第四話(脚本)
〇繁華な通り
わたしは前を歩く、ヨミさんの後を歩いていた。
アンジュ「ふふふ」
ヨミ「え? いま、笑ってた?」
アンジュ「楽しくて笑ってました」
ヨミ「それって、あーしと一緒に歩いてるから?」
アンジュ「はい!」
ヨミ「・・・いや、直球で答えられたら、照れるってば」
アンジュ「一緒に歩くのは、本当に楽しい! だけど、不思議なんです!」
アンジュ「もう見慣れたはずの人間の世界。 なのに、こうして地面を歩いて見る景色は、全然違うものに感じます」
アンジュ「そこにある看板も、まるで、わたしを吸い寄せてるように美しく見えます!」
ヨミ「居酒屋の看板だよ。 しかもチェーン店の」
アンジュ「この場所はなんですか? 無料って書いてます!」
ヨミ「それは、無料案内所・・・・・・ って、入るな入るな」
アンジュ「貼り紙ばかりで、何もない場所でした」
ヨミ「気にしなくていいってば」
ヨミ「あ、それより・・・ アンタ、名前聞いてなかった」
アンジュ「わたしは「アンジュ」です」
ヨミ「「アンジュ」・・・ はは。 天使みたいな名前だね」
アンジュ「天使ですから」
ヨミ「あーしは「ヨミ」」
アンジュ「はい! 存じ上げてます!」
ヨミ「そっか」
アンジュ「ふふふ」
アンジュ「自己紹介も楽しい!」
アンジュ「わっ!」
ヨミ「えぇ・・・ 何でいきなり転ぶの」
アンジュ「躓いちゃいました ふふふ」
ヨミ「人間たちは定期的に地面を掘り返して、舗装を繰り返してるんだよ 足元に気を付けないとね」
アンジュ「なんで、そんなことするんですか?」
ヨミ「古に隠された埋蔵金を探しているらしいよ そのついでに、舗装してるんだって 大人の宝探しだね」
アンジュ「宝探し・・・ 夢ありますね!」
ヨミ「だから、地面もしっかり見て歩かないとね」
アンジュ「はい!」
ヨミ「あった。あった。 それじゃ、このお店に入りまーす」
〇シックなバー
ヨミ「おっ! ハルキ ~ いたいた」
ヨミ「ショウジさんも、こんばんわ~~!」
ハルキ「よ、ヨミ!?」
ショウジ「なんだ 呼んでたのかよ~」
ハルキ「いや、呼んでないですし、来るのも聞いてないですって・・・」
ショウジ「それでも来てくれるなんて嬉しいね ヨミちゃん! 一緒にアルバイトしてく?」
ハルキ「あっ ヨミ! ショウジさんの言葉は無視していいから」
ヨミ「え~ あーしもバイトしたいけど~ ・・・どうしよ~」
ハルキ「悩むな、悩むな・・・断れ」
ショウジ「おいおい 酷いこと言うなよ~」
ハルキ「覚えてないですか? 前にバイトしたとき、グラスーー 3個も割ったんですよ。 2時間だけのバイトで!」
ショウジ「あったな・・・」
アンジュ「そんなに・・・」
ヨミ「違う違う 30分で4個だったし」
アンジュ「増えてる!」
ハルキ「増やして訂正をするな」
アンジュ「あっ・・・」
ヨミ「大丈夫 見えてないし聞こえてないよ」
ヨミ「でも、みんなで会話してるみたいでしょ」
アンジュ「はい!」
ハルキ「ヨミ いま、なんか誰かと話してる?」
ヨミ「えええ!? ぜんぜん、誰とも何も話してない」
ハルキ「そっか・・・ まぁ、それよりも、バイトは遠慮してくれよ」
ヨミ「わかった~」
ショウジ「簡単に遠慮しないでくれよ」
ハルキ「いや遠慮されなかったら、今日で店のグラスが全て割れますよ」
ショウジ「それは困るけど・・・そこまでじゃないよね?ヨミちゃん」
ヨミ「多少のグラスは割るかもですけど! きっと、数個は残るかと!」
ショウジ「うぉい!」
アンジュ「・・・・・・ふふふ」
ショウジ「まぁ・・・ケガだけには気を付けてくれよな」
ハルキ「いや、許すのかよ・・・ 寛大すぎるだろ」
ショウジ「ハルキがちゃんと見張ってるんだぞ~ ・・・っと、俺は、そろそろ、いって来るわ」
ショウジ「悪いけど、あとは任せた!」
ハルキ「・・・ったく・・・・・・ で、ヨミは何でお店に来たの?」
ヨミ「あー えっとね・・・ あーしたちの歌とか曲を気に入ってくれたって人に会ったんだ」
ハルキ「ほぉ それは嬉しい」
ヨミ「でしょ」
ハルキ「・・・ん? それだけ?」
ヨミ「違う違う えっとね~ 何て言ってたっけかなぁ?」
ヨミ「アンジュ 言ってみて」
アンジュ「え? い、いま言うんですか!?」
ハルキ「ヨミ? どうした?」
ヨミ「あー えっと、いま思い出してるから」
アンジュ「二人が奏でるギターが大好き 二人の声が大好きで 重なったときなんて、世界がキラキラになる!」
アンジュ「自然と身体が動いちゃって、 脳よりも心が先に踊っちゃう感じがします!」
アンジュ「歌詞も曲も 全部、大好きです!」
ヨミさんは、わたしの言葉を、そのまま復唱するように、ハルキさんに伝えてくれた。
ハルキ「なんか・・・めちゃくちゃ嬉しいな」
ヨミ「でしょ!」
ハルキ「というか・・・ なんかその場で、本人に言われてるくらいの気持ちが伝わったわ」
ヨミ「あーしの再現度が半端ない説あり」
ハルキ「ははは でも、その人に伝えてよ これからも頑張る 応援の気持ち、しっかり受け取ったって」
ヨミ「りょ!」
アンジュ「やった」
ヨミ「それじゃ!」
ハルキ「あ? 帰るの?」
ヨミ「うん! あーし、これ言いたくて来たから」
ハルキ「そっか・・・ ありがと」
ヨミ「はいな~」
〇繁華な通り
ヨミ「どうだった? 気持ち伝わった感じあった?」
アンジュ「・・・ありがとうございます これをしたかったんですか?」
ヨミ「そう! だって、なんとなく気持ちわかるからさ こんな伝えられるチャンスあるなら、そんな気持ちになるっしょ」
アンジュ「なります! なってました!」
ヨミ「あーしだけに伝えてもしゃーないでしょ」
アンジュ「はい!」
ヨミ「・・・そう、ハッキリ言われると、それはそれでショックだけど」
アンジュ「あっ! あっ・・・そんな意味じゃなくって」
ヨミ「冗談」
アンジュ「もー!」
ヨミさんに言われるがまま、付いて行った結果、ずっと伝えたかった感想を、伝えることができた。
今日は嬉しい日だ。
これは、わたしが初めて人間に気持ちを伝えることができた記念日
そして、これからの始まりの日でもある
・・・つづく
ヨミの中継でアンジュの感想がハルキに伝わって良かったです。😊
ハルキの目にはアンジュは映っていない様ですが、もしかしたらハルキの親友には……と推理してみたりします。
アンジュにとっての大切な記念日。その先に何が起こるのか。楽しみにしてます!