第三話 テラス(脚本)
〇荒地
カリン「見えた」
ミリオン「?」
カリンの視線の先に並んでいる
崖沿いのバラック小屋の集落。
〇断崖絶壁
小屋の群に崖の底から吹き荒れる
潮風が叩きつけられている──
・・・その中に
階段のついた白いテラスを備えた
屋舎が建っていた。
階段には
小柄な青年が座り込み──
少女が軒先を箒で掃き続け、
遠くにいても
それに力がこもっていないことが窺える。
〇荒地
カリン「・・・」
ミリオン「あー!!」
カリン「ちょっと!! 大声出すんじゃ──」
ミリオン「あそこ、あそこ!! 僕と同じ”ミリオン”だよ!!」
カリン「分かってるよ・・・!! 知ってるから黙れ!!」
ミリオン「こっちこっち!! おーいおーい!! うわーやっと会えた!!」
首を前後に激しく動かして
ミリオンはボディと車体を揺らす。
〇断崖絶壁
エール「・・・」
リーシュ「・・・? 誰なんだ、あれ・・・」
リーシュ「エール、顧客リストを照会してみて。 分かる?」
エール「・・・わ」
エール「はり・・・わ・・・ ・・・につた・・・え・・・」
リーシュ「ん・・・ 調子悪かったのかな?」
リーシュ「じゃあいいよ 掃除は・・・まだできる?」
エール「・・・・・・」
リーシュ「・・・・・・」
〇荒地
カリン「・・・・・・」
ミリオン「おーいおーい!! おーーいってばー!!」
カリン「・・・・・・」
ミリオン「ん?」
ミリオン「カリン?」
カリン「これ、被ってて」
ミリオン「えっいいの!?」
カリン「あそこにいる間だけでもいいから・・・ 大人しくしてて」
カリン「・・・まあ 私が着せるんだけど」
〇断崖絶壁
カリン「リーシュ」
リーシュ「カ・・・」
リーシュ「カリン・・・だよね?」
リーシュ「・・・来ちゃったの?」
カリン「大丈夫 預けていたものを貰ったら すぐに出発するから」
リーシュ「・・・・・・」
リーシュ「うん それが良いと思うけど・・・」
リーシュ「・・・「一人前の証」はそれにしたの?」
カリン「え?」
カリン「ああ、これ?」
カリン「毛皮と同じ要領で・・・ 何かと交換してもらえるかなって 思ってたの」
ミリオン「・・・・・・・・・」
リーシュ「蒸留水と交換してこようか? それならいつもの2ℓで・・・」
カリン「ああ、いいのいいの 今はいいの」
リーシュ「でも、そんなに大きいと荷物になるよ 運んでいくワケは──」
カリン「・・・趣味」
リーシュ「ええええ・・・」
エール「・・・・・・」
〇暖炉のある小屋
カリン「他に誰か来なかった?」
リーシュ「ああ、えっと・・・」
リーシュ「その・・・ 会えてないかな・・・」
カリン「そう」
リーシュは
カリンに水を一杯差し出す。
カリン「はい、物資の引き出しお願い」
リーシュ「236番・・・」
リーシュ「・・・・・・」
カリン「タグの期限切れてたっけ?」
リーシュ「いや、ゴメン。合ってるよ」
リーシュ「そっか、 これカリンの番号だったんだ・・・」
デルフ「・・・・・・」
リーシュ「カリン、あの・・・」
リーシュ「蒸留水のボトル持ってるよね? 裏口まで持ってきて、 足りなかったら・・・」
リーシュ「他のもので埋め合わせるから・・・ほら」
リーシュ「!!」
カリン「リーシュ、大丈夫」
カリン「取ってくるまで、ここで待ってるから ”裏”に行ってて」
リーシュ「・・・・・・」
「よう、カリン」
デルフ「手を挙げて頭の後ろに回せ」
〇断崖絶壁
エール「・・・・・・」
おぼつかない足取りで
掃除を続けるエール。
ミリオン「・・・・・・」
エール「・・・・・・」
ミリオン「・・・ねえ」
エール「・・・・・・」
ミリオン「名前があるなんて・・・」
ミリオン「愛されているんだね」
エール「・・・・・・」
ミリオン「いつからここにいるの?」
ミリオン「他の”ミリオン”には会わなかった?」
エール「・・・・・・」
ミリオン「エールって 彼が名付けてくれたの?」
エール「・・・・・・」
ミリオン「あー」
ミリオン「動けるって羨ましい・・・」
エール「・・・・・・」
〇暖炉のある小屋
デルフ「まったく 関心ならんな、単独行動とは」
デルフ「よっぽど追い詰められいるらしいな 可愛そうに・・・」
カリン「・・・・・・」
デルフ「銃はカウンターに置いていけ、 それで見逃してやる」
デルフ「相棒はどうした?」
カリン「・・・・・・」
デルフ「・・・・・・」
デルフ「・・・まあいい」
デルフ「ダチュラ署長は何処にいる?」
〇ボロい倉庫の中
〇暖炉のある小屋
デルフ「・・・どうした 娘のお前も行方知らずなのか?」
カリン「・・・・・・」
デルフ「・・・・・・」
デルフ「ああ、そうか 分かったよ」
デルフ「それなら仲間はどこだ」
デルフ「一緒に逃げただろ?」
デルフ「”一人前の証”なんて 行事をするヒマ、 お前らにはもう無いハズだ」
デルフ「何故戻ってこない?」
デルフ「・・・あの騒ぎに乗じて何を企んでいる?」
〇古い洋館
〇暖炉のある小屋
デルフ「居場所を言うだけでいい」
デルフ「そしたら 解任リストから外すよう──」
デルフ「オズナに掛け合ってやってもいい」
カリン「・・・!?」
カリン「オズナ・・・」
デルフ「警務課とはいえ こんなご時世に 俺たち”民間警察”の新署長に 名乗り出るぐらいだ・・・」
デルフ「お前たちの 復帰に必要な時間も そう多くはならないだろう」
カリン「・・・・・・」
デルフ「ほら、どうなんだ?」
〇断崖絶壁
ミリオン「・・・・・・」
ミリオン「カリーン」
ミリオン「心拍数上がっているけど 何かあったのー?」
ミリオン「この着ぐるみ 僕じゃサイズが合わなくて 真っ暗闇なんだけどー」
ミリオン「・・・・・・」
ミリオン「どうして 銃を向けられているのー?」
エール「・・・・・・」
ミリオン「ん」
ミリオン「エール?」
エール「・・・・・・」
箒を手放しているエールは
ミリオンの顔を覗き込み──
手を伸ばす
〇暖炉のある小屋
デルフ「キャンプはどこにある。 どうだ、答えてみろ」
カリン「・・・・・・」
デルフ「ダチュラ・・・」
デルフ「元トップが逃亡を続けていると 面子に関わってくる 分かるだろ、それくらいは・・・」
デルフ「”移住くずれ”の家系でも、 オズナならガラクタ漁りとして 放免ぐらいは 考えてくれるんじゃないか?」
カリン「・・・よくも」
デルフ「んー?」
カリン「よくもそんなこと ベラベラと・・・」
カリン「何も知らないくせに・・・」
デルフ「そりゃお前らの方だ」
デルフ「・・・いいんだな? カリン」
デルフ「ここに来るのは分かっていたぞ、 お前の補給も既に没収させてもらった」
デルフ「そのままカウンターに額をつけろ 抵抗するなよ」
カリン「・・・・・・」
カリンは腰のレザーホルスターに
ゆっくりと触れる。
デルフ「おい、よせよ」
カリン「・・・・・・」
デルフ「・・・・・・」
リーシュ「・・・・・・」
「ちょっとちょっと!」
「あっはははは!! ちょっとやりすぎな気がするけどー!?」
デルフ「誰だ・・・!?」
カリン「・・・ッ!!」
デルフ「おい、待て!! 動くんじゃない!!」
〇断崖絶壁
カリン「黙っていろってあれほど──」
カリン「え・・・」
エールは車に身を乗り出し──
着ぐるみの隙間に手を入れて
ミリオンの首を絞めていた。
ミリオン「ちょっと、何するの? エール」
エール「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
カリン「エール!!」
リーシュ「待って!! 撃たないで!!」
カリン「・・・ッ!」
リーシュ「エール!! 車から離れて!!」
エール「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
リーシュ「エール!!!!」
カリン「クソッ・・・!!」
カリン「・・・・・・!!」
カリン(手が震えて──)
リーシュ「エール!!」
カリン「ダメ!! 近づかないで!!」
リーシュ「エール!! やめて!! どうしたんだよ!!」
カリン「・・・・・・」
カリン「フーッ フーッ」
アボカドさん
こんばんは
3話更新お疲れ様です🐈私は3話苦戦していますよ
凄いなあ✨
最後はひきがうまくて、続きが早くも気になっています
ミリオンてロボットの種類だったんですね!
ガクガクて油のきれてるかんじというかやはり効果音の使い方で世界観を演出させるのうまいです