チヲビザクラ

りをか

俺たちの決心(脚本)

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〇桜並木
  翌日、優奈は『チヲビザグラ』を訪れた。
優奈「久しぶりにここへ来たけど、やっぱりこの雰囲気だけは馴れないなぁ・・・」
  優奈はボソッと呟いた。
優奈「あっ、祐介」
  目線の先には、祐介が何かをしている。
優奈「ちょっと、こんな所で何してるの?」
祐介「何って、見りゃ分かるだろ?草むしりしてんだよ」
優奈「草むしり?一体、何の為に・・・?」
橋本「チヲビザグラの為ですよ」
優奈「橋本さんまで、どうしたんですか?」
祐介「俺が誘ったんだ」
優奈「誘ったって・・・大体、橋本さんはこの桜には関わりたくないって前に話してたじゃない」
橋本「状況が変わったんですよ」
優奈「・・・変わった?祐介、どういう事なのか説明して!」
  祐介は、優奈にチヲビザグラの事情を話した。
優奈「なるほど、そういう事だったのね・・・」
祐介「あぁ、理花がこの事を教えていなかったら、この桜はずっとこのままだったのかもしれないな・・・」
  三人は、チヲビザグラを見上げた。
優奈「祐介、私も手伝うわ」
祐介「ほんとか?優奈」
優奈「うん。私ね、さっきの話を聞いて、この桜の為に何かしたいって気持ちになった」
優奈「だから、協力させて」
祐介「ありがとう」
  そして三人は、日が暮れるまでチヲビザグラの周辺をきれいにした。

〇桜並木
  数ヵ月後──
  あれほど荒んでいたチヲビザグラの周辺は、三人のおかげで見違える程、綺麗になっていた。

〇白
  そして、二度目の春が訪れる。

〇桜並木
優奈「なんか、一年前と全く違うよね・・・」
祐介「本当だよ。頑張った甲斐があったよな・・・」
優奈「あのね、実は祐介に見せたいものがあるの」
祐介「えっ、何?」
  優奈は、大きな紙袋からある物を取り出した。
優奈「これね──私があの二人をイメージして描いたの・・・」
  優奈が取り出したのは、水彩画で描かれた「香子」と「宗政」の絵だった。
祐介「凄いよ、優奈。さすが絵を描くのが趣味なだけあるな」
優奈「でしょ?それから、理花が教えてくれたコレもね」
祐介「うん。完璧だよ」
祐介「俺たちの想いが、香子と宗政に伝わってるといいなぁ・・・」
優奈「そうだね・・・」
祐介「優奈、折角だからさ、この絵をこの桜の前で一緒に撮らないか?」
優奈「いいけど、大丈夫かな・・・ちょっと不安だよ・・・」
祐介「大丈夫だよ。だって俺たちはこの桜を汚したんじゃない。キレイにしたんだよ?」
優奈「だよね・・・大丈夫だよね」
優奈「うん。記念に撮影しよう」
  二人は、桜の木に絵を立て掛け写真を撮った。
  その時──

〇桜並木
「うわっ」
  突然強い風が吹き、桜吹雪が二人を襲った。
「優奈、大丈夫か?」
「うん。大丈夫」
  体勢を戻し、二人は桜に目を向けた。

〇桜並木
祐介「あっ...」
  そこには、真っ赤に色を付けた桜がピンク色に色を変えていた。
優奈「これって・・・」
優奈「祐介、この桜は元々ピンクだったんじゃないかな。 それが、何らかの形で真っ赤になってしまったとか...」
祐介「そうかもしんないな・・・」
「おや?あなた達も来てたんですね」
祐介「橋本さん、どうしてここに?」
橋本「今日は、これを付け替えたくてね・・・」
祐介「橋本さん・・・」
橋本「あれ?花びらの色が変わってる」
祐介「橋本さん、俺たち思ったんですけど、この桜は元々この色だったんじゃないでしょうか」
祐介「それが何らかの原因で、あの色になってしまった」
橋本「確かに、そうかもしれませんね」
橋本「けど、この桜が本当の色に染まって良かったです。もしかしたら、お二人の思いがこの桜に伝わったのかもしれませんね」
祐介「はい、だとしたら嬉しいです」
  その後、橋本は用件を済ませ帰って行った。

〇桜並木
優奈「それにしても、本当に綺麗だね。 祐介・・・」
祐介「うん。来年もまた見れるといいな・・・」
「香月夜 君とながめた 春の夜 月に照らされ 我が恋想う」
祐介「優奈、俺、前から優奈に伝えたいことがあったんだ・・・」
優奈「あのね、実は私もなの。 ずっと祐介に言いたいことがあって・・・」
祐介「じゃあ、優奈から先にいいよ」
優奈「先には言い出したのは祐介でしょ? 祐介から言って・・・」
祐介「じゃあ、一回しか言わないから、よく聞けよ?」
優奈「うん・・・」
  祐介は、軽く深呼吸した。
「俺、ずっと前から優奈のことが・・・」

〇桜並木(提灯あり)
  その後『チヲビザグラ』は『香月夜』と名が変わり、辺りには公園や広場が設置された。
  また、優奈が描いた水彩画と宗政が詠んだ俳句も飾られる様になり、橋本、祐介、優奈達は、市から感謝状を貰った。

〇桜並木(提灯あり)
  一年後

〇桜並木(提灯あり)
優奈「今年も綺麗に咲いてるね。 祐介・・・」
祐介「うん。 変わらず綺麗に咲いてる・・・」
優奈「祐介・・・ 来年もそのまた来年もまた一緒に見に来ようね・・・」
祐介「あぁ、これから先もずっと・・・」
  桜、それは春の訪れを感じさせるものでもあり、時に出会いと別れを思わせる花でもある。
  あなたは今年、誰と桜を見に行きますか?
  『チヲビザグラ』完

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