赤ちゃんは毘沙門天

山本律磨

家族評議(脚本)

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山本律磨

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〇おしゃれなリビングダイニング
  永尾家家族評議
  一家の主
  その奥方
  当事者
  その妹
  親族代表
  何故貴様まで・・・?
政一郎「定光君。すまんが外してくれんか?」
兎耳(ウサミ)「でしょうね」
政一郎「・・・」
  しかしこの永尾家の主、政一郎殿。
  つまりは我が祖父となる御仁の
  何と威風堂々たる姿か。
  このお方なら必ずや母上の煩悶を断ち、
  不覚悟を戒め、愚かな行為を止めて
政一郎「好きにしろ」
  え?
千草「え?」
政一郎「話は終わりだ。風呂に入るぞ」
  ちょ、ちょちょちょ!待って待って!
景子「あなた。脅しがすぎるわよ」
政一郎「産みたければ産め」
政一郎「そうじゃないなら早く決断しろ」
政一郎「これはお前の問題だ」
景子「あなた!」
千草「な、何もそんな言い方・・・」
政一郎「お前が一度でも 俺の言葉を素直に聞いたことがあったか?」
千草「・・・」
  ないんかい!
政一郎「大学も行かず就職もせず、 モデルだか芸能人だかになると 勝手に家を出て東京で 腹膨らませて戻って来てどうしようだと?」
政一郎「知ったことか!」
  正論すぎる・・・
千草「・・・お父さんだって」
政一郎「なんだ?」
千草「お父さんだって私の言うこと 一度も真剣に聞いてくれなかったじゃん!」
千草「いつも怒って!」
千草「いつも見下して!」
千草「いつも無理だって! 何やってもお前には無理だって!」
千草「母親になるのも無理だって、 どうせまた決めつけてるだけでしょ!」
政一郎「反抗ばかりで 何ひとつやり遂げたことのないヤツが、 偉そうな口を叩くな!」
千草「・・・」
  ご、ご当主・・・それはちと言い過ぎでは?
  世の中には、何ごとかをやり遂げるのに
  少々時間のかかってしまう者もおりますれば。

〇荒野
上杉不識庵謙信「ええい!いつまで時を費やしておるか!」
上杉不識庵謙信「責をとり腹を斬れい!」

〇おしゃれなリビングダイニング
  ・・・・・・。
千草「もういい・・・もう話さない」
千草「お父さんにはもう一生、 私のこと話さない!」
千尋「だって」
政一郎「・・・」

〇一階の廊下
兎耳(ウサミ)「・・・」
千草「・・・」
千草「聞いてんじゃねーよデブ!」
  そりゃ殴られるわい。

〇おしゃれなリビングダイニング
千尋「・・・」
千尋「ねー。お風呂入んないの?」
政一郎「・・・」
千尋「私、入りたいんだけど」
政一郎「お前達は知ってたのか?」
政一郎「アイツに男がいたことも、 子供が出来ていたことも」
景子「あなたが知ろうとしなかっただけでしょ」
千尋「結局パパが一番臆病なのよ」
千尋「娘のプライベートが 怖くてしょうがないんでしょ?」
千尋「だからすぐに決めつけて安心したがる」
景子「言い方!」
政一郎「お、お前はどうなんだ? いくら何でも中学生で妙な男となど・・・」
千尋「どうでしょ~」
政一郎「・・・」
景子「あなたの責任でもあるのよ。 ずっと千草と真剣に向き合わなかった」
景子「大人になっていく千草から 目を逸らし続けたあなたのね・・・」
政一郎「・・・」
政一郎「ふ、風呂だ!」
景子「今、千尋が入ったわよ。殺されたいの?」

〇散らかった部屋
千草「・・・」
千草「もういい・・・一人で生きてくから」
  ひとり・・・

〇荒野
上杉不識庵謙信「人は一人で生まれ一人で死ぬ!」
上杉不識庵謙信「故にただ一人で戦い!ただ一人で生きよ!」
上杉不識庵謙信「強くあれ!強くあれ!強くあれ!」

〇散らかった部屋
  いつの時か、左様な言を口にしたか・・・
千草「・・・」
  全ては我が申したこと。
  母上、強く生きて下され。
  なれば我との縁、切り捨てて構いませぬ。
  強く・・・
  どうか・・・強く。
  後編に続く

次のエピソード:強敵と書いて『とも』

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