ファミレスでダベるだけ。

DonDokoDon

episode3: 男子高校生☓甲子園(脚本)

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〇ファミリーレストランの店内
田中くん「・・・・・・」
佐藤くん「・・・・・・」
田中くん「期末テストまでとうとう1週間を切っちまったな・・・」
佐藤くん「わかってるよ だからこうやって現実逃避してるんじゃないか・・・」
田中くん「最初はテスト勉強するって話じゃなかったっけ・・・」
佐藤くん「この話はもうやめよう・・・」
田中くん「だな・・・ うっ!」
佐藤くん「どうかしたか?」
田中くん「は、腹壊したかも・・・ドリングバーの飲み物飲みすぎたかもしれん・・・」
田中くん「と、とにかくいますぐトイレに・・・」
佐藤くん「田中はこう考えてるんだろ。いますぐトイレに駆け込めばなんとかなるって。 まだ希望があるってな」
佐藤くん「でも希望なんて無い。 もう終わったんだよ。俺たちはもう負けた。トイレに行ったところで結果は同じだよ」
佐藤くん「おれたちの夏は──もう終わったんだ!」
田中くん「ちくしょうちくしょう!  俺がホームランさえ打たれていなければっ! 後一歩で甲子園に出場できたのによお──っ」
田中くん「そうすればいまごろきっと───」

〇田舎の病院の病室
田中くん「イチゴ先輩・・・」
佐藤くん「ま、マネージャー・・・。 監督から入院したって聞いて慌てて来たんですけど・・・そんなにも悪いんですか?」
イマジナリー彼女「もう大袈裟だなあ・・・ただの夏風邪だよ・・・うっ、ケホッ!ケホッ!」
イマジナリー彼女「ご、ゴホッ、ゴホッゴホッゴホッ、グゥ! お、おええええ!!! かはっ!がはっ! ゴフゴフゴフゴフッ! ガアアアアッ!」
イマジナリー彼女「けえっ!」
「ちょっとあなたたちなにやってるの!」
田中くん「イチゴ先輩が突然吐血して・・・そ、それで」
「たいへんだわ! いますぐ先生を呼んではやく!」
イマジナリー彼女「お願い。わたしのことはもう忘れて。 君たちだけで甲子園に行って来て───」
田中くん「分かった。約束するよ。 おれたちがイチゴ先輩を甲子園に連れていく。 それに忘れてなんかやらねーよ。俺たちみんなで」
田中くん「甲子園に行くんだ。だよなイチゴ先輩!」
イマジナリー彼女「馬鹿っ────」
  イチゴ先輩は力尽きてベッドから床下へと崩れ落ちた。
  
  緊急搬送用のベットに運ばれて病室から消えてしまった──。
佐藤くん「マ、マネージャー・・・」

〇野外球場
田中くん「とうとうここまで来たな」
佐藤くん「ああ、マネージャーを必ず甲子園に連れて行こう──」
田中くん「この決勝を勝ち抜けば夢じゃない。だろ? 相棒──」
佐藤くん「ああ、おれたちは無敵のバッテリーだ。 負けてたまるかよ────!」

〇野外球場
田中くん「ちくしょうっ、ちくしょう! あとすこひだっだのによぉ! くそおっ! くそおおおおっ!」
佐藤くん「雨って──こんなにも痛かったんだな。 知らなかったよ」
  赤い風船が曇天の中で降り注ぐ雨に抗うようにして、飛び立つ姿をふたりは静観するしかなかった。
  そして、ふたりはたしかに見た。
  
  イチゴ先輩の笑顔の幻影を──。
  
  夏はまだ終わっていない。
  でも俺たちの夏は終わった。
  だって俺たちは彼女の笑顔を曇天の夏へと置き去りにしてしまったのだから。
  
  俺たちの甲子園はもう終わったんだ──。
  彼女の儚い笑顔と共に──。
  「いまなら分かる気がするんだ。バンクシーがどうして赤い風船と少女の絵を描いたのかが───」
  バンクシー。聞いたことがある。
  
  神出鬼没のアーティスト。現代社会を風刺するアートを数多く残し続けている生ける伝説だ。
  消え入りそうな佐藤の声を聞いた田中は、彼の言葉の真意がわからなかった。
  ただし、佐藤はもう二度と笑うことはないのだろう──そんな直感が田中の脳裏を駆け巡った。

〇田舎の病院の病室
イマジナリー彼女「いやー、流石のわたしも妊娠してただなんて思わなかったよ」
田中くん「(イチゴ先輩は別に不治の病に侵されていたわけじゃなかった。妊娠していたらしい。元気な男の子だそうだ)」
イマジナリー彼女「でも父親が誰かはまだわからないんだよねー。あっはっは!」
イマジナリー彼女「サードの杉本くんとはいつもゴム付けてしてたわけだし、やっぱりショートの赤井くんかな? でも生も一回だけだったし・・・」
イマジナリー彼女「だったら監督と部室でした時とか? でも、監督にそんな精力があるとは思えないし・・・そうなるとやっぱり・・・あ!」
イマジナリー彼女「いま、お腹を蹴った! もしかして──」
イマジナリー彼女「佐藤くん、こっちに来てくれないかな」
佐藤くん「あ、はい・・・」
「ドン! ドン! ドンドンドン!」
イマジナリー彼女「わあ、すごい勢いでお腹蹴ってるね。 佐藤くんもっとお腹を触って♥」
「ドンドンドン! ドンドンドン! ドンドンドンドンドンドンドン!」
イマジナリー彼女「わあ三三七拍子でお腹を蹴ってるよ! えへへ。よかった。やっぱりわたしのいちばん大好きな佐藤くんがパパだったんだね♥」

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