秘められた想い(脚本)
〇田舎の総合病院
一週間後、祐介は一人で理花の病院を訪れる。
〇田舎の病院の病室
理花「あれ?今日は祐介一人? 珍しいね」
祐介「あぁ、優奈は今日バイトで来れないから、俺だけ来たんだ。 どう?治療頑張ってる?」
理花「うん。敬太がくれたこのネックレス付けて、毎日頑張ってるよ。 ご飯もね、食べれるようになってきたの」
祐介「そっか。それは良かったな」
理花「それより、今日はどうしたの?」
祐介「うん。理花の様子もだけど、ちょっと聞きたいことあってさ」
理花「聞きたいこと?」
祐介「理花、何であの時チヲビザグラの前で倒れてたんだ・・・?」
理花「・・・それが、自分でもよく分からないの・・・」
理花「ただ、何かを呟きながらあの場所へ来たことだけは覚えてる・・・」
祐介「もしかして・・・俳句か?」
理花「うん、それよ。ずっとそれが頭から離れなくて気が狂いそうになったわ・・・・・・」
祐介「それが、理花の精神状態を悪くさせてたのか」
祐介「教えてくれてありがとう。今日はこれで帰るよ。また、見舞いに来る」
祐介は病院を後にした。
〇講義室
優奈「祐介、理花の様子はどうだった?」
祐介「あぁ、だいぶ顔色も良くなってたよ。治療も積極的に受けてるみたいだし、飯もちゃんと食ってるって」
優奈「なら、よかったわ」
優奈「そうだ。今度田辺先生も誘ってお見舞いに行かない?先生も会いたいって言ってたし」
祐介「うん。そうしよう」
〇田舎の総合病院
数日後
〇田舎の病院の病室
田辺「佐藤さん、中々会いに行けずごめんなさいね」
理花「いえ、私の方こそ色々と迷惑掛けてすみませんでした」
田辺「大丈夫よ。とにかく今は、身体を治すことだけを考えなくちゃね」
理花「はい」
優奈「理花だいぶ良くなってよかった。これで、私達も一安心だね」
祐介「うん、そうだな・・・」
〇電車の座席
田辺と別れ、二人は電車の中で会話をする。
優奈「祐介、どうしたの?さっきから浮かない顔して・・・」
祐介「実はさ──この間、理花に何であの場所に居たのか聞いたんだ・・・」
優奈「そうなの?それで理花は何て?」
祐介「それが、自分でもよく分からないって。ただ、あの俳句を呟きながらあの場所に来たことだけは覚えてるみたいなんだ」
優奈「つまり、理花はあの俳句によってあの場所へ誘われたってこと?」
祐介「・・・そう考えていいのかもしれない」
〇桜並木
その日の夜、祐介は一人、『チヲビザグラ』の並木道を訪れた。
「・・・この桜が、本当の色に染まることは無いのか・・・?」
祐介はチヲビザグラの幹に触れ、そう呟いた。
〇田舎の病院の廊下
数日後、二人は理花の病室へ向かった。
〇田舎の病院の病室
理花「ごめんね二人とも。急に呼び出したりして」
優奈「いいよ。それよりどうしたの?」
理花「実はね、近々退院出来そうなの」
優奈「そうなの?良かったじゃん。おめでとう!! 理花、よく頑張ったね」
理花「うん、ありがとう」
理花「本当に二人にはたっくさん心配掛けたよね。ほんっとにごめんね・・・」
優奈「大丈夫だよ。気にしないで」
祐介「退院する日が決まったら教えて。迎えに行くから」
祐介「その後、理花の快気祝いでもしよう」
優奈「賛成!!理花。退院したら、何食べたい?」
理花「う~ん、何だろ。やっぱ、焼き肉かお寿司かな」
〇開けた交差点
優奈「理花、顔色も良くなって、おまけに笑顔も増えて嬉しいね」
祐介「あぁ、そうだな。退院が待ち遠しいよ」
優奈「そうだ祐介、快気祝いのついでに理花の誕生日会も一緒にしない?もうすぐでしょ?」
祐介「それ、ナイスアイデアだな」
優奈「でしょ?じゃあさ、これから誕生日プレゼント買いに行かない?」
〇大きいデパート
二人はデパートを訪れ、理花の誕生日プレゼントを選んでいた。
〇アパレルショップ
優奈「うーん。どれにしようかな」
優奈は一生懸命理花に似合う洋服を探していた。
店員「お客様、何かお探しですか?」
優奈「えっと、実はもうすぐ友達が誕生日なんです。なので、友人に似合う服を探してて・・・」
店員「そうでしたか。そのご友人は普段どの様な服を着ることが多いですか?例えば色合いとか」
優奈「そうですね。明るい色の服を着たりしてます」
店員「なら、こちらはどうでしょう。今、当店で売れてる人気商品なんです。これからの季節にピッタリだと思いますよ」
優奈「かわいい!!じゃあ、これにしようかな」
店員「ありがとうございます。早速、ラッピングしますね」
〇線路沿いの道
優奈「理花、喜んでくれるかなぁ。この服」
祐介「店の人が選んでくれたんだから大丈夫だよ」
優奈「だよね。人気商品だって言ってたし・・・」
〇田舎の総合病院
退院当日──
〇田舎の病院の病室
「理花!!退院おめでとう!!」
二人は理花に花束を手渡す。
理花「優奈、祐介。本当に本当にありがとう」
理花「今までごめんね。心配ばっかさせて・・・」
優奈「もういいから。それと理花にもう一つプレゼントあるんだぁ」
優奈は、理花に誕生日プレゼントを渡した
優奈「理花、開けてみて」
理花は優奈に言われた通り、プレゼントを開ける。
理花「これ・・・私がスマホで調べてた服。いいなぁって思ってたんだよね」
理花「けど、何で優奈がこの事知ってるの?」
優奈「実はね、店員さんが選んでくれたの。私は洋服とか分からないから。それ、流行ってるみたいだね」
理花「そーなの。優奈、ありがと!!」
祐介「よしっ、じゃあそろそろ行くか」
理花「あっ、待って。ちょっと祐介に話したいことがあるの」
祐介「俺に話したいこと?」
理花「・・・うん」
祐介「優奈、悪いけど先に行っててくれるか?」
優奈「うん、分かった・・・」
優奈は理花の荷物を持ち、先に病室を去って行った。
「・・・で?何だよ。話したい事って」
理花「あのさ、チヲビザグラのことなんだけど・・・」
祐介「チヲビザグラがどうかしたのか?」
理花「あのさ、前に私が俳句みたいなのを呟いてたって言ってたじゃない?」
祐介「ああ。それがどうしたんだよ」
理花「ここ最近ね、また別の俳句が頭から離れないの・・・」
祐介「別の・・・俳句?それはどんな内容なんだ?」
理花「はっきりとは覚えてないんだけど・・・」
理花は、祐介に俳句の内容を伝えた。
祐介「それ、本当なのか・・・?」
理花「うん。もしかしたらあの桜は”チヲビザグラ”じゃないのかもと思って・・・」
祐介「理花、大事なこと教えてくれてありがと」
〇桜並木
祐介は、理花と優奈と別れた後、再び『チヲビザグラ』の元を訪れた──。
「まさか・・・この桜に、そんな秘密があったなんて・・・」
祐介はチヲビザグラを見上げ呟く。
そして、ある人に電話を掛けた。
「もしもし・・・お久しぶりです」
〇明るいリビング
数日後、理花の快気祝いと誕生日会が行われた。
理花「二人とも、今日はありがとう。こんな盛大に祝ってくれて嬉しかった」
理花「入院も悪くないね。またしちゃおっかな」
祐介「何バカなこと言ってんだよ」
優奈「そうだよ。中には退院したくても出来ない人だっているんだからね?」
理花「もう、冗談で言っただけじゃん。二人は、冗談が通じないなぁ」
優奈「だって、理花がそんなこと言うから」
理花「はいはい、私が悪かったですよ」
理花は、ふてくされて言った。
優奈「じゃあ、そろそろ解散しよっか。お腹もいっぱいになったし」
理花「確かに。私、食べ過ぎて眠たくなってきた」
祐介「その前に、今日はチヲビザグラの事について話しておきたいことがあるんだ」
優奈「ちょっと祐介。もうあの桜のことなんていいじゃない。折角理花だって元気になったのに。理花だって、思い出したくないよね?」
理花は下を向いた。
祐介「いや、あの桜はどうでもいいものにしちゃいけないんだ・・・」
優奈「・・・一体、どういう事なの?」
祐介「優奈、明日チヲビザグラまで来てくれないか?」
祐介「理花は来なくていい。あそこに行くと、 余計辛くなるだろ?」
理花「うっ、うん・・・」
優奈「要するに、ここでは話せない事なのね」
優奈「分かった。明日向かうわ・・・」