S2 第10話(35)(脚本)
〇黒
〇墓地
リュカ・シャルルド・グレイ「・・・」
〇立派な洋館
「もうスタンったら! 本当!」
「最低だわ!!!」
〇貴族の部屋
リュカ・シャルルド・グレイ「リアリナ姉様、どうなさったのです?」
リアリナ・シャルルド・グレイ「リュカ、もう聞いてよ!」
リアリナ・シャルルド・グレイ「私が主催したお茶会に、スタンったら、ミレーユを連れてきたのよ!」
リュカ・シャルルド・グレイ「ミレーユ、とはあの例の聖女様ですね」
リアリナ・シャルルド・グレイ「そうよ! 招待してもないのに、勝手に連れてきて!」
リアリナ・シャルルド・グレイ「まるで殿下の恋人かのように振る舞って、 ほんっと頭にくる!」
リュカ・シャルルド・グレイ「それは、姉様は、聖女様に嫉妬してなさるのですか?」
リアリナ・シャルルド・グレイ「はあ?」
リアリナ・シャルルド・グレイ「何を言ってるんだか。 スタンに嫉妬なんかするわけないでしょ」
リアリナ・シャルルド・グレイ「仮にも婚約者なのだから、弁えて行動してほしいってだけ!」
リアリナ・シャルルド・グレイ「いちゃつくなら、私にも他の生徒にもバレないところでしなさいよ!ってわけ!」
リュカ・シャルルド・グレイ「では、殿下から結婚を求められたらどうなさるおつもりですか」
リアリナ・シャルルド・グレイ「そんなの・・・お断りに決まってるじゃない!」
リアリナ・シャルルド・グレイ「婚約もさっさと破棄してくれればいいのよ」
リュカ・シャルルド・グレイ「でしたら、破棄してしまえばいいではありませんか」
リアリナ・シャルルド・グレイ「それができるんだったら、とっくにしてるわ!」
リュカ・シャルルド・グレイ「グレイ家に生まれてさえ来なければ、よかったのに」
リアリナ・シャルルド・グレイ「それは違うわ」
リュカ・シャルルド・グレイ「え?」
リアリナ・シャルルド・グレイ「グレイ家に生まれてなかったら、リュカのお姉さんになれなかったじゃない」
リアリナ・シャルルド・グレイ「こんな可愛い弟の姉になれて、とっても嬉しいのに、それを手放すなんて勿体無いもの」
リュカ・シャルルド・グレイ「姉様!!!」
リアリナ・シャルルド・グレイ「はいはい」
リアリナ・シャルルド・グレイ「あ、そろそろ教会に行く時間じゃない?」
リュカ・シャルルド・グレイ「・・・そうでした」
リアリナ・シャルルド・グレイ「人のために頑張るなんて、偉いわね!」
リュカ・シャルルド・グレイ「・・・はい。いって参ります」
〇教会
〇怪しげな祭祀場
リュカ・シャルルド・グレイ「悪魔の果実の具合はどうです?」
司祭1「順調に育っております」
司祭1「このまま魔力を注げば、来月からの収穫は2倍に増えるかと」
リュカ・シャルルド・グレイ「次の悪魔の果実の拡散地区はどこです・・・」
司祭1「次は、ラフマ地区となっております」
リュカ・シャルルド・グレイ(ラフマ地区・・・、)
リュカ・シャルルド・グレイ(王都から近すぎる)
リュカ・シャルルド・グレイ「どうしてラフマ地区を? 首都から離れた越境から信者を増やすという話では?」
司祭1「それが大司教様の話ですと、元老院が治める土地だからと」
リュカ・シャルルド・グレイ(確かに王室と縁深い元老院の息がかかっている土地を攻めれば、聖女派に引き込める利は大きい)
リュカ・シャルルド・グレイ(だが危険だ。即刻中止を求めねば)
〇基地の廊下
リュカ・シャルルド・グレイ「ミレーユ様?」
ミレーユ「あ、えーっと信者の方ですか?」
リュカ・シャルルド・グレイ「リュカ・シャルルドグレイです。 姉様がお世話になっております」
ミレーユ「まあ。リアリナ様の弟さんでしたか」
リュカ・シャルルド・グレイ「こんな場所にどうしたのです?」
ミレーユ「この先に悪魔の気配を感じたから、気になって」
リュカ・シャルルド・グレイ「ふふっ。ここは大神殿ですよ。 悪魔などいるはずがありません」
ミレーユ「そうですよね。 勘違いですよね。私ったら恥ずかしい」
リュカ・シャルルド・グレイ「この先は神官たちの居住区ですので、女性の立ち入りはご遠慮を」
ミレーユ「聖女もですか?」
リュカ・シャルルド・グレイ「神官の宿舎は女人禁制。聖女様であっても入ることは許されません」
リュカ・シャルルド・グレイ「それとも神に身を捧げた若き神官たちを誘惑なさりたいのですか?」
ミレーユ「そういうつもりでは!」
リュカ・シャルルド・グレイ「さあ、誰かに見つかる前に戻りましょう」
ミレーユ「ええ」
リュカ・シャルルド・グレイ「・・・」
〇怪しげな祭祀場
リュカ・シャルルド・グレイ「危なかった」
リュカ・シャルルド・グレイ「聖女にこの大樹の存在を知られれば、全て終わる」
リュカ・シャルルド・グレイ「いや、いっそ知られてしまえば」
リュカ・シャルルド・グレイ「なんて、そんなことが知られたら、僕も一巻の終わりだ」
リュカ・シャルルド・グレイ「いや、もう終わっているのか」
〇教会
「ラフマ地区の拡散を中止したい?」
〇教会の控室
リュカ・シャルルド・グレイ「はい。ラフマ地区は王都と隣接した土地。万が一王都に悪魔の果実が紛れ込めば」
リュカ・シャルルド・グレイ「我々がしていることが、王室に知られれば、」
リュカ・シャルルド・グレイ「長きにわたり不在している教皇が、大神殿に戻ってくる可能性もあります」
パウデマル大司教「問題ない。教皇は戻らん」
リュカ・シャルルド・グレイ「どうして、そうおっしゃられるのです?」
パウデマル大司教「彼の方は、この国の負の遺産を排除するために、異国で命を捧げるおつもりだ」
パウデマル大司教「この国に戻るのは、世界中から悪魔がいなくなってからだ」
パウデマル大司教「だから、一生、この国へ戻ることはない」
リュカ・シャルルド・グレイ「しかし、王都の人口を考えたら例え1体の悪魔であろうと大災害に発展しかねません」
パウデマル大司教「大災害。はははは!」
リュカ・シャルルド・グレイ「大司教様?」
パウデマル大司教「それは滑稽な光景が見られそうであるな」
パウデマル大司教「国王が慌てふためく様子が見られる。いや、それどころか」
パウデマル大司教「この私にひれ伏すかもしれん」
リュカ・シャルルド・グレイ「ですが!」
パウデマル大司教「大きな声を出すな。リュカよ」
パウデマル大司教「大神殿で栽培していることを知られても、困るのは教皇、ただ一人」
パウデマル大司教「王から悪魔の排除を命じられ国を追い出された教皇が」
パウデマル大司教「実は裏で命に背き、兵器を復活させてこの国を壊そうと企んでいた」
パウデマル大司教「なかなか面白い筋書きではないか?」
リュカ・シャルルド・グレイ「異国で頑張られている教皇に、全ての罪を被せるおつもりですか」
パウデマル大司教「違う。教皇を罰するのは、この国である」
パウデマル大司教「一介の司祭より、名の売れた人間を吊し上げるのが、この国の罰の与え方であろう?」
パウデマル大司教「わかったら、さっさと撒くのだ」
リュカ・シャルルド・グレイ「っく・・・!」
パウデマル大司教「できぬのか?」
リュカ・シャルルド・グレイ「王都で流行れば、姉上も口にする危険がございます」
リュカ・シャルルド・グレイ「悪魔に遭遇する可能性もございます」
リュカ・シャルルド・グレイ「ですから、今一度お考え直しを!」
パウデマル大司教「それは君が対処することだ。私からは直接姉上には手を出さぬ」
リュカ・シャルルド・グレイ「それでは約束が違います! 約束を守ってください!」
パウデマル大司教「約束だと? それは人間同士がするものだ。悪魔とするものではない」
リュカ・シャルルド・グレイ「!!」
パウデマル大司教「其方の指先。 そろそろ腐ってきたのではないか?」
リュカ・シャルルド・グレイ「それは!」
パウデマル大司教「人の形を保つためには、お得意の魔法でもどうにもならない。聖水が必要ではないか?」
リュカ・シャルルド・グレイ「人の足元を見るなど、なんと卑劣なのですか」
パウデマル大司教「ではどうする? 愛する姉上の前で悪魔に変わるつもりか?」
リュカ・シャルルド・グレイ「・・・来月、実行に移します」
パウデマル大司教「いい子だ。聖水は、いつもの場所に用意しておきましょう。持って行きなさい」
リュカ・シャルルド・グレイ「っく! ・・・ありがとうございます。大司教様」
〇荒廃した市街地
ラフマ地区には大量の悪魔の果実の症状を出す民で溢れ
大司教の思惑通り、聖水を求める元老院の一部が聖女派へと移った
彼らは知らない。
聖水はさらなる悪夢を産むだけだということを
〇立派な洋館
〇西洋風のバスルーム
リュカ・シャルルド・グレイ「はあはあ・・・」
リュカ・シャルルド・グレイ「ふう・・・。どうにか発作が治まった。 だが」
リュカ・シャルルド・グレイ「もう左腕まで・・・」
リュカ・シャルルド・グレイ「日に日に聖水が効かなくなっている・・・」
リュカ・シャルルド・グレイ「くそ!!」
ルネ「失礼いたします。 ご夕食の準備が整いました」
ルネ「・・・リュカ様?」
ルネ「っひ!!」
リュカ・シャルルド・グレイ「・・・見たな?」
ルネ「い! いえ! なにも!!」
ルネ「ひえっ!!」
リュカ・シャルルド・グレイ「誰にも言うな」
リュカ・シャルルド・グレイ「もし余計なことを話したら、」
リュカ・シャルルド・グレイ「お前の家族が死ぬことになるぞ」
ルネ「は、はい・・・」
リュカ・シャルルド・グレイ「ダメだ・・・」
リュカ・シャルルド・グレイ「もう・・・抑えられない・・・」
〇黒
〇黒
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