プロフェティック・ドリーム

坂道月兎

#13 変化の代償(脚本)

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〇事務所
百瀬涼平「落ち着いて聞いて欲しい」
  俺は、自分が正夢を見るようになったことと、結衣が死んでしまう夢を何度か見てしまったことを告げた。
  結衣は口をはさんだりせず、黙ってじっと俺の話に耳を傾けてくれていた。
花ノ木結衣「ずっとそのことで悩んで、私を助けるために頑張ってくれてたんだ・・・」
百瀬涼平「でも、そのせいで結衣に辛い思いをさせた・・・ごめんな」
  結衣はかぶりを振る。
花ノ木結衣「なんで? なんで言ってくれなかったの」
花ノ木結衣「私こそ、変に誤解して我儘言ったよね・・・何も知らずに、ごめんなさい」
百瀬涼平「結衣が傷ついたり不安になるんじゃないかと思って・・・言えなかったんだ」
花ノ木結衣「・・・私、そんなに弱くないよ」
百瀬涼平「え・・・?」
花ノ木結衣「そりゃ、死ぬとか言われたら怖いし不安だけど・・・りょうくんが助けてくれるんでしょ?」
百瀬涼平「ああ、もちろんだ!」
花ノ木結衣「私はずっと昔から・・・りょうくんさえいれば大丈夫なんだよ」
花ノ木結衣「私だって死にたくないから、そんな結果にならないように・・・一緒に頑張らせて」
百瀬涼平「結衣・・・」
花ノ木結衣「でも、そっか・・・それで八神くん、早乙女君が犯人・・・とか言ってたんだね」
百瀬涼平「ああ。結衣に執着している早乙女がもしかしたら・・・って話してたんだ」
花ノ木結衣「犯人がまだわからないから、皆気をつけてくれてたんだね」
花ノ木結衣「りょうくんだけじゃなく、八神くんとアリスちゃんも」
  結衣は噛みしめるように言う。
百瀬涼平「・・・結衣を守りたいんだ」
百瀬涼平「一緒に俺の見た正夢をぶち壊して・・・幸せな未来に変えよう」
花ノ木結衣「うん!」
花ノ木結衣「りょうくん、これからは、たとえ私が傷つくようなことでも、何でもちゃんと言って欲しいんだ」
百瀬涼平「うん・・・」
花ノ木結衣「私も、どんなことでもりょうくんに話すって約束するよ」
百瀬涼平「ああ、わかった」
  結衣が微笑み、俺は肩の荷を下ろしたようにホッとした気持ちになった。
百瀬涼平「ありがとう、結衣」
  結衣を助けるつもりだったが、今回は結衣に救われた。
百瀬涼平(すべてが終わったら、また・・・改めて結衣に想いを伝えよう)
  久しぶりに見た結衣の無防備な笑顔が胸に沁みる。

〇応接室
  肩の荷は下りたものの、やはり一人で寝ても正夢を見ることができなくなっていた。
  探偵事務所に集まり、アリスにも協力してもらうことにした。
  今日は結衣も一緒だ。
生方千尋「事件が起こってからではどうしようもないから、できれば事件の少し前に遡った夢が見られたらいいね」
百瀬涼平「じゃあ、また言霊を使ってみます」
生方千尋「遡(さかのぼ)りすぎたら、今度は途中で目が覚めてしまうかもしれないから、気をつけて」
百瀬涼平「はい」
八神直志「ほい、これ。気休めかもしれないけど」
  そう言って八神が差し出してくれたのはチョコレートだった。
八神直志「ギャバって成分が入ってて、睡眠の質を高めてくれるらしいぜ」
百瀬涼平「ありがとう、八神・・・」
花ノ木結衣「りょうくん、アリスちゃん・・・無理しないでね」
笹島アリス「ありがと、結衣」
  結衣とこの秘密を共有できたことで、俺にも少し余裕が出てきた気がする。
  生方さんに誘導してもらい、チョコレートを口に放り込んでからゆったりと目を閉じた。
百瀬涼平「事件の少し前の夢をみたい。 ・・・結衣を助ける猶予が欲しい」
  祈るように、はっきりと口にした。
  眠る直前、『りょうくん・・・』と俺を心配する結衣の声が聞こえた気がした。

〇一人部屋
花ノ木結衣「明日、楽しみだね~」
  ハッとする。
  これは正夢だ。無事に夢の中に入れたらしい。俺は結衣に聞き返した。
百瀬涼平「明日って何があるんだったっけ?」
花ノ木結衣「えー、もう忘れたの! ひどいなあ。 一緒にご飯食べに行こうって言ったじゃない」
百瀬涼平「あ、そうだった、な・・・」
  携帯を確認する。12月23日の夜19時だ。結衣が死ぬ前日だった。
花ノ木結衣「あそこのオムライス、ものすごく評判いいんだよー、楽しみだな~」
  どうやら明日、俺と結衣はデートの約束をしているようだった。
  ということは、一緒に出掛ける直前に殺される、ということか・・・。
  目の前の結衣を、思わず抱きしめていた。
花ノ木結衣「わっ、どうしたの、りょうくん」
百瀬涼平「いや・・・」
  結衣は嫌がったりせず、笑いながら俺の背中に手をまわし、ぽんぽん、と叩いてくれた。
花ノ木結衣「大丈夫だよ。 何回もシミュレーションしたでしょ?」
百瀬涼平「結衣・・・」
  そうだった。今の結衣は正夢のことを知っている・・・。俺はホッと息を吐いた。
花ノ木結衣「明日は──」
  結衣の言葉が何故か途切れていく。
  目が覚めてしまうのか・・・!?
  まだ何も行動していない。俺は焦った。
百瀬涼平「結衣!」
百瀬涼平(そういえば、アリスはどこだ・・・?)
  その時、一瞬目の前が真っ暗になった。
百瀬涼平「ダメだ、目覚めたくない!」
  必死にそう叫ぶ。

〇男の子の一人部屋
  気がつくと、自分の部屋にいた。
百瀬涼平「どういうことだ・・・?」
  周囲を見渡す。目覚めてはいない。
  これは夢の中だ。現実とははっきりと違う感覚がある。
  その時、バンっと乱暴にドアが開いた。
笹島アリス「涼平!」
百瀬涼平「アリス!」
笹島アリス「まだ間に合う、すぐに結衣を部屋から連れ出すよ」

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