プロフェティック・ドリーム

坂道月兎

#14 父との対面(脚本)

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〇応接室
百瀬涼平「八神っ!!」
  叫びながら、飛び起きた。
  とっさに八神の姿を確認しようとするが、いち早くアリスが動いていた。
笹島アリス「直志!」
八神直志「え、なに? どうした?」
  アリスはいきなり、八神に鋭い鉄拳を浴びせた。
  ゴン、と鈍い音が響く。
八神直志「うおっ!?」
百瀬哲平「アリスちゃん!?」
生方千尋「グーはダメだって、せめてパーにしてあげて」
八神直志「いや、そういう問題じゃないでしょ」
八神直志「いってえ・・・いきなりなに? オレ何かした?」
百瀬涼平「八神が死んだんだ」
八神直志「は?」
笹島アリス「結衣じゃなくて・・・直志が死んだのよ。 涼平の正夢の中で」
百瀬哲平「・・・どういうことだ?」
生方千尋「正夢が変わったってこと・・・?」
百瀬涼平「俺は結衣を助けたかっただけなのに・・・まさか今度は八神が犠牲になるなんて」
八神直志「嘘だろ・・・」
  八神が青い顔で呟いた。
  結衣は心配そうに俺たちを見ている。
笹島アリス「アンタが悪いのよ!」
八神直志「え・・・?」
笹島アリス「死ぬ間際に心を読んだ。 結衣を助けるために、勝手に行動した」
八神直志「・・・・・・」
百瀬涼平「どういうことだよ」
笹島アリス「私たちに相談せずに、一人で犯人を待ち伏せしたのよ」
百瀬涼平「なんでそんなこと・・・!?」
八神直志「・・・そうか、それで・・・死ぬことになったんだな」
生方千尋「ナオ、心当たりあるのかい?」
八神直志「・・・ちょっと焦ってたんですよね、オレ」
  八神はそう言うとため息をついた。
八神直志「涼平は正夢を見て、アリスもそれを手助けできる」
八神直志「生方さんと哲平さんもストーカー調査したり、やれることをやってる」
八神直志「でも、オレは何もできない」
笹島アリス「アンタのはただヒーロー願望をこじらせただけでしょ」
笹島アリス「その結果死んじゃうなんて、ただのバカ」
  アリスは強い口調で八神を詰るが、声がわずかに震えている。
  キツイことを言いながら、心から八神を心配しているのが伝わってきた。
花ノ木結衣「私のためを思ってくれたんだよね。 八神くん。ありがとう」
花ノ木結衣「でも、それで死んじゃうなんて・・・そんなの絶対にだめだよ」
  結衣は目に涙を浮かべている。
  結衣が助かったから良かったなんてとても思えない。
  結衣も八神も・・・ほかの誰にも死んで欲しくない。
八神直志「・・・ごめん、絶対にうかつな行動をとらないって約束する」
百瀬哲平「そうだな。直志だけじゃない、ここにいる皆で約束しよう」
百瀬哲平「何か行動を起こすときは必ず相談してからだ」
生方千尋「誰も犠牲にならない方法が絶対にあるはずだから・・・皆で考えよう」
  俺たちは力強く頷いた。
  ちょっとした行動で未来が変わってしまうことがあるのだ。
  そのことを肝に銘じておかなければ。

〇応接室
  翌日、俺と結衣はふたりで探偵事務所に来ていた。
  今日は正夢を見るためではない。
  結衣からあるお願いをされたのだ。

〇マンションのオートロック
花ノ木結衣「りょうくん、お願いがあるんだ」
百瀬涼平「どうした?」
花ノ木結衣「実はね、お父さんから会いたいって言われてて・・・」
百瀬涼平「親父さんと連絡とってるのか?」
花ノ木結衣「どうやって調べたのかわかんないんだけど・・・最近急に連絡があったんだよね」
百瀬涼平「大丈夫なのか?」
花ノ木結衣「会うつもりなかったんだけど、りょうくんの話聞いて、死ぬのかもって思ったら・・・会っておいてもいいのかなって」
百瀬涼平「そうか」
花ノ木結衣「でね、りょうくんにも一緒に行ってほしくて」
百瀬涼平「もちろん」
  結衣が頼りにしてくれたことが嬉しかった。

〇応接室
  面会のため、事務所の応接スペースを貸してもらっていた。
  久しぶりに見た親父さんは、昔よりもだいぶやつれているように見えた。
  以前は学校の先生だったが、今は塾講師をして生計を立てているらしい。
轟洋治「結衣・・・大きくなったな」
花ノ木結衣「・・・えっと、お久しぶりです」
轟洋治「そんな他人行儀な・・・昔みたいにお父さんって呼んでくれよ」
花ノ木結衣「え・・・あの」
  結衣が困っている様子だったので、助け船を出す。
百瀬涼平「どうして急に会いたいなんて?」
轟洋治「涼平君も大きくなったね。 いや、実はお母さんと連絡を取りたくて」
轟洋治「この間、テレビに出ていただろう?」
  結衣の母はもともと専業主婦だった。
  しかし母子家庭になり、結衣を養うためにがむしゃらに働いた結果、有名な女性実業家になっていた。
轟洋治「その、昔のことを気にしてるのか、会ってもらえなくて」
轟洋治「結衣からお母さんに話してくれないかな」
百瀬涼平(結衣のお母さんが成功したのを知って連絡してきたのか・・・)
  あまりにも都合のよすぎる発想に唖然(あぜん)とする。
  結衣の母が拒否するのも当然だろう。
  結衣も戸惑っている。
花ノ木結衣「・・・え・・・何を話すんですか?」
轟洋治「また昔みたいに、3人で一緒に住もう。なあ、結衣からもお母さんを説得してくれ」
花ノ木結衣「・・・再婚したんじゃなかったの?」
轟洋治「・・・後悔してる。結衣、許して欲しい。 またお父さんと一緒に暮らそう。な?」
花ノ木結衣「・・・・・・」
  結衣は黙り込んだ。

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