S2 12話 #37(脚本)
〇黒
〇荒廃した教会
「うおおおお!」
〇黒
〇海辺
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「姉様!」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「何を作っているのですか?」
リアリナ・シャルルド・グレイ(幼少期)「お城よ!」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「僕も手伝ってもいいですか?」
リアリナ・シャルルド・グレイ(幼少期)「もちろんよ!」
リアリナ・シャルルド・グレイ(幼少期)「私が王妃になるお城だから立派に作ってね!」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「はい! 姉様のために、 国一番の城を造って見せましょう!」
リアリナ・シャルルド・グレイ(幼少期)「じゃあ、王妃はここね」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「国王はどこです?」
リアリナ・シャルルド・グレイ(幼少期)「国王は王妃の隣ね」
リアリナ・シャルルド・グレイ(幼少期)「で、リュカは・・・ここかしら?」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「僕は、姉様の隣じゃないのですか?」
リアリナ・シャルルド・グレイ(幼少期)「リュカは弟だから王妃と結婚できないわ」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「!!」
リアリナ・シャルルド・グレイ(幼少期)「でも、リュカのこと大好きだから特別に王様にしてあげる」
リアリナ・シャルルド・グレイ(幼少期)「王妃と王様は、この大きな城で永遠に仲睦まじく暮らしたのでした」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「姉様と一生・・・」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「ふふふっ。 姉様、ほっぺに砂がついてますよ」
リアリナ・シャルルド・グレイ(幼少期)「ううー。両手砂だらけなの。 とって、とって!!」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「仕方がないですね」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「ほら。これで綺麗です」
リアリナ・シャルルド・グレイ(幼少期)「ありがとう! リュカ!」
〇謁見の間
スタンスラス・ブラン・エレオノール「スタンだ。 リアリナ嬢。そなたが私の婚約者か」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「末永い付き合いとなる。よろしく頼む」
リアリナ・シャルルド・グレイ(幼少期)「はい。よろしくお願いいたします。 スタン殿下」
王妃「スタン王太子はゆくゆく国王となる身、リアリナ嬢には国王を支える王妃となるため」
王妃「貴族教育だけでなく、次期王妃としての指導をいたします」
王妃「しっかり勉学に励むのです。リアリナ」
〇立派な洋館
〇華やかな裏庭
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「今日もリアリナ姉様は、殿下と一緒ですか?」
テオフィル・ベフトン「はい。リアリナ様は、国を支えるため、たくさん勉強をしなくてはなりませんから」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「僕が姉様の助けになれないでしょうか」
テオフィル・ベフトン「そうですね。リアリナ様は魔法が苦手でいらっしゃいますから、」
テオフィル・ベフトン「リュカ様が素晴らしい大魔道士となられたら、国王の右腕となり」
テオフィル・ベフトン「リアリナ様のお力になることが、できるかもしれませんね」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「そうですか! では僕は大魔道士となり、姉様を助けます!」
〇古書店
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「なるほど! 魔力は使えば使うほど増えるのだな!」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「よし! 魔法の成果を姉様に見てもらおう」
〇貴族の部屋
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「おかえりなさいませ! 姉様!」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「!!」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「・・・」
リアリナ・シャルルド・グレイ(幼少期)「あらリュカ! どうしたの?」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「邪魔をしている」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「どうだ。 王宮から持ってきた特別な茶菓子だ」
リアリナ・シャルルド・グレイ(幼少期)「あ、スタン。 ほっぺにチョコがついてる」
リアリナ・シャルルド・グレイ(幼少期)「はい、綺麗になった」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「・・・うむ、」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「ん? どうした?」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「いえ、殿下」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「なんでもありません」
〇洋館の廊下
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「うわーん!」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「憎い・・・。どうして、あの男が姉様を 姉様を一番愛しているのは、僕なのに」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「どうして、あんな男に笑顔を向ける?」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「僕が姉様の隣に永遠にいるはずなのに!!」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「・・・憎い」
〇教会
〇大聖堂
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「どうか神様お願いです」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「姉様の心が僕から離れないように」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「姉様とずっと一緒にいられますように」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「どうか──」
「こんな夜遅くに、いかがされた?」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「司祭様」
パウデマル大司教「・・・」
パウデマル大司教「この雨の中、祈りを捧げていたのですか」
パウデマル大司教「その胸の祈りは、 きっと神に届いたことでしょう」
パウデマル大司教「服が濡れている」
パウデマル大司教「温かい紅茶をお出ししましょう」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「ありがとうございます。司祭様」
〇立派な洋館
〇華やかな裏庭
リアリナ・シャルルド・グレイ(幼少期)「リュカ。 お買い物に付き合ってちょうだい」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「僕でいいのですか?」
リアリナ・シャルルド・グレイ(幼少期)「ええ、そうよ。街で美味しいものを食べたい気分なの。付き合って」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「はい! すぐ支度をいたします!」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)(すごい! いきなり姉様から誘いを受けた!)
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)(神様に願いが通ったんだ!)
〇市場
〇メイド喫茶
〇ケーキ屋
〇シックなカフェ
〇市場
リアリナ・シャルルド・グレイ(幼少期)「あー。とっても楽しかったわ!」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「もう食べられません」
リアリナ・シャルルド・グレイ(幼少期)「あはは! リュカったら! 弱すぎ!」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「う!!」
リアリナ・シャルルド・グレイ(幼少期)「リュカ! リュカ! しっかりして!」
〇警察署の医務室
医師「目が覚めましたか?」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「うう・・・」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「うわああああ!」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「な、なんだこれは!」
医師「君は悪魔の毒に侵されたのです」
医師「最近何か、知らない果実を食べたことはありますか?」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「わかりません。たくさん食べたので」
医師「これは、悪魔に魂が蝕まれる毒」
医師「一度侵されれば、悪魔に変わるとても強い毒で」
医師「治療法はいまだありません」
医師「毒の進行を抑える聖水を差し上げましょう」
医師「これを1日に三度飲むように」
医師「次の診察までに、ご両親に話すように」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「このことが両親に知られるのですか?」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「い、嫌です!」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「知られるぐらいなら、死んだほうがマシです!」
〇市場
リアリナ・シャルルド・グレイ(幼少期)「リュカ、大丈夫だったの?」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「・・・ ただの食べ過ぎでした」
リアリナ・シャルルド・グレイ(幼少期)「そっか! 心配しちゃったじゃない!」
リアリナ・シャルルド・グレイ(幼少期)「さあ、帰りましょう」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「はい・・・」
〇教会
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「司祭様」
パウデマル大司教「なんでしょう?」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「神様は悪魔を殺せますか?」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「僕の中にいる、悪魔を殺したいのです」
パウデマル大司教「・・・詳しく話を聞きましょうか」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「・・・」
〇立派な洋館
〇華やかな裏庭
リュカ・シャルルド・グレイ「ううう・・・」
リュカ・シャルルド・グレイ「ふうっ。ふうっ」
リュカ・シャルルド・グレイ「静まった・・・」
リュカ・シャルルド・グレイ「聖級治癒魔法でも、効かなくなってきたな」
リュカ・シャルルド・グレイ「だからと言って、大司教から貰った薬を無闇に使えない」
リュカ・シャルルド・グレイ「僕は・・・どうなってしまうのだ?」
「リュカ! ここにいたのね!」
リュカ・シャルルド・グレイ「ね、姉様!」
リアリナ・シャルルド・グレイ「聞いて! 聖女が見つかったんですって!」
リアリナ・シャルルド・グレイ「なんでも手が触れただけで、花を生き返らせるほどの強い治癒能力があるんですって!」
リュカ・シャルルド・グレイ「それはまた、眉唾な話ですね」
リアリナ・シャルルド・グレイ「あら! きっと本当の話よ!」
リュカ・シャルルド・グレイ「というか、姉様、 抱きつかれてるとその・・・」
リアリナ・シャルルド・グレイ「あ、重たかった? ごめんなさい。 つい興奮を表現したかったの!」
リュカ・シャルルド・グレイ「その興奮は十分すぎるほど、伝わりました・・・ので」
リアリナ・シャルルド・グレイ「とにかくね! すごいのよ! 聖女って!」
リアリナ・シャルルド・グレイ「早く会いたい!」
リアリナ・シャルルド・グレイ「あら? リュカ、手袋なんてつけてるの?」
リアリナ・シャルルド・グレイ「家の中なんだから、取っちゃいなさいよ」
リュカ・シャルルド・グレイ「触るな!」
リアリナ・シャルルド・グレイ「・・・あ」
リュカ・シャルルド・グレイ「も、申し訳ありません! 姉様! これは病で手が爛れてしまい・・・」
リュカ・シャルルド・グレイ「ひどい有様なので、お見せできないのです」
リアリナ・シャルルド・グレイ「そうだったのね。それなのに私ったら ごめんなさい。リュカ」
リュカ・シャルルド・グレイ「・・・いえ」
〇華やかな裏庭
本当は、直接触れたいのです
姉様の・・・、その髪に
その柔らかな頬に
その唇に・・・
触れたいのに・・・
〇黒
もう、触れることは叶わないのですね
〇立派な洋館
〇市場
〇荒廃した教会
リアリナ・シャルルド・グレイ「リュカ!」
リアリナ・シャルルド・グレイ「リュカ! 目を開けて!」
リアリナ・シャルルド・グレイ「お願い!」
リアリナ・シャルルド・グレイ「死なないで!」
やっと、
触れられた──
〇黒
〇海辺
リアリナ・シャルルド・グレイ(幼少期)「ああ!!」
リアリナ・シャルルド・グレイ(幼少期)「せっかく作ったのに・・・ 波にさらわれてしまったわ」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「また作りましょう」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「何度でも、 何度でも、僕が姉様のために作ります」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「そしていつか、本物のお城で、」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「姉様と永遠に幸せに暮らしましょう」
リアリナ・シャルルド・グレイ(幼少期)「やった! 約束よ?」
リュカ・シャルルド・グレイ(幼少期)「はい。約束です」
〇黒
〇荒廃した教会
リアリナ・シャルルド・グレイ「ううっ・・ リュカ! リュカ!!」
リアリナ・シャルルド・グレイ(もう一度やり直そう)
リアリナ・シャルルド・グレイ(そして今度こそ、リュカを救うわ)
テオフィル・ベフトン「何をするのです!」
〇黒
──