S2 11話#36 (脚本)
〇黒
〇草原
〇教会の控室
パウデマル大司教「王太子が婚姻を発表する?」
司祭1「王妃様の生誕祭に合わせて、」
司祭1「グレイ侯爵家の長女との結婚を発表するという噂がございます」
パウデマル大司教「王妃の生誕祭ですか・・・」
司祭1「このままでは、神のおつげがひっくり返ってしまいます」
司祭1「聖女様には、この国の女神になっていただかなくてはなりません」
司祭1「そのためなら我々は、この身を捧げるつもりでございます」
司祭1「大司教様。 どうかこの国の安寧のために、ご決断を!」
パウデマル大司教「・・・」
〇草原
〇教会の控室
リュカ・シャルルド・グレイ「リュカが、パウデマル大司教様にご挨拶申し上げます」
パウデマル大司教「やあ。リュカ殿」
パウデマル大司教「今日は、貴殿に提案があって呼んだのです」
リュカ・シャルルド・グレイ「・・・なんでしょう」
パウデマル大司教「単刀直入に申しあげよう」
パウデマル大司教「聖女派の勢力を強めるため、聖女には、国母になってもらう」
リュカ・シャルルド・グレイ「国母に聖女を? では、王太子殿下との婚姻を進めればよろしいのですか」
パウデマル大司教「そうだ」
パウデマル大司教「姉上とスタン王太子、2人の婚約を破棄させる」
パウデマル大司教「そのためにこれを」
パウデマル大司教「姉上に食べさせなさい」
リュカ・シャルルド・グレイ「悪魔の果実・・・」
リュカ・シャルルド・グレイ「姉上を悪魔に変えるおつもりですか」
パウデマル大司教「王太子の婚約者が悪魔となれば、婚約は解消」
パウデマル大司教「必然的に聖女の順位が上がる」
パウデマル大司教「貴殿の願いも叶う」
リュカ・シャルルド・グレイ「できません。僕と同じ思いを姉上にさせるなど! 約束が違う!」
パウデマル大司教「約束は破っていない。私は直接手を下さぬ」
パウデマル大司教「貴殿がするのだからな」
リュカ・シャルルド・グレイ「っく!」
パウデマル大司教「できぬのなら、聖水は渡せぬ」
リュカ・シャルルド・グレイ「見捨てるおつもりですか!」
パウデマル大司教「見捨てる?」
パウデマル大司教「貴様のような人もどきが、神の場所にいることすら穢らわしい」
リュカ・シャルルド・グレイ「お助けください! 大司教様!」
パウデマル大司教「触るな!悪魔め!」
リュカ・シャルルド・グレイ「うぅっ・・・!」
リュカ・シャルルド・グレイ「ううう・・・」
パウデマル大司教「決断するのだ。リュカ・シャルルドグレイ」
リュカ・シャルルド・グレイ「・・・姉様」
〇黒
〇荒廃した教会
リュカ・シャルルド・グレイ「次期王妃となる者が悪魔だと知られれば、国民の前で斬首される」
リュカ・シャルルド・グレイ「姉様を晒し者にはしたくなかった」
リュカ・シャルルド・グレイ「悪魔だと知られる前に、あなたの首を刎ねなければならなかったのです」
リアリナ・シャルルド・グレイ「だからデビルハンターに私を狙わせたのね」
リュカ・シャルルド・グレイ「これは、あなたの名誉を守るためなのです」
ツヴァイ「名誉とかうるせえよ! 悪魔が!」
リュカ・シャルルド・グレイ「黙れ」
ツヴァイ「ぎゃああああーーー」
リュカ・シャルルド・グレイ「予定では盗賊が屋敷に侵入し、全員惨殺されて発見される」
リュカ・シャルルド・グレイ「そういう筋書きでしたのに」
リアリナ・シャルルド・グレイ「お父様たちを犠牲にしてまで?」
リュカ・シャルルド・グレイ「姉様のためなら本望でしょう?」
リアリナ・シャルルド・グレイ「ううっぅ・・・」
リュカ・シャルルド・グレイ「姉様。 このような寂しい場所が最期となるなんて、」
リュカ・シャルルド・グレイ「なんと嘆かわしいのでしょう」
リアリナ・シャルルド・グレイ「・・・私は悪魔じゃないわ」
リュカ・シャルルド・グレイ「僕だってそう思いたい。姉様を殺したくなんてない・・・」
リュカ・シャルルド・グレイ「あなたを愛していたから」
リュカ・シャルルド・グレイ「でももう、僕の体も限界なのです」
リアリナ・シャルルド・グレイ「悪魔に?」
リアリナ・シャルルド・グレイ「悪魔の果実を食べたの?」
リュカ・シャルルド・グレイ「だいぶ前から悪魔に蝕まれていました」
リュカ・シャルルド・グレイ「誰にも知られないよう、ずっと隠し通してきたのです」
リュカ・シャルルド・グレイ「姉様に嫌われたくなくて」
リュカ・シャルルド・グレイ「大司教が元凶だとわかっていながらも、彼らの犬となった」
リュカ・シャルルド・グレイ「一度薬を使えば、もう大司教の命令には逆らえない」
リュカ・シャルルド・グレイ「魂を売ってでも生きたかった!」
リュカ・シャルルド・グレイ「姉様のそばにいたかった・・・」
リアリナ・シャルルド・グレイ「リュカは、1人で苦しんできたのね」
リアリナ・シャルルド・グレイ「信じて、私は悪魔じゃない」
リアリナ・シャルルド・グレイ「大丈夫。私が助けてあげる」
リアリナ・シャルルド・グレイ「だからもう、1人で苦しまないで」
リュカ・シャルルド・グレイ「・・・姉様」
リュカ・シャルルド・グレイ「うううう!!」
リアリナ・シャルルド・グレイ「どうしたの? リュカ!」
リュカ・シャルルド・グレイ「っううう・・・。 もう限界なのか?」
リュカ・シャルルド・グレイ「だめだ・・・・・・離れて・・・・・・ね、・・・・・・えさ・・・・・・」
「グアアアア!!」
〇黒
「ああああ!!!」
〇荒廃した教会
リュカ(変身)「・・・」
リュカ(変身)「はあ、はあ、美しい・・・」
リュカ(変身)「痛みに顔を歪め、血を流す姉様は一層」
リュカ(変身)「美しすぎる!!」
リュカ(変身)「苦しいですか? 痛いですか?」
リュカ(変身)「もっと苦しんでください!」
リュカ(変身)「ああ! たまらない!!」
リュカ(変身)「姉様!!」
リアリナ・シャルルド・グレイ「あなたは・・・悪魔なの?」
リュカ(変身)「酷いです! 姉様リュカですよ」
リアリナ・シャルルド・グレイ「そんな、なんてことなの」
リュカ(変身)「本当は誰にも姉様を殺させたくはなかった!」
リュカ(変身)「しかし、確実に姉様を殺さなくてはならないかったから」
リュカ(変身)「苦渋の決断をしたのです」
リュカ(変身)「獣人の子供を狙わせるよう手筈を整え、」
リュカ(変身)「彼らを村へ誘導した」
リュカ(変身)「まんまと策にハマった間抜けに姉様が殺される」
リュカ(変身)「その美しい顔が恐怖に怯える姿を見られないなんて、」
リュカ(変身)「どれだけ悔しかったか分かりますか?」
リュカ(変身)「その細く白い首から最期の断末魔が聴けないなんて!」
リュカ(変身)「どれだけ辛い決断だったか!!」
リュカ(変身)「それが・・・できるのです」
リュカ(変身)「この手で殺せるなんて、」
リュカ(変身)「喜びで今にも昇天してしまいそうです。 姉様!」
リュカ(変身)「ああ・・・姉様。リアリナ姉様」
リュカ(変身)「その首を早く抱きたい! 抱きたい!」
リュカ(変身)「あなたの温かな血が僕を染め、その心臓が僕の手の中で止まる瞬間を慈しみたい!」
リュカ(変身)「はあっ。はあ・・・! 姉様!!!」
リアリナ・シャルルド・グレイ「!!」
リュカ(変身)「姉様。ご安心ください。あなたの首は、僕が一生抱いて眠りますから」
リアリナ・シャルルド・グレイ「そういうの! お断りなんですけど!」
リュカ(変身)「姉様!!!」
リュカ(変身)「!!」
テオフィル・ベフトン「リュカ様」
リュカ(変身)「テオ!!!」
テオフィル・ベフトン「たとえリュカ様でも、リアリナ様を傷つけることは許しません!」
リュカ(変身)「邪魔をするな!」
ロムアルド・ベフトン「ここは王宮騎士団が包囲した!」
リュカ(変身)「ぐぬぬぬ・・・・・・邪魔をするな!」
リュカ(変身)「誰であろうと、邪魔をすることはできない!」
騎士団兵1「うあっ! わああああ!!!!!」
騎士団兵2「ぎゃああー」
リュカ(変身)「グオオオ!」
ロムアルド・ベフトン「全方位から攻撃準備」
リュカ(変身)「!!」
リアリナ・シャルルド・グレイ「やめてえ! リュカなの! あれは私の弟なの!」
ロムアルド・ベフトン「危ないです! 退いてください!」
アインス「あれはもう、お前の弟じゃない」
アインス「悪魔は人の欲望を喰らって育つ」
アインス「あいつの肉体の中には、もう腐った欲望しか残ってない」
アインス「ツヴァイ! 行くぞ!」
ツヴァイ「おお!!」
ツヴァイ「グオオーーー!」
リアリナ・シャルルド・グレイ「やめて・・・」
リアリナ・シャルルド・グレイ「やめて! リュカを殺さないで!」
リアリナ・シャルルド・グレイ「やめて!!」
〇黒
「グアアアア!」
〇荒廃した教会
ツヴァイ「グアアアアアー!」
アインス「ツヴァイ!」
ツヴァイ「うう、」
テオフィル・ベフトン「リュカ様・・・」
アインス「・・・っふん!」
アインス「剣をとれ!」
テオフィル・ベフトン「私がですか?」
アインス「俺一人で殺せる相手ではない!」
テオフィル・ベフトン「私には・・・・・・!」
アインス「こいつはもうお前が知っている男ではない」
アインス「悪魔に心も体も奪われた哀れな躯だ」
アインス「解放してやれ」
テオフィル・ベフトン「・・・っく!」
アインス「ためらうな。ためらえばこちらが呑まれる」
テオフィル・ベフトン「っぐはっ!!」
〇黒
リュカ(変身)「ぐおおお!」
〇荒廃した教会
リアリナ・シャルルド・グレイ「・・・リュカ! お願い目を覚まして」
「グアーーーー!」
「リアリナ様!危ない」
リアリナ・シャルルド・グレイ「っきゃ!」
アインス「大事なものを守りたいなら! 剣をにぎれ!!」
テオフィル・ベフトン「大事なもの・・・」
〇黒
〇ファンタジーの学園
〇城の回廊
「うわ!!!」
セラピオン「もう降参か?」
テオフィル・ベフトン「兄上が強すぎるのです. もっと手加減をしてください」
セラピオン「お前が新兵だからと、敵が手を抜いてくれると思うか?」
テオフィル・ベフトン「・・・もう一度お願いいたします」
セラピオン「早く嫁でも貰え」
テオフィル・ベフトン「突然、何をいうのです?」
セラピオン「好きな女でもできれば、命の重さが変わる」
セラピオン「守るものが増えれば増えるほど」
セラピオン「そう簡単に死ねなくなるからな」
テオフィル・ベフトン「枷をつけろと??」
セラピオン「枷ではない。お前を真に強くする魔法だ」
セラピオン「愛するものがいることで、ここぞというときに力を放つ」
テオフィル・ベフトン「そういう兄上は、まだ娶る相手もいないではないですか」
セラピオン「ほざけ。好きな奴ぐらいいるわ!」
テオフィル・ベフトン「いつご紹介いただけるのです?」
セラピオン「お前が俺から一本とれるようになったらな!」
〇荒廃した教会
テオフィル・ベフトン「兄様・・。私に、愛する人を守る力を」
テオフィル・ベフトン「・・・リアリナ様、申し訳ございません」
リアリナ・シャルルド・グレイ「や、やめて。テオ! やめて!」
リュカ(変身)「ぐおおおお!」
アインス「行くぞ!」
「うおおおおーーーーー!!!!」
〇黒
──