episode4:男子高校生☓結婚生活(脚本)
〇ファミリーレストランの店内
佐藤くん「田中のやつ大丈夫かな・・・。 悪ノリに付き合わせ過ぎたわ・・・」
佐藤くん「ま、まあ・・・こういうのはなんだかんだ間に合うって相場は決まってるし」
佐藤くん「でも最近すこし調子に乗りすぎてたかもしれないな。 あとで田中に謝ろう・・・」
「ハーイ! そこの少年。ちょっとだけお願いを聞いてもらえないかしら?」
佐藤くん「(誰だよこんな時に・・・ただでさえナイーブになってるのに・・・)」
佐藤くん「すいません。 俺はいま他のひとにかまってる余裕なんて──」
ジュリア「ほんの少しだけ。 ね、お願い」
佐藤くん「(ファミレスにとんでもないレベルの美女が降ってきた!)」
佐藤くん「(それも外国人っぽい!)」
佐藤くん「(ピッチピチやど!)」
佐藤くん「はいよろこんで!!」
ジュリア「あらまだ話してないのに頼みを聞いてくれるの? センキューベリーマッチ♪ 君とっても素敵だわ。恋しちゃいそうよ」
佐藤くん「(もう田中のことなんてどうでもいい! なんとしても目の前の彼女とお近づきになるんだ!)」
ジュリア「じつは駅にお財布を落としちゃったみたいでね」
ジュリア「取りに戻りたいんだけど、娘がご飯食べてる最中だから誰かに見守っててほしいの・・・」
ジュリア「あなたは〇☓高校の学生さんでしょう? だったら任せても大丈夫かと思ったんだけど・・・頼んでもいいかしら」
佐藤くん「やります。やってやります。何でもやります。死ぬ気でやります。過労死してもやり遂げます」
佐藤くん「やってやるぜよ!!」
ジュリア「そ、そう・・・。そこまでやる気になってくれるなんて嬉しいわ・・・ (このひと土佐藩出身なのかしら・・・)」
ジュリア「ありがとね♥」
佐藤くん「はい! 任せておいてください!」
佐藤くん「なんて可憐なひとなんだ・・・よし・・・それじゃあさっそく・・・」
佐藤くん「・・・・・・」
佐藤くん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・むすめ?」
エリー「短い間だけどよろしくね。お兄さん」
佐藤くん「そうか・・・あのひとは子持ちの人妻だったのか────」
佐藤くん「(それはそれでいい! 人妻! つまり未亡人の可能性もある! 可能性は無限大だ! ぐふ、ぐふふふ!)」
エリー「ぺっ!」
佐藤くん「(いまこの子、絶対に唾吐いた!)」
〇ファミリーレストランの店内
佐藤くん「エ、エリーちゃん。ハ、ハンバーグは美味しい?」
エリー「悪くないかな。 食品添加物がエリーの身体と寿命を少しずつ蝕んでるって考えると食が進むよ」
佐藤くん「そ、そっか・・・」
佐藤くん「(なんかすごく変わった子だな・・・)」
店員さん「食器をお下げしてもよろしいでしょうか?」
エリー「うん! ありがとうお姉さん♪ エリーはね。やさしいひとが大好きなんだよ!えへへ」
店員さん「気にしないで。 これがわたしのお仕事だから当然のことをしたまでなの。 (かわいい♥) それではごゆっくりどうぞ♪」
佐藤くん「それじゃあ俺もいったんあっちの席に戻るから。 あ、もちろんずっと見守ってるからね!」
エリー「シットダウン─。 ここに座って」
佐藤くん「え」
エリー「いまわたしから逃げようとしたでしょう。 エリー知ってるよ? お兄さんはわたしから少しでも距離をとろうとしてるんだね」
佐藤くん「い、いやそんなことは・・・」
エリー「エリー知ってるよ? お兄さんはママと喋る時はデレデレだったけど、エリーと喋る時はずっと冷や汗をかいている──」
佐藤くん「(だってこの子、全然年相応じゃないし、なんかこっちの考えてることぜんぶ筒抜けになってる気がするんだよな・・・怖えよ)」
佐藤くん「(とにかく何でもいいから理由をつけてこの子からできるだけ遠くに逃げるぜよ───)」
佐藤くん「(逃げるは恥だが役に立つ! よし決めたぞ! 一度決めたことは曲げない! 男に二言はない! それが男ってもんぜよ!)」
エリー「!」
エリー「エリー知ってるよ! お兄さんは嘘つきだ ママとの約束を破る気だね?」
佐藤くん「べ、別にそんなつもりは・・・」
エリー「エリー知ってるよ。 その顔はママが嘘をつく時の顔と同じだからね」
エリー「ママが言ってた。 わたしにスマホを触らせないのは子どもの成長の妨げになるからだってね。 でもほんとうは違う───」
エリー「スマホで“女性用風俗”を検索している事実を娘に悟られたくないだけだよ わざわざ検索履歴まで消して入念に隠蔽してたからね」
エリー「お兄さんはその嘘をついた時のママと同じ顔してる。 エリーは騙されないよ───」
ジュリア「ぐはっ!」
佐藤くん「(なんてことだ・・・ここにはいないエリーちゃんのお母さんにまで飛び火した・・・)」
店員さん「お待たせいたしました。 スペシャルストロベリーパフェになります! こちら当店からのサービスですのでお代は結構です」
エリー「わあ本当にいいの? ありがとうお姉さんだいすき♥ エリーは感謝感激雨嵐だよ♪」
店員さん「いいの。 いい子にはご褒美があるものなのよ」
店員さん「善い行いにはご褒美が─── 悪い行いには報いが」
店員さん「あるものですよね? 約束、きちんと守ってあげて下さいね」
佐藤くん「(ぐっ、店員さんに釘を刺されてしまった・・・これではこの場から逃げられない!)」
エリー「エリーなんかひまだな。 エリーは知ってるよ。 退屈は死に至る病だって。キルケゴールも言ってるからね。 だから遊んで」
佐藤くん「(仕方ない・・・) じゃあ何して遊ぼっか? あ、ジャンケンなんてどうだろう。それか──」
エリー「おままごとがいい。 わたしは奥さん役。お兄さんは旦那さん役だよ」
佐藤くん「拒否権はないのか・・・」
〇おしゃれなリビングダイニング
佐藤くん「ただいまー。今日も仕事疲れたよ・・・」
イマジナリー・エリー「おかえりなさい、あなた」
イマジナリー・エリー「ご飯にする? お風呂にする? それとも」
イマジナリー・エリー「タ、ワ、シ?」
佐藤くん「最後のは絶対に嫌だって! なんで家に帰ってきてタワシ!? 帰ってそうそう掃除しろってか!?」
イマジナリー・エリー「エリーはね そろそろお腹が空いたんだよ。 はやくご飯つくってね」
佐藤くん「しかも俺がご飯作るんかい! 夫婦共働きの時代だからそれはいいとしても・・・だったらそのエプロンはなんなんだよ!」
イマジナリー・エリー「エリーはヘイト管理に余念が無いんだよ 家でエプロンつけてれば義母からねちねち小言を言われずに済むかもしれないからね」
佐藤くん「姑対策か・・・ でもエプロン付けてるなら少しくらい料理つくるの手伝ってほしいな・・・」
イマジナリー・エリー「分かった・・・ それならエプロンを脱いでパジャマに着替えるね・・・」
佐藤くん「うん。その方がいいと思うな。 (正直エプロン脱ぐよりも手伝って欲しかった・・・)」
イマジナリー・エリー「これでいい?」
佐藤くん「いやパジャマおかしいだろ!? 俺たち成人してる設定じゃないのかよ!」
イマジナリー・エリー「え、そうなの? でもママはパパとふたりで寝室で寝る時はこの服を着てるよ? エリーそんなの知らない・・・」
佐藤くん「(それってパジャマじゃなくてそういうプレイなんじゃ・・・ ていうか、またエリーちゃんのお母さんに流れ弾が飛んでいった)」
ジュリア「ぐふぅ!」
イマジナリー・エリー「今日はあなたに大切な話があるの・・・」
佐藤くん「そんなに大事な話? 今日はもう疲れてるんだ。できたら明日にしてくれないか。 今日も部長がノルマノルマってうるさくて、」
イマジナリー・エリー「今日ポストに封筒が投函されてて 開けたらあなたと女性の写真が・・・ あのひとはだれ? いつから浮気してたの──」
佐藤くん「(おれ浮気してる設定なのか。急にシリアスな展開ぶち込んできたな。あとこれ本当におままごと? リアルにより過ぎだろ)」
佐藤くん「写真って? なんのことかな・・・ははは・・・ 見せてもらわないと分からないよ・・・」
イマジナリー・エリー「これよ・・・」
佐藤くん「って写真古すぎだろっ! 浮気相手江戸時代のひと!? おれタイムマシンに乗って浮気でもしに行ってたの!?」
イマジナリー・エリー「写真を間違えた。 エリーは天然ドジっ娘だからね」
佐藤くん「(絶対天然じゃない・・・養殖だ)」
イマジナリー・エリー「誰なの・・・ どうして浮気なんて・・・」
佐藤くん「・・・・・・」
イマジナリー・エリー「どうして何も言ってくれないの! 答えてみなさいよ!」
イマジナリー・エリー「もういい・・・ わたしたちの結婚はなにもかも間違えてた・・・ もう終わりにしましょう・・・」
佐藤くん「・・・・・・」
「異議ありっ!」
佐藤くん「お、おまえは──っ!」
ずいぶんと待たせちまったな・・・
佐藤くん「た、田中っ! いったいいつからそこに!」
田中くん「ふっ。 ヒーローは遅れてやってくるもんだろ?」
イマジナリー・エリー「た、たなかっぽいひと・・・」
田中くん「いや、田中っぽいっひとってなに? 正真正銘おれが田中だからね?」
イマジナリー・エリー「何をしに来たかは知らないけど・・・エリーの気持ちは変わらないよ。 このひとはわたしをずっと騙してたんだからね・・・」
田中くん「違う! それは誤解なんだ!」
田中くん「その写真に映ってる女は俺の妹なんだ! 俺の妹は難病に侵されていて、莫大な治療費が必要だった──」
田中くん「俺もお袋も親父もみんなでマグロ漁船で働いて妹の治療費を稼ぐ悪戦苦闘の日々!」
田中くん「親友の佐藤はそんな俺たちの為に少しずつお金をカンパしてくれていたんだ!」
田中くん「そして一ヶ月前ようやく治療費が貯まって妹は手術を受けることができた! 佐藤のおかげで妹は助かったようなものなんだ!」
田中くん「その写真は妹が感謝の印に佐藤の頬にキスした時のものなんだ! きっと妹が佐藤に感謝を伝えたくて送ったものに違いない!」
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