第101話 現れた別未来(アナザー・オリジン)(脚本)
〇地下室
2021年 オレゴン州 ポートランド 国立霊長類研究センター A棟 一時保管室
セルゲイ・ライノヴィッチ「仲間とお前らを安全に帰すかわりに斎王幽羅の身柄を寄越せ」
この発言に当然キング達は反発したが、シャルルは少し考えた後セルゲイに話し始めた
シャルル「···そっちに利点がないから警戒するべきなのに何故か『YES』と言いたくなる···それも無条件に」
シャルル「精神支配とも違う、思考に干渉してくるこの感じ···でも冷静に考えればわかることがある」
そう言ってシャルルは目の前の柵をいとも容易く切断し、セルゲイの前にあっさり立って見せた
シャルル「岩すら切断できる私(デュランダル)が、現代の檻ごとき斬れないわけない」
シャルル「能力を過信して交渉をもちかけたんだろうけど、その過信が命取り」
シャルル「どうする?こうなったら戦うしかないんじゃない?『疑念的恋』」
セルゲイ・ライノヴィッチ「運命は俺に試練を与え俺は尽く試練に屈服しまくってきた。だがな···どんな状況でも俺は決して死ななかった」
セルゲイ・ライノヴィッチ「だから言える。俺はこの状況ですら『死なない』ってな」
シャルルはそれを聞き終える前に剣を首に向かって一直線に薙ぐ。だが当たる僅か数センチの所で
量産型アナザーのレーザービームがシャルルの手を貫き、シャルルはその場で手を抑える。
セルゲイ・ライノヴィッチ「賭けは俺の勝ちだな、じゃあ忠告通り俺は安全圏から交渉させてもらう」
そう言ってセルゲイはゆっくりアナザー達のいる方へ歩を進める。アナザーはセルゲイを守るように取り囲んだ
エンチャント魔導法士「大丈夫か?これくらいの怪我なら···治してやるからな」
セルゲイ・ライノヴィッチ「命の魔術師···流石だな。同じ性質であれば作り替えることが可能とは」
セルゲイ・ライノヴィッチ「冠位十階第五位なだけある。知識欲だけで魔術法皇のみが会得できる『冠位魔術』も自力で会得したくらいだしな」
エンチャント魔導法士「貴様···何処でそれを···」
セルゲイ・ライノヴィッチ「さぁ?まぁそれよりあんたからも頼んでくれよ『斎王幽羅を引き渡せ』ってさ」
エンチャント魔導法士「ワシがそれをよしとするように見えるか?」
セルゲイ・ライノヴィッチ「見えるね。『アンナ・バージェスに会える』って言えば···揺らぐだろ?」
エンチャントはその言葉に動揺を見せた。しかし···それでもエンチャントは『拒絶』を選んだ
セルゲイ・ライノヴィッチ「ふーん···そっちヤクザと変化武器はともかく、アンタなら利口な判断してくれると思ったんだがな」
セルゲイ・ライノヴィッチ「『思い込みが強い力になるぜ?』エンチャント魔導法士」
エンチャント魔導法士「かもしれんな。じゃあワシら今『お前とアナザー共を倒せる』って思い込んでみるかな」
すると凪園とキングがエンチャントの前に立ち、構えを取る。
凪園無頼「思い込まなくてもよゆーじゃね?」
キング「でも油断すんなよ?アナザー共は前と同じで硬ェはずだ、ヤバくなったら···俺の後ろにいろ」
凪園無頼「おっけー!じゃあ···始めっか!」
〇開発施設の廊下
国立霊長類研究センター B棟 連絡通路付近
斎王幽羅「何とか来れたけどヤバいね··· ··· ···アナザーだらけだ···」
フェード「目視できるだけで6体、それに加え武装した警備員が3人···どうする?」
すると鸞はフェードと斎王隠れるよう指示を出す。そして鸞は大きな声で『侵入者だ!』と言うと
鸞「『川蝉の術』」
警備員「クソッ···どこいった?探せ!アナザー共、2体だけ残して全員来い!」
鸞「··· ··· ···引き剥がしは成功だな。さて···あとは2体のアナザーをどうするか···」
斎王幽羅「一体だけなら俺の能力でバラバラにできるけど、2体となると···あ。うーん···仕方ないかな···」
そう言うと斎王は空気と一体化しその場から消える。しばらくするとアナザーは突然倒れその場に斎王が再出現し2人に手招きをする
鸞「斎王···お前何した?」
斎王幽羅「あんまやりたくなかったけど···アナザーの周りの空気流動『制限』したんだ」
鸞「お前それって··· ··· ···」
斎王幽羅「『酸素濃度が低くなるよ』。アナザー相手だからこそ使える技だ···本来なら··· ··· ···」
フェード「一発で気絶。そのままなら5分もせず死ぬな」
フェード「それよりもだ··· ··· ···早く行かないか?いつ戻ってくるか分からんしな」
斎王幽羅「そ、そうだね···!早く行こう!」
〇研究施設の廊下(曲がり角)
国立霊長類研究センター A棟 廊下
アナザー「侵入者発見、排除開始」
鬼月冷羅「『クリスタルダイヤ』」
アナザーが放つレーザービームは冷羅の中で反射を続け『宝石』の様な輝きを見せながら、やがてアナザーに向けて排出された
警備員「クソッ···どうなってる!なんでアナザーのレーザービームが効かねぇ!」
鬼月冷羅「でかい声出すな···『死ぬぞ?お前』」
警備員「ハァ!?何言って··· ··· ···がっ···息が··· ··· ···」
鬼月冷羅「やれやれ···『空気比重』って知らないのかこいつ···」
冷えた空気は『重い』その上空気は上から下へ流れる。山頂の空気が薄いのと同じ理由である
エベレストの山頂では平地の2/3の空気量となる。そんな場所で騒げば当然酸素不足で倒れてしまう
そして下には冷たい空気が流れ、やがて警備員は呼吸を浅くしていく。そんな冷羅の前に
『奴が現れた』
アナザー・オリジン「よう、何時ぶりだ?冷羅」
鬼月冷羅「···お前とは知り合いじゃない。失せろ『偽物』」
アナザー・オリジン「そうイジワルしないでくれ冷羅···少しくらい話しようぜ?あ、それとも捕虜が気になるか?解放するぜ?」
踵を返し歩を進めるアナザー・オリジンの足を冷羅は瞬時に凍らせたが···
アナザー・オリジン「喧嘩してェのか?焦んな焦んな!捕虜解放が先だろ?」
冷羅の氷を『足の力のみ』で砕き、そう言いながら歩を進めた
〇刑務所の牢屋
A棟 一時拘留室
ルカ神父「ボス···!それに···アナザー・オリジン!?え···どういう···」
鬼月冷羅「おい、他はどうした」
ルカ神父「すみませんボス···ジャン神父はこの場で殺害されました。ステファノ神父は別の場所に移され···」
鬼月冷羅「ステファノ神父は既に確保済みだ。シャルルが今救出してる」
ルカ神父「そ、そうですか···それよりですね···なぜアナザー・オリジンが?」
そう言うとアナザー・オリジンは檻を難なくへし曲げて檻内に侵入すると
ルカ神父「こ···こいつ···1発で···たった1発のパンチで壁をッ!!?」
アナザー・オリジン「このまま真っ直ぐ行けば外だ、頑張れよ!」
ルカ神父「え···あ···ボス···!ボスも一緒に···!」
鬼月冷羅「行け。俺は元々こいつが目的だ」
ルカ神父はそう言う冷羅を見つめながら、ゆっくり壁の方に行き、外へ走り去った
鬼月冷羅「さて···目的は何だ?まさか喧嘩じゃないよな?」
アナザー・オリジン「喧嘩以外目的あるか?あ、ならそうだな···なんか知りたい事あるか?勝ったらご褒美で教えてやるよ」
冷羅はその言葉に思考するまもなく返した
鬼月冷羅「『WoOSの目的』」
To Be Continued··· ··· ···