ファミレスでダベるだけ

S壱

episode5: 男子高校生☓就活【前編】(脚本)

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〇ファミリーレストランの店内
田中くん「終わっちまったな・・・」
佐藤くん「ああ、思い出すだけでもぞっとするぜ」
佐藤くん「まさしく苦難の連続だった。 でも、俺たちはたしかに期末テストを乗り越えたんだ──!!」
田中くん「つまり──」
田中くん「念願の夏休みだー!」
佐藤くん「あと三週間で学業から解放される! 常夏の日々が俺たちを待っているんだ!」
田中くん「それでも期末テストの結果が出るまでは、まだ安心できないのはあるけどな」
佐藤くん「水を差すようなこと言わないでくれよ!」
田中くん「わ、わりい・・・」
佐藤くん「でも高校二年生の俺たちは、来年には受験が控えてる。 それに大学生になってからは就職活動。前途多難なのは確かだな」
田中くん「珍しくまともなこう言うじゃねえかよ」
佐藤くん「だって世間は就活の恐ろしさを散々煽ってきてるじゃないか」
田中くん「たしか履歴書とかエントリーシートを山のように書いて、何度も面接を受けたあげく、あっけなく落とされるって聞くよな」
佐藤くん「おれ絶対に無理だよーーー! 一次面接すらたどり着けずにハローワークと自宅を往復する日々が待ってるんだ!」
佐藤くん「自宅、ハローワーク。ハローワーク、自宅! 地獄、ハローワーク!  地獄、地獄、地獄! 延々と繰り返される地獄!」
佐藤くん「エンドレスで終わらない! エンドレスだから終わらない! 終わらないからエンドレス!」
佐藤くん「あげくの果てに、ファミレスで履歴書を書く毎日に忙殺されて「あのひとなにしてるひとなのかしら・・・」」
佐藤くん「ってファミレスの店員さんたちから陰口を叩かれるようになるに決まってるんだよちくしょー!」
田中くん「さすがにそんな酷いことにはならないだろ・・・」
  ※作者の体験談ではありません。
  
  本当に違いますからね・・・
  ぜぇ・・・はあ・・・
  ぜぇ・・・はあ・・・
田中くん「でも、まだまだ先の話なんだし、いまからそこまで心配しなくてもいいんじゃねえの?」
「あら、そんなことはないわよ。 勝利の女神はいつだって準備を怠らない者に微笑むって決まっているんですもの」
ジュリア「グッド・イブニング♪ この間はどうもありがとう♪」
佐藤くん「エリーちゃんのお母さん!」
ジュリア「ジュリアでいいわよ? 遠慮せずにフレンドリーに接してくれると嬉しいわ♪」
田中くん「今日はどうしたんですか? あ、ファミレスに飯食いに来たんですね」
ジュリア「それはついでね。 この間あなたたちにお世話になったのにお礼がなにもできなかったじゃない」
佐藤くん「それでわざわざここまで来てくれたんですか?」
ジュリア「まあ、そういうことになるはね。 それにエリーもあなたたちにまた会いたがってたから──」
エリー「エリーは知ってるよ。 お兄さんたちはファミレス以外に憩いの場を見出だせないファミレス難民だってことをね──」
佐藤くん「(で、出た! まさかまたエンカウントすることになろうとは!)」
エリー「!」
エリー「エリーは知ってるよ お兄さんたちは同級生の女の子と恋仲になれないから、毎日ファミレスで現実逃避してるだけなんでしょう?」
エリー「本当なら放課後は女の子と一緒に過ごしたいけど、 惨めで憐れな子羊でいたくないお兄さんたちの最後の砦がこのファミレス──」
エリー「エリーはなんでも知ってるんだよ──」
田中くん「頼むからやめてくれ・・・」
佐藤くん「お願いだから死体蹴りはやめて・・・」
エリー「大丈夫。エリーは死体にも手を差し伸べれる天使だからね♪ エリーとたくさんお喋りしよう♪」
佐藤くん「(違う。天使なんかじゃない。悪魔だ──)」
ジュリア「そうそう、話を戻すけど── 実はワタシはマクロ・エージェンシーって企業で働いているの」
田中くん「それってたしか有名な大手企業ですよね!」
ジュリア「ええ、その通り。 だから、あなたたちさえよければ面接の練習をしてあげましょうか?」
ジュリア「あなたたち高校生にとってはまだ先の話になると思う。 でも、こういう経験もすごく有意義になるんじゃないかしら?」
佐藤くん「それはありがたいですけど・・・またずいぶんと唐突な話ですね・・・」
ジュリア「・・・・・・」
ジュリア「実はね。部長から採用面接に参加して欲しいって打診されちゃったんだけど・・・上手くできる自信がないから練習したくって──」
佐藤くん「なんだ。ジュリアさんも困ってたのか」
田中くん「企業の採用面接とかまだまだ先の話だけど、別に断る理由もないしな。 面白そうだしやってみるか!」
ジュリア「良かった♪ それじゃあさっそく──」
「あ、あの・・・私も混ぜてもらえませんか!?」
店員さん「は、はじめまして。私は斎藤春子〈さいとう はるこ〉と言います・・・」
佐藤くん「ファミレスの店員さん!」
店員さん「実は私・・・いま大学三年生なんですけど・・・半年後には就活はじめないといけなくて・・・」
店員さん「ジュリアさんの働いているマクロ・エージェンシーが第一志望なんです! だから、模擬面接をするなら私も混ぜてもらえると──」
ジュリア「ええ、もちろん構わないわ。 むしろうちの会社を志望してる子に参加してもらえる方がありがたいくらいだもの!」
店員さん「よ、良かった! それなら店長に許可だけとってくるので、すこし待っててくださいね!」
佐藤くん「でも企業の面接ってなにやればいいんだろう。全然わからん・・・」

〇病院の待合室
店員さん「うう・・・緊張するなあ・・・」
  ※背景と衣服はあくまでイメージです。ここは正真正銘ファミレスの中です
佐藤くん「大丈夫ですよ。落ち着いていきましょう。 習うより慣れよですよ!」
田中くん「そうですよ! 何事も堂々としていれば成せば成る! ってお袋がよく言ってますからね!」
店員さん「(こ、この子たち・・・本番じゃないと思って・・・)」
店員さん「(でも私にとっては本番も同然よ!)」
店員さん「(ジュリアさんの名刺見たけど、あのひとマーケティング部主任兼務、 第四営業部課長兼務、 人事部係長兼務だったもの!)」
店員さん「(どれだけ兼務してるのよ!? 子持ちのジュリアさんを親子もろとも殺す気か!? それだけ優秀ってことなんだろうけど)」
店員さん「(だからこそ手は抜けない! この面接の練習には私の人生がかかっている!)」
店員さん「ちなみに・・・あなたたちはマクロ・エージェンシーで働く志望動機とかってあったりするの?」
佐藤くん「まさか! 俺にいたってはなんの会社だかちんぷんかんぷんですよ!」
田中くん「俺もノリで参加してるだけなんで! まあ、なんとかなるっしょ!」
店員さん「(こ、こいつら・・・私の気も知らないで・・・)」
店員さん「ひと言言っておきますけどね! わたしはたとえ練習であったとしても今回の面接には死力をもって挑むつもりよ!」
店員さん「私は必ずマクロ・エージェンシーの社員になるために、将来プライドをもって働くために、今回のチャンスに賭けてるんだから──!」
佐藤くん「(店員さん・・・かなりのガチ勢だ・・・)」
田中くん「(将来がかかってるなら無理もないけど・・・俺たちは遊び半分で参加してるだけだしなぁ・・・)」
イマジナリー・エリー「大丈夫だよお姉さん。 エリーは知ってるんだ。 最後に笑うのは善人だってね」
店員さん「エリーちゃん! あなたも参加するの?」
イマジナリー・エリー「うん。 だって面白そうだからね。 ママが働いてる会社のことはよく知らないけどエリーはフェスティバルが大好きなんだよ!」
店員さん「(ぐっ。私以外は完全に遊び感覚だわ・・・でも、だとしてもなんとしてもやり遂げないと──)」

〇オーディション会場(物無し)
店員さん「失礼します!」
ジュリア「どうぞ」
店員さん「斎藤春子と申します! 本日はどうぞよろしくお願いします!」
田中くん「(店員さん・・・はりきってるな)」
佐藤くん「(練習ってわかってるけど、こっちまで緊張してきた・・・)」
ジュリア「堅苦しい挨拶やくだらない駆け引きはやめましょうか」
店員さん「え?」
ジュリア「我が社は完全実力主義よ。 実力無くして人権無し── これこそが我が社が最も遵守する理念」
ジュリア「まずはあなたがどれだけ我が社に利益をもたらす存在なのかテストさせてもらいましょうか──」
佐藤くん「ジュリアさんの働いてる会社ってブラック企業なんじゃ・・・」
ジュリア「そこ! 私語は慎みなさい!  シャラップ! つまみ出されたいの?」
佐藤くん「す、すいません・・・ (ジュリアさんのダークな一面を見た気がする・・・)」
ジュリア「(きゃあ! なんだかSMプレイの女王さまみたいで楽しいわ♪ こういうの一度やってみたかったのよね♪)」
店員さん「(まさかこれほどの圧迫面接だとは・・・ でもその実態は日本屈指のホワイト企業! このチャンスを逃すわけにはいかない!)」
ジュリア「さて、お遊びはここまでよ・・・さっそく本題にはいりましょうか・・・」
ジュリア「いまワタシが手に持っている天然水──。これを一万円でワタシに売ってみせて。タイムリミットは三分よ。GO!」
店員さん「(あのなんの変哲もない水を一万円で売らなきゃ駄目なの!? それも制限時間はわずか三分! いったいどうすれば!)」
田中くん「(ジュリアさんいい性格してるよ・・・ なんの事前準備もしていない志望者にこれはかなりの難題だ・・・)」
  斎藤春子はジュリアからペットボトルを受け取り、ラベルになにか特別なヒントが隠されているのではないかと探ることにした。
  だがそれは紛れもない判断ミス。
  
  求められているのはペットボトルの中身ではない。品質ではないのだ。

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