香水棚はりつき事件(脚本)
〇大きいデパート
〇宝石店
樺島 一心(かばしま いっしん)「ぎゃあああ!!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「わっ、すごい迫力だね!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「お兄ちゃん?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「すまない、腰が抜けて・・・」
樺島 ここね(かばしま ここね)「しょうがないなぁ。 あとはここねに任せて!」
ゾンビ「うあっ?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「襲ってきた!? ここね、逃げろ!」
ゾンビ「あぁ~」
樺島 ここね(かばしま ここね)「いい香り?」
樺島 ここね(かばしま ここね)「・・・あ! もしかしてこれ?」
ゾンビ「うぁうぁう!!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「きゃっ」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ここね! 香水をこっちへ!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「でも・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「兄ちゃんは大丈夫だ! 早く!」
ゾンビ「うぁー、あー!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「それ、母さんのだろう? 絶対に渡すなよ!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「・・・ありがとう、お兄ちゃん」
樺島 ここね(かばしま ここね)「でもね、お母さんだったら きっとこうしてるから」
樺島 ここね(かばしま ここね)「うぁ~、あうあ!」
ゾンビ「ああうー!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ここね・・・?」
樺島 ここね(かばしま ここね)「安心して。貸してあげただけ」
樺島 ここね(かばしま ここね)「あなたの分を探してくるから ちょっと待っててね」
〇オフィスのフロア
樺島 一心(かばしま いっしん)「・・・というわけで、ゾンビを留置して 新品を探しているのですが」
樺島 ここね(かばしま ここね)「どこにも売ってないみたいだね・・・」
平 光和(たいら みつかず)「廃番になったのかもしれないね」
樺島 ここね(かばしま ここね)「そんな・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「在庫は残っているかもしれない。 製造会社に連絡してみよう」
〇高層ビル
〇個別オフィス
社長「ようこそ我が社へ!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「えーっと・・・」
社長「ゾンビ課の方とお話できるなんて 滅多にない機会ですからね!」
社長「是非ゾンビ臭対策について ご意見をお伺いしたく・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「すみません、 今日はそのような話をしにきたわけでは」
社長「ああ! 香水の話でしたね」
社長「実はもう香水は作ってないのですよ。 在庫もありません」
樺島 一心(かばしま いっしん)「1つでいいのですが、 なんとか手に入りませんか」
社長「そうですね・・・ その香水の調香師に頼めばあるいは」
樺島 一心(かばしま いっしん)「その方は本日ご出勤ですか?」
社長「彼女なら退職しました」
樺島 一心(かばしま いっしん)「えっ!?」
社長「仕方がありませんでした。 時流は消臭・防臭ですからね」
社長「経営を立て直すため、香水事業は撤退」
社長「仕事が生きがいだった彼女は 自らここを去りました」
樺島 ここね(かばしま ここね)「そんな・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「それで、彼女は今」
社長「退職時の住所ならありますが、 引っ越してるかもしれませんよ」
樺島 一心(かばしま いっしん)「どうかご協力お願いします」
樺島 一心(かばしま いっしん)「捜査と、僕の大切な家族のために」
〇一戸建ての庭先
樺島 一心(かばしま いっしん)「留守か? いや・・・配電盤は回っているな」
樺島 ここね(かばしま ここね)「綺麗なお庭だね」
樺島 一心(かばしま いっしん)「そうだな・・・」
樺島 ここね(かばしま ここね)「あれ、お母さんも育ててたやつじゃない?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ここね、勝手に入っちゃ──」
〇大樹の下
樺島 ここね(かばしま ここね)「わぁ・・・これ、ハーブかなぁ?」
樺島 ここね(かばしま ここね)「あれ? 何か動いて・・・」
「きゃっ!?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ここね!」
布川 早苗(ぬのかわ さなえ)「何なんですか、あなたたち」
樺島 一心(かばしま いっしん)「勝手に入ってすみません。 あの、もしかして」
布川 早苗(ぬのかわ さなえ)「布川ですけど・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ゾンビ課の者です。 お話よろしいでしょうか」
〇シックなリビング
布川 早苗(ぬのかわ さなえ)「ゾンビが私の香水を・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「それを返してもらうために 同じものを調香してもらえないかと」
布川 早苗(ぬのかわ さなえ)「・・・調香はしません」
布川 早苗(ぬのかわ さなえ)「そんなもの、すぐに忘れますよ」
布川 早苗(ぬのかわ さなえ)「香水なんて、 なくても生きていけるんですから・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「そんなことは」
布川 早苗(ぬのかわ さなえ)「売り上げが証明してるんです!」
布川 早苗(ぬのかわ さなえ)「香水も私も必要ないって! うぅっ・・・」
樺島 ここね(かばしま ここね)「あの・・・これどうぞ」
布川 早苗(ぬのかわ さなえ)「ありがとう・・・あら?」
布川 早苗(ぬのかわ さなえ)「この香り・・・ もしかして、渡したのって妹さんの」
樺島 一心(かばしま いっしん)「いえ、母のものです。 訳あって行方知れずで」
樺島 一心(かばしま いっしん)「母は、父からもらったその香水を とても大切にしていました」
樺島 一心(かばしま いっしん)「特別な日には必ず使って、その後は ボトルを綺麗に拭いてそっとしまうんです」
樺島 一心(かばしま いっしん)「この香りは僕たち兄妹に 母の姿を思い出させてくれるんですよ」
布川 早苗(ぬのかわ さなえ)「・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「素敵な香りのお部屋ですよね。 自家製のハーブティーも最高だ」
樺島 一心(かばしま いっしん)「香りのない生活は考えられなかった、 といったところでしょうか」
布川 早苗(ぬのかわ さなえ)「・・・お見通しなんですね」
樺島 一心(かばしま いっしん)「布川さん」
樺島 一心(かばしま いっしん)「香水は売れなくなったかもしれない」
樺島 一心(かばしま いっしん)「でも僕らは、あなたの香りの素晴らしさを ちゃんと覚えてる」
樺島 一心(かばしま いっしん)「最後にもう一度だけ、 調香してもらえませんか」
布川 早苗(ぬのかわ さなえ)「・・・久しぶりなので不安ですが」
布川 早苗(ぬのかわ さなえ)「私の香りがお役に立てるなら」
〇研究開発室
樺島 一心(かばしま いっしん)「ご協力感謝します」
円谷 理子(つぶらや りこ)「いいのよ。 こっちも好きでやってることだし」
布川 早苗(ぬのかわ さなえ)「すごいですね。まるでコスメ開発室みたい」
円谷 理子(つぶらや りこ)「化粧品だって重要な証拠になるでしょう?」
円谷 理子(つぶらや りこ)「って、説得して揃えちゃいました」
円谷 理子(つぶらや りこ)「愛するここねちゅわんのために!!」
布川 早苗(ぬのかわ さなえ)「は、はぁ・・・」
円谷 理子(つぶらや りこ)「そうだ、これ」
円谷 理子(つぶらや りこ)「ここねちゃん用コスメ改良版よ また感想聞かせてね」
樺島 ここね(かばしま ここね)「ありがとう、ございます」
円谷 理子(つぶらや りこ)「さーて、マイスウィ~ト ここねちゅわんのために一肌脱ぐわよ~!」
円谷 理子(つぶらや りこ)「頑張りましょうね! 布川先生!」
布川 早苗(ぬのかわ さなえ)「・・・はい!」
〇留置所
樺島 ここね(かばしま ここね)「じゃあお話してくるね」
布川 早苗(ぬのかわ さなえ)「えっ!? 近づいたら危ないんじゃ・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「まあ、見ててください」
〇刑務所の牢屋
樺島 ここね(かばしま ここね)「ああうー(はい、新品だよ)」
ゾンビ「うあ?」
ゾンビ「・・・」
樺島 ここね(かばしま ここね)「・・・」
樺島 ここね(かばしま ここね)「あぁう、あぁ・・・ (この金木犀の香り、素敵だよね)」
ゾンビ「あう!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「あーうぁ、あ〜 (大事な思い出があるんだよね)」
樺島 ここね(かばしま ここね)「うぁあ〜(わたしも一緒なんだ)」
樺島 ここね(かばしま ここね)「うぅあぁ・・・(でもね、わたしは今あなたが持っているそれじゃないとダメなの)」
ゾンビ「・・・」
樺島 ここね(かばしま ここね)「あーうぁ?(交換してくれる?)」
ゾンビ「・・・あうあ!」
〇留置所
布川 早苗(ぬのかわ さなえ)「すごい・・・ 人とゾンビが通じ合えるなんて・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ゾンビのこだわりは人間だった頃の思いが 引き金になっているんです」
樺島 一心(かばしま いっしん)「何かを大切に思う気持ちは 僕たちと変わらないんですよ」
樺島 ここね(かばしま ここね)「・・・布川さん、あのね」
樺島 ここね(かばしま ここね)「わたし、お母さんと会えたら 一緒にこの香水を買いに行きたい」
樺島 ここね(かばしま ここね)「・・・ワガママ言ってごめんなさい」
布川 早苗(ぬのかわ さなえ)「ううん。ワガママはきっと私のほうだった」
布川 早苗(ぬのかわ さなえ)「自分のことばかりで、この香水を 愛してくれてる人たちが見えてなかった」
布川 早苗(ぬのかわ さなえ)「決めた。私、この香水を再販してみせる」
樺島 一心(かばしま いっしん)「本当ですか!」
布川 早苗(ぬのかわ さなえ)「ええ。約束する」
布川 早苗(ぬのかわ さなえ)「ここねちゃん、ありがとう」
布川 早苗(ぬのかわ さなえ)「その肌・・・ きっと辛いことがあったのよね」
布川 早苗(ぬのかわ さなえ)「でも、何かが変わってしまっても 思い出を胸に前に進めるのよね、私たち」
布川 早苗(ぬのかわ さなえ)「お母さん、きっと見つかるからね」
布川 早苗(ぬのかわ さなえ)「私もお会いできる日を楽しみにしてるわね」
〇ゆるやかな坂道
樺島 ここね(かばしま ここね)「うぅ~・・・よかったぁ・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ここね、ありがとうな」
樺島 一心(かばしま いっしん)「でも、もう無理はしないでくれよ」
樺島 ここね(かばしま ここね)「お兄ちゃんの真似だよ」
樺島 一心(かばしま いっしん)「僕の?」
樺島 ここね(かばしま ここね)「うん」
樺島 ここね(かばしま ここね)「いつも誰かのために頑張ってる、 世界で一番かっこいいお兄ちゃんの真似!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「それにね、ここねは信じてるの」
樺島 ここね(かばしま ここね)「一生懸命お話すれば ゾンビはきっとわかってくれるって」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ここね・・・」
樺島 ここね(かばしま ここね)「人間はまだちょっと怖いけどね」
樺島 一心(かばしま いっしん)「そうだな・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ここね、香水使った?」
樺島 ここね(かばしま ここね)「ううん? でもこの香り・・・」
樺島 ここね(かばしま ここね)「本物の金木犀だ!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「もうそんな時期なんだな」
樺島 ここね(かばしま ここね)「ねぇお兄ちゃん。来年は・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ああ。家族みんなで見ような」
ラストのスチル、本当に金木犀の良い香りが漂ってくる様ですね。☺️
第1期お疲れ様でした!第2期も楽しみにしております!
ゾンりか第1期完結お疲れさまでした!
ゾンビのスチルも金木犀の花々のスチルも繊細で素敵です!
ここねのお母さんの香水、一時はどうなるかと思いましたが、最終的にここねの元に戻ってきてよかったです✨
どうか、ここねと一心のお母さんに会えますように。
調香師の布井さんの気持ち、解る気がします。売上げを重視したが為に、何か大切な事を忘れてしまう。社会においての永遠の課題なのかもしれません。