第5話「七虹の輝き」(脚本)
〇西洋の円卓会議
入学式当日、放課後にて──
アンジュ「さぁ皆さん。今日集まってもらったのは他でもありません」
アンジュ「『魔族因子』についてです」
ニュイ「!?」
アンジュ「──そうでしたわね。ニュイにとってはつらい話題ですが・・・大丈夫?」
ニュイ「すみません。大丈夫ですので続けてください」
アンジュ「わかりました」
アンジュ「では話させてもらいます」
アンジュ「ここ最近になって、また『魔族因子』の摂取による事件が多発しています」
ミシェラ「そのことについては私から話させてもらっても?」
アンジュ「えぇ、構いません」
ミシェラ「では話させてもらいます」
ミシェラ「我が諜報部隊『常闇の烏』で『魔族因子』の出処を探しているのですが──」
ミシェラ「それがなかなか見つからず、困っているところです」
アンジュ「ミシェラの諜報能力をもってしてもみつからないとは──、相手は隠れるのが得意なようね」
ミシェラ「すみません──」
アンジュ「いいえ、お気になさらず」
アンジュ「他にも話がある者は?」
エアリィ・クロムウェル「私も過去の文献で探してみたのですが──」
エアリィ・クロムウェル「似たような事象は見つかりませんでした」
アンジュ「他には?」
ファム・ティターニア「私の神器『ヤタ』で街中探しても、見つかんなかったわ」
マリ・クズノハ「私も街中や森の植物さん達に聞いてみたけど、わかんなかった──」
シオン・ビュティスカ「そういえば──」
アンジュ「どうかしたのですか、シオン?」
シオン・ビュティスカ「不審な動きをする者が居ると・・・聞いたのを今思い出しました」
アンジュ「不審な・・・者ですか?」
アンジュ「いったい誰が──」
ニュイ「決まっているじゃないですか──」
それまで口を閉じていたニュイが話し始めた
アンジュ「決まっているって、いったい誰?」
ニュイ「『サーシャ・リゴレット』」
アンジュ「サーシャ・リゴレット!?」
アリュシオーネ「しかし彼女は1年前の一件で──」
ニュイ「えぇ死にました──」
ニュイ「ですが──」
ニュイ「皆さん。彼女の『能力【スキル】』をお忘れですか?」
シュイ・ランファ「『天邪鬼【あまのじゃく】』・・・ね」
ニュイ「えぇそうです」
ニュイ「全ての事象──ならびに、感情ですら反転させることが出来る厄介な能力です」
アンジュ「・・・てことは、彼女は死すらも反転させている──と?」
ニュイ「恐らくは──」
アンジュ「それは厄介ね・・・」
アンジュ「はぁ。今後どうやって犯人を捕まえれば──」
ユースティティア「それでしたら私が占星術で調べてみます」
アンジュ「大丈夫?見つかる?」
ユースティティア「任せてください」
ユースティティア「なんたって私は──」
ユースティティア「偉大なる先祖『ツァラトゥストラ』の子孫ですから!」
〇荒廃した街
ニュイ(・・・て言ってユースティティアは、関係者だと思われる人物を特定したけど──)
ニュイ(まさかニヒトの侯爵家だったとは・・・)
ニヒト『余所見してる場合か!!』
ニュイ「おっと!」
ニュイは寸前で避ける
ニヒト『しかし驚いたなぁ。まさかナハト、お前がニュイ様だったなんてなぁ』
ニュイ「だったら、どうした?」
ニヒト『良いのか?・・・お前がニュイだということ、世間に知られて──』
ニュイ「・・・」
ニュイ「あ!?」
ニヒト『・・・馬鹿かお前──』
実は試験の内容は魔法によって世界全国放送されている
ナハトは自身がニュイだということを隠し通そう──と思っていたが、
それを忘れて力を発揮してしまった──ということだ。
ウルヴェルス『主!そんな事気にしている場合ではないですよ!』
ニュイ「は!・・・そうだった」
ニュイ「・・・」
ニュイは『神器・ウルヴェルス』を使い、ニヒトに切りかかった
ニヒト『当たるかよ!!』
しかしその攻撃は、当たらなかった
ニュイ(やはり魔族因子を打ち込んだ相手は俊敏になるな──)
ニュイ(1年前を思い出す──)
ニュイ(・・・仕方ない。そろそろ本気を出すか──)
ニヒト『どうした?もう諦めて俺にやられる覚悟でも出来たのか?』
ニヒト『え!?』
ニヒトがニュイを煽るような言葉を言い終えた途端、ニュイはその姿を消して、既にニヒトの背後に居た。
そしてニュイが一言──
ニュイ「──君の輪廻・・・断ち切ったから」
ニヒト『貴様何を言・・・て──』
ニヒト『ぐはぁ!?』
ニヒトはニュイの一瞬の一撃でその場に倒れた。
だが、意識はかろうじであるようで、薄れ行く意識の中のニヒトにニュイは話しかけた
ニュイ「ニヒト・・・お前に聞きたいことがある」
ニュイ「その魔族因子をどこで手に入れた?」
ニヒト『それは──』
ニュイ「何!?」
突如その場に居た2人に向かって攻撃が飛んできた。
ニュイはなんとか避けられたが、ニヒトは動けない状態だったため、もろに当たってしまった。
その攻撃が致命傷になりニヒトは息絶えてしまった。
ニュイ「誰だ!!」
???『あらあら。随分な物言いね・・・ニュイ』
ニュイ「その声は──」
ニュイ「サーシャ・リゴレット!?」
そこにやってきたのは──
サーシャ・リゴレット「久しぶりねぇニュイ──」
ニュイ「貴様──よくものうのうと姿を現せたものだな・・・」
サーシャ・リゴレット「死んでいたと思ってた?」
サーシャ・リゴレット「でも残念。私はこうして生きてるわ!」
ニュイ「ふん!?」
サーシャ・リゴレット「おっと!危ない危ない──」
サーシャ・リゴレット「『反転』」
ニュイ「く!?」
ニュイは自身の攻撃を『反転』させられ、自身の攻撃で傷付き倒れてしまった
サーシャ・リゴレット「弱くなったんじゃないニュイ──」
サーシャ・リゴレット「でも大丈夫──」
サーシャ・リゴレット「私が貴女の体をいじって最強にしてあげるから──」
サーシャ・リゴレット「フフフ!」
サーシャがニュイの体に何かをしようとしたその時
???『・・・(そうはさせない!!)』
サーシャ・リゴレット「誰!?」
そこに居たのは──
ラレシィエンヌ「・・・(ナハトさんを──傷つけさせはしない!!)」
サーシャ・リゴレット「何!?」
ラレシィエンヌ「・・・(はぁー!!)」
サーシャ『うわぁー!?』
ラレシィエンヌの攻撃で遠くへ吹っ飛ばされたサーシャ
サーシャ・リゴレット「く!!──まだ・・・本調子ではないみたいね──」
サーシャ・リゴレット「今日のところは引き上げるわ!」
サーシャはラレシィエンヌの攻撃で深手を負い、そのまま退却した。
ラレシィエンヌ「・・・」
ラレシィエンヌ「・・・」
ラレシィエンヌ「・・・(これで・・・良かっ・・・た──)」
ラレシィエンヌは無理をしたせいで再び倒れてしまった。
〇警察署の医務室
数日後──
ナハト「・・・」
ナハト「う・・・うーん──」
ナハト「ここ・・・は──」
ナハトはあの後、駆けつけた救助隊によって病院へと搬送され、集中治療を受けた。
幸いにもそんな深手ではなかったため一命をとりとめた。
そして今眼を覚ました
ナハト「ん?誰か来るな──」
そこに来たのは──
ミシェラ「ナハト!!」
ナハト「ちょ──母様!?」
ヒュルステイン大公「ナハト!!」
ナハト「父様」
アイネ「ナハト!!」
クライネ「ナハト!!」
ナハト「姉様達──」
ヒュルステイン大公「もうお前は──心配かけさせおって・・・」
ミシェラ「グスン」
ミシェラ「でも良かった──無事で」
ナハト「何か──ごめん」
ナハト「・・・」
ナハト「あ!そうだ!」
ヒュルステイン大公「どうした?」
ナハト「ラレシィエンヌは──」
ミシェラ「あの子なら大丈夫よ」
ミシェラ「ただ──」
ナハト「ただ?」
ミシェラ「あの子、魔法での回復が出来ないから、今マリに治療してもらっているわ」
ナハト「そういえば彼女は『強制解除【キャンセラー】』の能力者だったね」
ナハト「だから原始的な治療法か──」
ミシェラ「マリが言うには、後もう少しで完治するそうよ」
ナハト「それは良かった」
ミシェラ「・・・ところでナハト」
ナハト「はい?」
ミシェラ「彼女とはどういう関係なのかしら?」
ナハト「どういう関係・・・て、同級生だけど」
ミシェラ「ほんとに?」
ナハト「何母様。何か笑顔が怖いんだけど──」
アイネ「ちょ!母様!?」
クライネ「ナハトにもそういう時期が来たんですよ」
ミシェラ「あぁ・・・ナハトが居なくなっちゃう──」
ナハト「ちょ!俺と彼女はそんな関係じゃ──」
ヒュルステイン大公「談笑しているとこ悪いが、何か忘れてないか?」
ミシェラ「何って──」
ミシェラ「・・・」
ミシェラ「あ!」
ヒュルステイン大公「やっぱり忘れていたか──」
ナハト「忘れていたって何を?」
ミシェラ「貴方がニュイだということが世間に知られてしまったことよ」
ナハト「・・・」
ナハト「あ!」
ヒュルステイン大公「ナハト、お前もか──」
アイネ「ナハト、貴方の話で学校は大変よ」
クライネ「そうそう」
ナハト「そんなに?」
アイネ「ええ!」
ナハト「・・・あぁどうしよう・・・これから・・・」
〇荒廃した教会
同日の夜──
サーシャ・リゴレット「く──申し訳ありません『夜姫』様」
夜姫『別に構わないわ。まだその体に慣れていないのでしょ?』
サーシャ・リゴレット「はい──」
夜姫『貴女は少し体を休ませなさい。あとは『あの子』に任せるから』
サーシャ・リゴレット「はい──」
サーシャ・リゴレット「ですが──」
夜姫『どうかしたの?』
サーシャ・リゴレット「あの子は確か──」
夜姫『あの子は自分が『作られた存在』だという事に気づいてないわ』
夜姫『それに──』
サーシャ・リゴレット「?」
夜姫『あの子は『あの御方』の側に居てもらわないと困るわ』
サーシャ・リゴレット「そう──ですか」
夜姫『・・・夜も更けてきたし、早く体を休ませなさい』
サーシャ・リゴレット「わかりました」
夜姫『・・・もうすぐ会えますね──』
夜姫『御主人様──』
〇病院の診察室
数日後──
診察医『良し。この具合だと明日には退院出来ます、ナハト様』
ナハト「ありがとうございます」
ナハト「あの・・・先生」
診察医『どうしたのですか?』
ナハト「様付けは・・・ちょっと辞めてもらえませんか?」
診察医『とんでもございません!』
ナハト「はぁ──」
ナハトは自身が大公の子供だと周囲に知られて、日々困っている日がここ数日の入院生活の悩みだ
だがナハトは自分の事よりも気になる事があった
ナハト「ところで先生。ラレシィエンヌの容体は?」
ラレシィエンヌはあの戦いの後、眼を覚ますことなくずっと眠っている。
医師もラレシィエンヌを助けようにも彼女のスキル『強制解除【キャンセラー】』の効果で魔法での回復が出来ず、
唯一治療できるマリ・クズノハの『薬草治療』に頼っていた。
ナハト「・・・俺、彼女が心配なので見舞いに行ってきます」
診察医『わかりました』
診察医『ですが──』
ナハト「?」
診察医『彼女の病室に行く道中、気をつけてくださいね』
ナハト「それなんですよねぇ・・・行くまでの道のりの悩み──」
〇大きい病院の廊下
ナハト「空間魔法で俺の姿を見えなくしているとはいえ──」
ナハト「何だか、怪しい事しているように感じて嫌なんだよな・・・」
ナハト「任務中以外で使うのは──」
〇病室の前
ナハト「ここか・・・ラレシィエンヌの病室は──」
マリ『は~い。どうぞ』
〇綺麗な病室
マリ・クズノハ「ナハトお兄ちゃん。大丈夫なの?もう体動かして──」
ナハト「あぁ大丈夫だ」
ナハト「・・・そんなことよりも、ラレシィエンヌの容体は?」
マリ・クズノハ「お姉ちゃんなら大丈夫だよ──」
ラレシィエンヌ「・・・」
マリ・クズノハ「ほら」
ナハト「良かった・・・」
マリ・クズノハ「お姉ちゃんの御両親には、さっき連絡したから、後日時間を作って来るって言ってたよ」
ナハト「俺のせいでこんな事に巻き込んだ事、御両親にも、彼女にも謝らないとな」
マリ・クズノハ「ナハトお兄ちゃんが謝る必要はないんじゃ──」
ナハト「──それでも俺は謝りたいんだ」
ナハト「それに──」
マリ・クズノハ「それに?」
ナハト「あの時薄っすらした意識の中で見た彼女の力の事で、御両親に許しを得たいことがあるんだ」
マリ・クズノハ「それってもしかして──」
ナハト「恐らく彼女は・・・」
ナハト「全属性魔術に適性がある」
マリ・クズノハ「全属性魔術に適性があるって、それじゃーまるで──」
ナハト「あぁ。『あの人』以来の適性者だ」
〇貴族の応接間
後日、ラレシィエンヌは眼を覚まし退院。ナハトも退院し、ナハトはヒュルステイン邸にラレシィエンヌと御両親を招いた。
ナハト「改めまして、今日ここに来てくださり誠に有難う御座います」
ナハトは深々と一礼した
ラレシィエンヌの父親『ナハト様!?お辞めください!』
ラレシィエンヌの母親『そうですよ!?頭を上げてください!』
ナハト「ですが──」
ラレシィエンヌ「ちょ!?お父様お母様!」
ラレシィエンヌの父親『こらアルル。お前も頭を下げんか!』
ラレシィエンヌ「お父様!人前でその愛称で呼ぶのは──」
ナハト「ははは!!微笑ましい家族ですね」
アリュシオーネ『失礼します──』
アリュシオーネ「御茶をお持ちしました──」
ラレシィエンヌの母親『アリュシオーネ様!?』
ナハト「あぁ彼女は俺の家に長年仕えていると同時に聖火隊の隊長でもあるんですよ」
ラレシィエンヌの父親『長年仕えているってどのくらい?』
ナハト「確か──300年・・・」
アリュシオーネ「おっと失礼、ナイフを落としてしまいました──」
ナハト「は!?」
ナハト「ははは──それはさておき、話したい事が御二人にあって──」
ラレシィエンヌの母親『話したいことって、何ですか?』
ナハトは慌てている表情から一変、真剣な顔になった
ナハト「娘さんを──ラレシィエンヌを聖響騎士団に入れる許可を頂きたいのですが・・・」
ラレシィエンヌ「!?」
ナハトの言葉を聞いてラレシィエンヌは驚愕する
それもそのはず。今まさに初めてその事を聞いたからだ
ラレシィエンヌの父親『アルルを・・・娘をですか?』
ナハト「はい」
ラレシィエンヌの父親『ちょっと待ってください。いきなり過ぎてびっくりしました』
ラレシィエンヌの父親『少し妻と娘と3人で話し合っても?』
ナハト「わかりました」
ナハト「こちらもいきなり過ぎて、すみません」
ラレシィエンヌの母親『ナハト様、ですから頭を──』
その後ラレシィエンヌと両親は別室に行き、家族会議をした。
ナハト「・・・」
アリュシオーネ「ナハト──」
ナハト「は──はい!?」
アリュシオーネ「女性の年齢をバラすのは良くないですよ」
ナハト「は──はい。以後・・・気を付けます」
〇西洋風の部屋
ラレシィエンヌ「お父様、お母様。私・・・聖響騎士団に入りたい!」
ラレシィエンヌの父親『入る・・・て──』
ラレシィエンヌの母親『どうしても入りたいの?』
ラレシィエンヌ「はい」
ラレシィエンヌの父親『そうか──』
ラレシィエンヌの母親『でもその前に、ナハト様に『あの事』を話さなきゃね』
ラレシィエンヌの父親『そうだな』
ラレシィエンヌ「?」
〇貴族の応接間
その日の夕方──
ナハト「お話は終わりましたか?」
ラレシィエンヌの父親『はい』
ラレシィエンヌの母親『ですが、娘が騎士団に入るかどうかを話す前に、ナハト様にお話しなければならない事があります』
ナハト「お話したい事・・・ですか?」
ラレシィエンヌ「・・・」
ラレシィエンヌの父親『・・・』
ラレシィエンヌの母親『実はアルルは──私達の実子ではないのです』
ナハト「何と!?」
次回に続く・・・