送迎車〜カフェラテと本とカモミールと〜

サトJun(サトウ純子)

15本のカモミール(脚本)

送迎車〜カフェラテと本とカモミールと〜

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〇昔ながらの一軒家
みのる「だから、何度言ったらわかるんだ!」
「それはこっちのセリフよ!」
みのる「・・・」
みのる「俺たち、もうダメかもな」
「・・・そうね」
やすえ「待たせたね」
みのる「ああ、やすえさん。こんにちは」
みのる「今日はこのルートはやすえさんだけなんで、 大丈夫ですよ」
やすえ「そうなんだね。じゃあ・・・」
やすえ「ちょっとお願いがあるんだけど」
みのる「規則違反になってしまうので、 すみません」
やすえ「そうかね。じゃあ、仕方がないね」

〇車内
やすえ「なんか、あったかいコーヒーとか 飲みたいねぇ」
みのる「施設に行けばありますよ」
やすえ「えー、今、飲みたいんだが」
みのる「ちょっと我慢してくださいね」
みのる(マジ、年寄りってワガママだから めんどくさいなぁ)
みのる(さっさと送り届けよう)
みのる「えっ?なに? 煽られてる?」
みのる「うわっ!降りてきた!」
男性A「おい、オラァ!なめとんのか!」
みのる「最悪だ・・・」
男性A「うわぁっ!やべっ!こいつ!」
みのる「あれ?急にどうした?」
やすえ「もう行ったかえ?」
みのる「ああ、はい。 ・・・やすえさん、そのガムテープ?」
やすえ「口に貼って、白目むいて 死んだフリしてたんだよ」
みのる「だから、あの人 「やべっ」って」
やすえ「演技、上手いじゃろ?」
みのる「何やってんすか! まったく!」
やすえ「・・・で、すまんが、 トイレが我慢できなくて」
やすえ「そこの喫茶店に入ってくれないかい?」
みのる「いいっすよ」

〇テーブル席
やすえ「ふぅー」
みのる「やすえさん! 何くつろいでるんすか!」
やすえ「カフェラテ。 あんたの分も頼んでおいたよ」
みのる「・・・今回だけですよ?」
やすえ「おや、随分物分かりが良くなったねぇ」
「お待たせしました」
やすえ「・・・ここでよく、 あの人と待ち合わせをしたんだよ」
みのる「あの人って?」
やすえ「内緒!」

〇車内
やすえ「あー、またトイレに・・・」
みのる「はいはい。 今度はどこに行きたいんですか?」
やすえ「バレとったか」
みのる「わかりますよ」
やすえ「本を買いたいんだよ」
みのる「じゃ、本屋のトイレを 借りますか!」

〇本屋
やすえ「あった!これこれ!」
やすえ「あの人は、この本に恋文を挟んで 私に渡してきたんだよ」
やすえ「その恋文が嬉しくて、舞い上がって。 この本を読むのを忘れていたからねぇ」
みのる「その時の本は?」
やすえ「あの人が持って行っちゃったから」
やすえ「もう、二度と会えないんだよ」

〇車内
みのる「・・・」
みのる「で、「お願い」って、なんですか?」
やすえ「・・・いいのかい?」
みのる「今更、じゃないですか」
やすえ「確かに」

〇お花屋さん
みのる「今度は花屋さんですか」
やすえ「あの人は、ケンカをすると 仲直りに花を買ってきてくれたんよ」
花屋さん「いらっしゃいませ」
やすえ「カモミールを15本、花束にしておくれ」
花屋さん「かしこまりました」
みのる「カモミール。 可愛い花ですね」
やすえ「じゃろ?」
やすえ「花言葉は「仲直り」なんだよ」

〇車内
みのる「施設に着きましたよ」
やすえ「今日はいろいろありがとね」
やすえ「ほれ」
みのる「え?なんで、俺に?」
やすえ「ケンカしてたろ?」
みのる「聞いてたのか・・・」
やすえ「大切な人は大事にしないと」
  後悔がないように──
みのる「・・・」
みのる「あ、もしもし?俺」
「な、なによ。急に」
みのる「あのさぁ」
みのる「今から会えないかな」
  大事な話があるんだ──

コメント

  • ただ者ではないおばーちゃんだった😆
    車を運転してるだけ、片やわがまま言ってるだけなのに引き込まれてしまいました。昔はどんなだったんだろう? と人生を感じさせる一作でした♥️

  • 作者コメントの「一瞬の感情で大事なものを失わないように」とても深い言葉ですね。

    おばあちゃんみたいな機転が効く人間なら、たびたび、脱走して周りの人間を幸せにして帰ってきそう☺️

  • 人生酸いも甘いも噛み分けてきたからこそ若い世代に繋げられるものもある…
    あたたかいお話でした☺️

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