天使の悪戯~ワンルームに響く歌~

貴志砂印

第一話(脚本)

天使の悪戯~ワンルームに響く歌~

貴志砂印

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〇SHIBUYA109
  天使は魂を天国に導く仕事をしている。
  
  一方で、死神は魂を地獄に導く仕事をしているーーらしい。
  人間は夢を持って仕事をするらしい。
  
  でも、夢を持たなくても仕事はできるそうだ。
  なんなら、仕事をしなくてもいいらしい。
  正直、それはどうかと思うが、そういうものだそうだ。
  
  でも、夢はあった方がいいと思う。
  だって・・・夢はキラキラしているから
  わたしは、この場所にいることが好きだ。
  人の声、走る車、街の光・・・。
  
  目に見える全部が面白い。
  中でも、この街で聴く音楽が一番好きだ。
  彼女が奏でるギター
  
  彼女から発せられる歌声
  その隣でギターを奏で歌う彼も素敵だ。
  二人が奏でる音と声が重なったとき、耳から感じ取っているハズなのに、身体が最初に反応してしまう。
  そんな不思議な感覚
  わたしは、この感覚が好きで、何度も二人の音楽を聴いてしまう。
  出来る事なら、この気持ちを伝えたい
  遠くでひっそりと聴くだけじゃなく、近くで音楽を聴いて、どこが良いか、どこが好きか、全部伝えたい。
  ・・・でも、それは叶わない。
  わたしの声は届かない。
  それに姿すら見えないんだ。
  わたしは物にも触れられない。
  当然、人にも触れられない。
  だって、わたしは天使だから・・・。
アンジュ(こうして聴いて・・・いいなぁって思うことしかできない)
アンジュ(あんな風に、わたしも投げ銭して一言だけでも伝えたい・・・)
アンジュ(・・・そもそも、投げるお金もないけど・・・)
アンジュ(・・・握手とか・・・いいなぁ・・・ あんなに感想言ってて・・・いいなぁ)
  いつも、二人が帰るまで、じっと遠くから見てるけど、今日は・・・ついつい近くまで来てしまった。
ハルキ「ヨミ このあと、バイトあるから今日はこの辺で」
ヨミ「あんまり無理しちゃダメだよ」
ハルキ「ありがと」
ヨミ「・・・ほんと、無茶はよくないんだから」
アンジュ「終わっちゃった・・・」
ヨミ「あ、ゴメンね」
アンジュ「いえいえ・・・」
ヨミ「あれ? もしかして、話すの初めてじゃない?」
ヨミ「いつも、ちょっと離れて聴いてくれてる子だよね?」
アンジュ「えっ、あ、はい。 そうなんです・・・──」
アンジュ「・・・あれ?」
ヨミ「どうした?」
アンジュ「これ・・・会話してますよね?」
ヨミ「そうだね」
アンジュ「・・・わたしの事、見えてます?」
ヨミ「え? いるじゃん。 そこに」
アンジュ「えええええ!!」
アンジュ「ど、ど、ど、どうしよう? ってか、え? なんで? なんで? え?」
ヨミ「いや、慌てすぎだから ・・・見えるでしょ。普通に」
アンジュ「それはあり得ないんです」
ヨミ「なんで? あ、もしかして、自分が天使だから~とか言う感じ?」
アンジュ「はい・・・ そう言うつもりでした」
ヨミ「マジ?」
アンジュ「・・・はい」
  わたしは、その場で浮いたり、他の人の身体をすり抜けたりして見せて、説明をした。
ヨミ「マジか・・・」
アンジュ「はい・・・ これ、何かマズイですかね?」
ヨミ「あー いや、仕方ないんじゃない? ・・・何て言うか、状況的にとでも言うべきか」
アンジュ「え?」
ヨミ「あーし、元・天使だから」
アンジュ「えええええ!!」
  今日、はじめて人間と会話した。
  いや、元・天使と会話をした。
  
  
  ・・・・・・つづく

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