未熟な魂(脚本)
〇大広間
蝶ケ夜胡桃「珍しいわよね。式場での結婚式じゃなくて大広間でのパーティだなんて」
アレグラット「あぁ。でもここは昔に神殿として使われていたから、特に問題は無いらしい。むしろ王族は積極的に使うそうだ」
アレグラット「それにしても、こんなに良い袴借りてよかったのか?」
蝶ケ夜胡桃「全然いいよ。あとそれに似たデザインの袴を来年の私たちの結婚の時に来て欲しいって、お父様が言っていたわ」
アレグラット「・・・ってことはこれ、蝶々夜家が新しく作ってくれたものか。こっちも聞いてなかったから驚いた」
蝶ケ夜胡桃「本当はサプライズで渡すつもりだったんだけれどね。我が家に婿入りするアルが私と結婚式に参列するなら、袴が必要だと思ったの」
アレグラット「なるほど、確かに一理ある。だがこんなにいい物を貰って申し訳ないな・・・」
蝶ケ夜胡桃「・・・ええっと、代わりと言ってはなんだけどさ」
蝶ケ夜胡桃「・・・っ今度!簪を私に買って欲しいの!」
アレグラット「簪って、そっちの地方の女性が髪を結く時に使うやつだよな?それだけでいいのか?」
蝶ケ夜胡桃「・・・うん。アルが選んでくれる簪なら、なんでも嬉しい」
アレグラット「分かった。ならこの結婚式が終わって一段落したらそっちに行くよ」
蝶ケ夜胡桃「ありがとう!」
蝶ケ夜胡桃(あぁ、馬鹿だなあ私。アルが本当にそんなこと思ってる人はローゼなのに)
蝶ケ夜胡桃「っう、頭が・・・」
アレグラット「どうした、頭痛か?」
蝶ケ夜胡桃「っ、ごめん。私の部屋に連れて行ってほしいな・・・」
アレグラット「わかった。少し揺れるが、耐えてくれ」
蝶ケ夜胡桃(あれ、私アルにお姫様抱っこされて・・・嬉しい、嬉しいのに・・・)
蝶ケ夜胡桃(もう、ダメ・・・)
〇城の客室
アレグラット「まだ痛むか」
蝶ケ夜胡桃「ごめん、ごめんね・・・せっかくの2人の結婚式なのに」
アレグラット「気にしなくていい。あの2人ならきっとわかってくれる。医者を呼んでくるから、それまで少し待っててくれ」
立とうとしたその時、ふいに袖が掴まれた
〇大広間
ダルメリアス(あのお2人、一体どこにいるんだろう。もう式が始まってしまうのに)
ミシェルガ「というかなんなのだこれはっ・・・!なぜお前のような子供の護衛で貴族のフリなどせねばならないのだ!」
ダルメリアス「あはは・・・僕が婚約してない状態で同年代の女の子連れていくと、噂になるから」
ダルメリアス「でもそれ、凄く似合ってるよ。本当に綺麗」
ミシェルガ「王族ならもう少しまともなお世辞を言えるようになれ。ダルメリヤスよ」
ダルメリアス「お気に召さなかったか?すまないね。以後気をつけよう」
ダルメリアス「でも綺麗なのは本当だよ。何も知らない人からすれば、君が悪魔だなんて思わないだろうね」
ミシェルガ「全く・・・そういえばアルと胡桃という娘は広間を出ていたぞ。アルが娘を抱えていた」
ダルメリアス「もしかして胡桃さん、体調を崩してしまったんじゃ・・・!」
ミシェルガ「落ち着け、というかそろそろ主役2人が来るぞ。様子を見に行く暇などない」
ダルメリアス「そう、だね。僕も僕の役目を果たさなければならない。ありがとう」
ミシェルガ「礼を言う暇があるならしゃんとしろ。・・・来るぞ」
ノンヴィティエス「紳士淑女の皆様方。今宵は僕たちの結婚式を祝いに足をお運びいただきまして、まことにありがとうございます」
ノンヴィティエス「色々話すことがあると思うんですけど・・・皆様にまず、お伝えしたいことがあります」
シャイローゼ「・・・?」
〇城の客室
アレグラット「・・・どうした胡桃」
蝶ケ夜胡桃「・・・」
アレグラット「俺では、その痛みを和らげさせることができない。不安で寂しいのかもしれないが、直ぐに戻るから・・・」
蝶ケ夜胡桃「あのね、私、アルがローゼのことを好きなの、知ってるのよ」
アレグラット「・・・」
突然の事で言葉を失ってしまった。でも、婚約者である胡桃がその事を言うのは・・・
蝶ケ夜胡桃「でも私、あなたの事が好き。大好きよ。ずっと一緒にいたい。あなたを隣で支えたい」
アレグラット「突然、どうしたんだ・・・」
それだけ言い終わると胡桃は泣きながら俺を弱々しく突き飛ばす
蝶ケ夜胡桃「──だからお願い、私から逃げて」
〇大広間
ノンヴィティエス「僕は桃の悪魔ミルェーツです。ここにいる人たちには申し訳ありませんが、今からシャイローゼさんをさらいます」
シャイローゼ「・・・え?」
ミシェルガ「伏せろ!!!」
〇城の客室
頭が追いつく前に床から生えた植物が己の腹部を貫き、大量の血が吹き出すのを目視した
アレグラット「っは、胡桃・・・?なんで、」
胡桃?「・・・」
〇大広間
ミルェーツ「おや、君はミシェルガか。久しいね。そのドレス似合ってるよ」
ミシェルガ「うるさいぞミルェーツ。こっちは貴様の顔を見るだけで神経が逆撫でされてうっとおしいんじゃ」
ミルェーツ「ふふ、怖い怖い。それなら僕は花嫁だけさらってお暇しようかな」
ミシェルガ「貴様、よもやワシが簡単に逃がすとでも?あの日の恨みを忘れたとでも思っているのか」
ミルェーツ「んー・・・あの日のことはよくわからないけど、とりあいず後のことは”彼”に任せるから。じゃあね」
シャイローゼ「えっ?!ちょっと降ろして・・・」
ミシェルガ「くそ、油断した・・・あの日のことまで忘れているとはますます許せんな」
ダルメリアス「ミシェルガ様!これは一体・・・」
ミシェルガ「ダルメリヤス!」
ミシェルガ「・・・はあ」
ミシェルガ「面倒なやつが面倒事を起こし、更に面倒なやつを連れてきた」
ミシェルガ「のう、アレグラットの父とやらよ」
アレグラットの父「・・・」
〇城の客室
アレグラット「胡桃、お前・・・操られてるのか」
アレグラット「ヒールIV」
アレグラット「なるほど、あっちでミルェーツが暴れているという訳だな・・・クソッ!」
アレグラット「胡桃、起きろ!お前はそれでいいのか!簪、一緒に買いに行くんじゃなかったのか!」
アレグラット「バリアIV!」
アレグラット「物は試しだな・・・「エルデー」!」
胡桃?「・・・」
アレグラット「これは魔法でも呪術でもないのか・・・それともエルデーでは遠く及ばないほどの・・・」
アレグラット「胡桃はもう元には戻れない・・・」
アレグラット「──殺すしか、無いのか?」
胡桃?「メル・マーガⅤ」
アレグラット「っぐ、あぁぁっ・・・!」
アレグラット(魔力が吸われていく。考える暇すら与えてくれないのか)
アレグラット(このまま何もしないなら確実に負けて、胡桃があいつに操られたままだ・・・それなら、俺のすべき選択は・・・もう)
アレグラット「1つしか、無いじゃないか」
〇大広間
ミシェルガ「おいダルメリヤス、今ここに精鋭兵を集めろ。3人だ」
ダルメリアス「4人だけで、こいつに勝てるの?」
ミシェルガ「弱いやつが群れていても邪魔なだけだ。そいつらはここにいる貴族の救護にでも使っとけ」
ミシェルガ「そしておまえはおまえの国にこの事を伝えろ。そして街と怪我人たちを守れ。これくらいはできるな?」
ダルメリアス「あぁ、それまで持ちこたえてくれ!」
ミシェルガ「さて、暫くは私だけで遊んでやろう。なに、少し剣や魔法で戯れるだけだ」
ミシェルガ「それともなんだ、悪魔に魂を盗られた癖に怖気付いているのか?」
ミシェルガ「それで良い。一撃で倒れてくれるなよ!」
〇洋館の階段
ダルメリアス(早く、早く強い人たちを呼んでこなきゃ・・・でも、誰を?)
「ダルメリヤス様?!」
アンダート「大丈夫ですか、大広間で爆発があったようですがお怪我はありませんか?!」
ダルメリアス「僕は大丈夫です!それよりも広間で大変なことが・・・」
ダルメリアス「──」
アンダート「・・・なるほど、事情はわかりました」
アンダート「琉翔さん、リヴェスさん!私と一緒に来てちょうだい!」
「了解です!」
アンダート「ダルメリヤス様は、この事を後ろにいる騎士団長達に伝えてきてください。そしたら貴族達の保護を始められるので」
ダルメリアス「わかりました。ご武運を!」
アンダート「というか、こんな時にアルはどこにいるのよ・・・!」
リヴェス「今考えている暇はありません。それに彼ならきっと無事ですよ」
琉翔「そうだな、あいつは頑丈だし、何より胡桃様と一緒だ。守る相手がいれば、あいつは死なない」
アンダート「・・・そうね、ありがとう。急ぎましょう」