episode2: 男子高校生☓王道ファンタジー漫画(脚本)
〇ファミリーレストランの店内
佐藤くん「俺って漫画家の才能あると思わない? ほらこれは俺が書いたイラストなんだけど・・・」
田中くん「思わねえな。お前のフライドポテト、ちょっとだけもらってもいいか?」
佐藤くん「なんでだよおおおおお! ちょっとぐらいはあるって思うだろ!?」
佐藤くん「頼むからあるって言ってくれよ!」
佐藤くん「たとえば子どもがヘリコプターになりたいって言って竹とんぼケツに挿したら 「君はヘリコプターになれる!」って応援するだろ」
佐藤くん「それくらいの軽い感覚でいいからさあ!」
田中くん「どれだけ必死なんだよ! お前そんなにも漫画家になりたかったのか!?」
田中くん「あとたとえ話も意味わからねーよ。 ケツに竹とんぼ刺してヘリコプターになれるって信じてる奴がいたら病院にまず連れてくわ!」
田中くん「で、なんでそんなにも漫画家になりたいんだよ」
佐藤くん「だって漫画で稼げたら一生楽できそーじゃん♪」
田中くん「そ、そうか。 (動機が浅い・・・)」
田中くん「(あと漫画家って絶対に大変だと思うけど・・・とりあえず夢を壊すのはやめて、話を聞いてやるか・・・)」
佐藤くん「プランももう考えてあるんだ」
田中くん「(はじまった・・・)」
佐藤くん「原案はおれ。 原作は田中。イラストは田中。アシスタントの人材育成は・・・田中に一任する」
田中くん「ほぼ俺の漫画じゃねえかよ! ていうかアシスタントの労務管理くらいはてめえでやれや!」
佐藤くん「冗談だって。 俺は絵を描くの得意だから、イラストはもちろん俺の担当だ。 原案・原作はお前が担当だから。安心してくれ」
田中くん「安心できる要素どこ!? なんで俺が一緒に漫画家になる流れが出来上がってんだよ!」
佐藤くん「えええ!? やってくれねーのおおおおお!?」
田中くん「なんで驚いてんだ! 俺がいつ了承したよ!」
佐藤くん「ぐっ。 じゃあ、せめて・・・アドバイスくれないか。 俺は話考えるの苦手だし・・・」
田中くん「まあ・・・それぐらいなら・・・」
〇闇の要塞
佐藤くん「実は一作品だけ、大ざっぱだけど話を作ってみたんだ」
佐藤くん「ジャンルはファンタジー。勇者が魔王を打倒するために冒険をする王道もののストーリーだ」
田中くん「まあ・・・奇をてらった突飛由もない話よりはいいんじゃねえの」
佐藤くん「まず1話で勇者パーティーは魔王に壊滅させられる」
田中くん「おっ! いきなり仲間がみんなやられちまうわけか」
佐藤くん「追いつめられた魔王は卑劣にも勇者パーティーの女を人質にとって、形勢逆転を果たしたんだ」
田中くん「くっ、なんて卑怯な野郎なんだ!」
佐藤くん「それだけじゃない。 魔王は死にかけた勇者と勇者パーティーの無惨な骸を玉座から見下ろしながら、恐ろしい話をはじめるんだ」
〇謁見の間
佐藤くん「ふっふっふ。見事な戦いぶりでしたよ。勇者殿。 この500年の間でここまでわたしを追い詰めたのはあなたが初めてだった」
田中くん「おのれ魔王っ! この卑怯者があっ!」
佐藤くん「おっと。これ以上近づけば彼女がどうなると思いますか?」
イマジナリー彼女「お願い わたしのことはいいの。 魔王を倒して・・・・・・」
田中くん「だ、駄目だ・・・ 俺には・・・できない 大切な仲間を・・・恋人のお前を・・・俺には犠牲にできない」
イマジナリー彼女「勇者くん・・・」
佐藤くん「ならば聖剣を捨てよ その誓いが真実なのであれば・・・貴様の聖剣をこちらへと投げて渡すがいい」
田中くん「ちくしょおおおおっ!」
──からんからん、と。
投げ出された聖剣は音を立てて魔王の足下へと転がっていった。
希望は失墜し、新たなる絶望が産声をあげた。
──それは魔王が聖剣を砕いた音。
魔王は勇者の剣を容赦なく踏み砕いた
高らかに笑う魔王の声が
魔王城の玉座の間に響き渡っていた──。
──絶望せよ。
魔王は歌うように告げる。
失望せよ。
魔王は夜を貪るように呟いた。
希望を失ったこの世界は暗黒に呑まれるだろう。
佐藤くん「さあ、はじめようじゃないか。 ほんとうの世界〈絶望〉はここからはじまるんだ。 ふっふっふ、あっはっはっはあああ!」
田中くん「許してくれ・・・みんな・・・俺が弱いせいで・・・俺のせいで・・・」
佐藤くん「さて。 そろそろ幕引きだな。 では今宵の美しいディーバに褒美をとらせるとしようか」
田中くん「な、なんの話だ・・・ お前はいったいなにを言って・・・」
イマジナリー彼女「ありがたき幸せ。 陛下からお誉めの言葉を賜り、今生の幸福の極みにございます」
田中くん「どういうことだ・・・ ま、まさか俺たちを裏切ったのか・・・」
田中くん「答えろ! なんとか言ってくれ!」
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