れているみたいですね・・・ ・・・援軍を呼ばれないように 気をつけましょうか・・・」
海世 永和「あぁ・・・そうだな・・・ ・・・にしても、どこに行くか・・・」
  組織のトップはどこに居るのか、
  3人は頭を抱えていた──
陸尾 航「・・・ とりあえず、 あの一番高いビルを目指そうか・・・」
海世 永和「・・・そうだな、 高い所から見れば何か分かるかもな・・・」
陸尾 航「・・・よし、早速行くぞ!」
  航の提案により、一番高いビルへと
  3人は向かって行った──

〇高層ビル
  街の中で一番高いビルへと着く──
  果たして、この中に組織のトップは
  居るのか──
陸尾 航「よし・・・ 行くぞ!」
???「・・・久しぶりだなぁ・・・! 野郎ども・・・!!」
陸尾 航「げっ・・・!? この声は・・・!?」
  ビルへ入ろうとすると、
  聞き覚えのある声が聞こえる──
  その声の正体は──
亀田 治郎「忘れた・・・とは言わせねぇぞ・・・! あのガキは何処だ・・・! 言わねぇなら──!!」
亀田 治郎「ぶっ飛ばす!」
陸尾 航「・・・参ったな」
  宮下花奏を巡り、戦いを繰り広げた
  因縁の相手である、亀田治郎が居た──
亀田 治郎「さぁ、言いな! あのガキを何処へやったのか・・・!」
陸尾 航「悪いがアンタに言う義理はねぇ・・・! それでも来るってんなら・・・ また痛い目見せてやるぞ!」
陸尾 航「・・・永和、お前は隙をついて中に入れ、 快飛、花奏たちの方を頼む・・・!」
  亀田治郎が目を離している隙に、
  小声で永和たちに指示を下す──
海世 永和「あぁ・・・!」
空乃 快飛「はいッ・・・!」
  指示を聞いた快飛は、
  颯爽と走って行った──
亀田 治郎「はッ・・・! 作戦は立ったのか・・・? あのガキの保護者さんよぉ・・・!」
陸尾 航「・・・さあな、だが・・・ テメェの相手は・・・」
  話しながら、亀田の方に近づく航・・・
  すると──
亀田 治郎「ぐッ・・・」
陸尾 航「今だ、永和!」
海世 永和「あぁ、ありがとう!航!」
  突如、ボディブローを食らわせ、
  空いた隙に永和をビルへと入れる──
陸尾 航「・・・テメェの相手は、俺1人で十分だ!」
亀田 治郎「ふん・・・ アンタらが何を企んでるか知らんが、 ココに来た事を後悔するんだな・・・!」
陸尾 航「・・・後悔すんのは・・・! ・・・テメェの方だ!!」

〇おしゃれな受付
  その頃、ビルの中では
  永和が警備員たちに追われて居た──
警備員「居たぞ!アイツだ!」
海世 永和「奥義『漣ノ海峡』──」
警備員たち「グアァッ・・・!?」
海世 永和「ッたく・・・ 早めに上の方に行かないとな・・・」
  急ぎながらも
  エレベーターの方へ向かうが──
海世 永和「なっ・・・!? エレベーターの電源を 切られてやがる・・・!?」
  何者かによって電源を切られていた──
海世 永和「・・・しょうがねぇ、 非常階段を駆け上がるしか無いか・・・」
  永和はすぐに踵を返し、
  非常階段の方へと向かう──

〇マンションの共用階段
警備員「居たぞ! 待ち伏せたのが功を奏したぜ!」
  だが案の定、階段にも待ち伏せる
  警備員たち──
海世 永和「・・・やっぱり、居るよなぁ・・・ ・・・しょうがない・・・か・・・」
海世 永和「奥義『尼水』──」
警備員たち「ぎゃあああッ・・・!」
海世 永和「・・・これは先が長いな・・・」
  長期戦を予測し、なるべく無駄な体力を
  使わないようと決めた永和であった──

〇宿舎
  その一方、快飛は宮下家の元へ戻り、
  花奏を狙う警備員たちと戦っていた──
空乃 快飛「・・・かなり苦しいな・・・」
警備員「今だ! 全員、畳み掛けろ!」
空乃 快飛(・・・もう、ダメかな・・・)
  だが、戦況は苦しく、快飛が
  敗北を受け入れようとしたその瞬間──
番犬「グルルルルゥ・・・ バウッ・・・!」
警備員「うわぁッ! ・・・なッ・・・番犬が・・・!」
空乃 快飛「なっ・・・! ・・・まさか時間稼ぎを・・・!?」
  番犬である『コロ』が、
  警備員たちに立ち向かったのだ──!
空乃 快飛「・・・よし、今のうちに・・・」
空乃 快飛「風向き・・・ 方向・・・ ・・・良し!」
空乃 快飛「・・・『コロ』! コッチに来い!」
番犬「ワンッ!」
  『コロ』が快飛の胸に飛び込み、
  抱えながら、銃弾を天空に放つ──
空乃 快飛「奥義『Thunder Rain』──」
  快飛が天空に放った銃弾に向けて電気を 放つと、無数の雷が警備員たちの足元へと
  落ちる──!
警備員たち「がぁッ・・・!?」
空乃 快飛「・・・まぁ、間接的に当てたので 命に別条はないでしょう・・・」
警備員「ま・・・待て・・・ お前らの目的h・・・ あだッ・・・!──」
  倒れながら、手で這いずって快飛の足を
  掴もうとするが、空から落ちて来た
  超軽量弾が警備員の頭に落ちる──
空乃 快飛「ま・・・銃弾も然り、雷も然り・・・」
  そう言いながら、
  ゴム製の長靴を履いていた快飛は、
  番犬を抱えて、建物へと入っていった──

〇高層ビル
  一方、航と亀田との戦いは
  その苛烈さを増していた──
陸尾 航「だアッ・・・はあッ・・・ なかなかやるじゃねぇか・・・!」
亀田 治郎「はッ・・・お前もな・・・!」
陸尾 航「だがな・・・ 俺はこんな所で──」
陸尾 航「──負けられないんだよぉッ!」
  航の強烈なパンチが、
  亀田の右の脇腹に入る──
亀田 治郎「がぁッ・・・!」
亀田 治郎「・・・まだまだァッ!」
  亀田も負けじとばかりに、
  脇腹に来た腕を掴み、
  肩を使って遠くへ投げる──!
陸尾 航「かはッ・・・!? ・・・げほッ・・・!」
陸尾 航「・・・こんなもんか・・・? ・・・まだまだやってやるぞ!」
亀田 治郎「くッ・・・ こうなったら・・・!」
  すると、亀田は懐から
  『警棒』を取り出す──
亀田 治郎「男どうしの殴り合いに、 持ち込みたく無かったが・・・ ・・・背に腹は代えられねぇ・・・ ・・・覚悟しな!」
陸尾 航「・・・参ったなぁ・・・ ・・・しょうがない・・・か・・・」
  すると、航も同じように
  懐から警棒を取り出す──
陸尾 航「さ・・・ コレ持ってんだから、 遠慮せずにかかってきな・・・!」
亀田 治郎「へッ・・・! じゃあ、コッチから行かせて貰うぜ──!」
陸尾 航「・・・どうした? こんなもんか・・・!?」
  航は亀田の攻撃をヒラリヒラリと躱し、
  その攻撃の隙を突いて──
陸尾 航「・・・そこだッ!」
亀田 治郎「がッ・・・!?」
  一瞬の隙を突き、
  急所へと攻撃を放つ──!
亀田 治郎「へッ・・・! なかなかやるじゃねぇか・・・!」
亀田 治郎「・・・だがな、コッチもただやられてる 訳にはいかねぇんだよ・・・!」
  因縁の戦いはまだまだ続く・・・

〇研究施設のオフィス
  その頃、ビルの中では、永和が
  警備員たちの対応に追われていた──
海世 永和「どりゃあッ!」
警備員「うわぁッ・・・!」
海世 永和「よし・・・ココはこれぐらいだな・・・」
海世 永和「・・・!?」
  次の階へ向かおうとした瞬間、
  どこからか銃弾が飛んでくる──
海世 永和「・・・」
  今度は頬に当たりそうになるが、
  永和は微動だにせず、ほぼ水平上にある
  とあるビルの屋上を睨む──
海世 永和「・・・あそこから撃たれているな、 ・・・格差ってのを知らせるか」
  内側の胸ポケットから、
  ゴム弾の入った拳銃を取り出す──
海世 永和「・・・風向きは大体・・・」
  永和が銃口を向けた先には──

〇物置のある屋上
園田 元貴「チッ・・・ 気づかれたか・・・」
  組織お抱えのスナイパー、
  園田が居た──
園田 元貴「・・・だが、相手はハンドガン・・・ コッチから下手な手を出さなければ、 脅威にはならない・・・!」
園田 元貴「・・・そうなったら、 狙うべき相手は・・・アイツだ・・・!」
  園田は銃口の向きを下の方へと
  向ける・・・
  銃口の先には──
園田 元貴「・・・居たな、陸尾とやらが・・・」
  亀田と戦っている航が居た──

〇研究施設のオフィス
海世 永和「・・・クソッ、早くしなけりゃ・・・ アイツが撃たれちまうってのに・・・ 照準が定まらねぇ・・・!」
  長きに渡る戦闘による息切れ、
  それによる手の震えからか、
  永和の照準は未だ定まっていない──
海世 永和「・・・しょうがねぇ・・・ ・・・なるようになれッ!」

〇物置のある屋上
園田 元貴「・・・チェックメイトだ、 ・・・あの世で後悔するんだな・・・」
  銃の引き金に指を掛けて引く、
  ソレと同時に、大きな音が鳴った──
園田 元貴「・・・ッ!? しまった・・・! アイツ・・・! 同時に撃ちやがった・・・ッ・・・!?」
  園田が銃弾を放つと同時に、
  永和も園田に向けて銃弾を放った──
  永和の銃弾は園田に命中し、
  園田の放った銃弾は──

〇高層ビル
亀田 治郎「ぐッ・・・ しまったッ・・・!」
  手がブレてしまったのか、
  亀田治郎の脇腹へと放たれていた──
陸尾 航「なッ・・・!? だ、大丈夫か・・・!?」
亀田 治郎「へッ・・・ テメェとの勝負は、 もうおしまいみたいだな・・・ ・・・さぁ、行きな・・・!」
  亀田のスーツに朱が滲む──
  負けを認める亀田、だが・・・
陸尾 航「・・・待ってろ、 今すぐに手当てする・・・!」
亀田 治郎「なッ・・・!? 先に行かねぇのか・・・?」
  航は亀田への手当てを行おうとする──
陸尾 航「悪いが、俺は敵だろうが誰だって助ける! あと、今死なれちまったら、 明日の目覚めが悪くなるんだ・・・! それに──」
陸尾 航「まだ・・・決着がついてねぇだろ・・・!」
亀田 治郎「くッ・・・ だッはっはっ! ・・・負けたよ、アンタには!」
  航の言い分に、
  亀田は、声高らかに笑った──

〇マンションの共用階段
海世 永和「はぁッ・・・はぁッ・・・ そろそろ最上階か・・・?」
  その頃、永和は息を切らしながら
  階段を駆け上がっていた。
  ・・・警備員たちは他に回し過ぎたのか、
  誰一人も居なかった。
海世 永和「・・・よし、ココが最上階だな・・・!」

〇施設の廊下
  そこには誰一人も居らず、
  ただ静寂が広がっていた──
海世 永和「あそこが、恐らくトップの部屋・・・ ・・・行くか!」

〇個人の仕事部屋
  永和が扉を開けると、静かな中、
  一人の女性が窓際に立っていた──
海世 永和「・・・アンタが、ココのトップか?」
宮下 紗奈「・・・えぇ、いかにも・・・ 私の名は『宮下 紗奈』(さな)・・・ この地区を統べている者よ・・・」
  自己紹介をしながら、
  コチラを向く女性──
宮下 紗奈「・・・貴方たちがこの場所に来た理由、 全て分かっているわ・・・ ・・・花奏のお願いで来た・・・ ・・・そうよね?」
海世 永和「・・・あぁ、そうだ ・・・分かってるならさっさと、 降伏してくれねぇか・・・?」
宮下 紗奈「ふふッ・・・ ・・・悪いけど、 コチラも後には引けないの、 ”花奏”の安全を守る為に・・・」
  『後には引けない』と言いながら、
  女性は臨戦態勢をとるが──
海世 永和「・・・ん? ”花奏”の安全・・・?」
  永和の中で、ある言葉が引っかかる──
宮下 紗奈「えぇ・・・ ・・・ここまで来た貴方たちには、 話しましょうか・・・」
宮下 紗奈「・・・私は・・・ 『宮下花奏』の・・・ 実の母親よ・・・」
海世 永和「なッ・・・!?」
  驚愕の事実に声を上げる永和──!
海世 永和「・・・? 待てよ・・・ アンタが実の母親なら、 あの人たちは・・・?」
宮下 紗奈「・・・同じ姓を持っている為、 花奏を預かってもらってるの・・・」
海世 永和「・・・なぁ、話してくれねぇか? アンタたちの身に何があったのか・・・」
  永和が臨戦態勢を解き、
  話を聞こうとすると、
  女性も臨戦態勢を解いて、
  話をし始めた──
宮下 紗奈「”花奏”を守ってくれた貴方たちなら・・・ ・・・分かりました、話しましょう・・・」
宮下 紗奈「私の名は『宮下紗奈』・・・ 花奏の父・・・ 元夫とは十数年前に離婚して、 この場所へ逃げ込んできた・・・」
宮下 紗奈「あの人は・・・ 十数年前に、人が変わったかのように 冷徹で残虐な性格に豹変した、 赤子の泣き声ですら癇癪を起こす程・・・」
宮下 紗奈「だから── 花奏の親権を取って、あの人でも 気づかないココに来た・・・ ・・・そして、 この場所に街を作ろうとした・・・」
宮下 紗奈「花奏が退屈しない街を・・・ ・・・だけど、街を作るのは労働者たち、 花奏を狙う輩も居るかもしれない・・・ だから──」
宮下 紗奈「宮下家に花奏を託した・・・ ・・・私も親として失格だと思ってる、 だけど、こうするしか無かった・・・」
  女性の話を聞き、永和が口を開く──
海世 永和「・・・なるほど、 貴方は、花奏を守る為に、 宮下家に預けたと・・・」
宮下 紗奈「・・・えぇ」
海世 永和「・・・正直、そこら辺の話は 私にも良く分かりません・・・」
海世 永和「・・・ですが、 その考えの中に、 本当に”愛”があったのか・・・ ・・・私には分かりかねます」
  永和は少し声を荒げる──
海世 永和「・・・ですが、貴方のやっている事は、 傍から見れば、愛を謳って・・・ 娘を突き離している、 毒親でしかないですよ・・・!」
宮下 紗奈「・・・そう・・・ね ・・・さて、立ち話はここでおしまい、 ・・・聞きたいなら、力ずくで来なさい!」
  女性の言葉に、
  互いに臨戦態勢をとり、
  距離を詰める──
  ・・・先に動いたのは──
海世 永和「・・・隙あり!」
  海世永和であった──
  女性は永和の攻撃を避けて、
  隙を突いて反撃するが──
宮下 紗奈「はッ!」
  反撃が外れる──
  その隙を見逃さず、永和が攻撃を
  喰らわせる──!
海世 永和「奥義『拘水』──!」
宮下 紗奈「・・・なかなか、やるよう・・・ね・・・」
海世 永和「・・・コレで終わり・・・だな」

〇黒背景
  長きに渡る、『宮下花奏』を巡る戦い──
  その戦いに終止符を打った海世永和・・・
  ・・・その後、宮下紗奈の作り上げた
  街は解体され、宮下家は元々住んでいた
  町へと帰った──
  花奏は、宮下紗奈の娘であり、
  宮下家の娘では無い事を受け入れ、
  花奏自身の希望もあって
  航たちの元で暮らす事となった──

〇森の中のオフィス(看板無し)
  事務所にて・・・

〇明るいリビング
陸尾 航「いや~・・・ まさか花奏があの施設?の トップの娘だとはね、モゴモゴ」
海世 永和「・・・昼メシ食いながら喋んなよ・・・」
海世 永和「・・・で、花奏! 本当にここで良かったのか? 宮下家の方に行っても良かったんだぞ?」
宮下 花奏「・・・いえ! ここで楽しく過ごすのが、 凄く好きなんです・・・! ・・・あと、コロも快飛さんに 凄い懐いていますし・・・」
陸尾 航「だッはっはっ・・・! 良くぞ、言ってくれた!」

〇森の中のオフィス(看板無し)
  事務所には、いつもと変わりない笑い声が
  響いていた──

〇黒背景
  第8章『闇に消えた家族』完──

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