第三話(脚本)
〇SHIBUYA109
ハルキ「ヨミ このあと、バイトあるから今日はこの辺で」
ヨミ「あんまり無理しちゃダメだよ」
ハルキ「ありがと」
〇繁華な通り
定期的な路上ライブと動画配信。
ライブハウスや、イベントでの演奏の日々。
聴いてくれる人がいるからこそだが、贅沢を望まなければ充実した日々。
バイトは友達から誘われた時に入る程度。
・・・本当に金欠の時は、俺からも頼む事があるから、お願いは基本的に断らない。
持ちつ持たれつ・・・ってやつ。
ハルキ「・・・というか甘え」
・・・バイト先の夜道を一人で歩いていると、なんか、いろいろ考えてしまう。
月明りと星々の輝き、夜というシチュエーションがそうさせるのか、独り言が多い性格なのかは未だにわからん。
だが・・・思い返せば、修学旅行の夜。
電気を消してから、突然会話をはじめるタイプだった気もする。
ハルキ「うん・・・たぶん、コレだな 新しい自分を発見した気分だ」
ハルキ「いや、新しくはないのか・・・ 昔からだもんな」
ただ、こんな夜の時間は、嫌いじゃない。
歌詞の一つ、メロディーのきっかけの一つでも、浮かんできそうだ。
夜の街の看板、ビルの一室の明かり、壁に貼られた何かのシール、溢れかえったゴミ箱、誰かが落としたぬいぐるみ
粗大ゴミのシールが貼られたキャリーバッグ、どうやって壊れたのか分からない、一部だけめくれ上がったアスファルト。
ハルキ「こんな分かり易い地面でも、スマホを見てたら気にもならないし、中には躓く人もいるんだろう」
世の中は面白い。
ハルキ「でも・・・歌詞もメロディーも浮かばない」
ハルキ「何かが変わってしまったのだろうか 具体的には分からないが、以前の自分には戻れないーーそんな感覚だけはハッキリとある」
そんなことを考えていたら、友人がマスターをやっているBARに到着した。
〇シックなバー
ショウジ「お~! ハルキ! 来てくれて、ありがとな~~」
ショウジ「子供が熱だしちゃってさ。 カミさん一人に任せるのもアレだし──」
ハルキ「大丈夫だよ。 連絡くれて嬉しいよ」
ショウジ「ハルキは突発的な対応してくれるから、ありがてぇ。 持つべきものは友だよ」
ハルキ「こっちも、ピンチの時、助けてもらってるから」
ショウジ「正直、こっちが頼る事の方が多い気がするけどなぁ」
ハルキ「気にしなくていいって――それより、ほら、そろそろ家に帰りなよ。 お店のことは任せて」
ショウジ「なんだよ。急かすなって。 家なんか自転車で5分だぞ──」
ハルキ「帰りに食材とか、いろいろ買うんでしょ」
ショウジ「まぁ、そうだけどさ・・・ ってか、ヨミちゃんは連れてこないのか?」
ハルキ「えっ? なんで、いきなり」
ショウジ「あんまり、ほっとくのも良くねぇぞ」
ハルキ「いつも言ってるけど、そんなんじゃないから」
ショウジ「へいへい」
ショウジのいつもの話を軽く流してると──
店の扉が開いた
・・・・・・つづく