雪の上のプロキオン

びわ子

雪の上のプロキオン(脚本)

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雪の上のプロキオン
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〇一軒家
  中学二年、夏──
白鳥 季(しらとり すもも)「ベガ、行くよ」

〇住宅地の坂道
  いつもの散歩道

〇田んぼ
  のどかな風景

〇海辺の街
  都会でもない

〇海岸線の道路
  田舎でもない、この場所で

〇土手
  楽しいはずなのに
  何か足りない気がする
  私、このままでいいのかな──
白鳥 季(しらとり すもも)「なんで急に違う道いくのよ!」

〇土手
白鳥 季(しらとり すもも)「怖いなぁ」
白鳥 季(しらとり すもも)「えっ!何!?」
白鳥 季(しらとり すもも)「やだ!リードが!!」

〇川に架かる橋の下
安彦 星絆(やすひこ せな)「ハァハァ」
安彦 星絆(やすひこ せな)「なんだ!?」
白鳥 季(しらとり すもも)「ベガ、離れて!」
白鳥 季(しらとり すもも)「えっ?」
安彦 星絆(やすひこ せな)「ははは──なんだこの子、元気だなぁ」
白鳥 季(しらとり すもも)「ごめんなさい! 走るものに飛びかかる癖があって」
安彦 星絆(やすひこ せな)「気にしないで、俺、犬好きだから」
安彦 星絆(やすひこ せな)「それより大丈夫?」
安彦 星絆(やすひこ せな)「リードが体に当たって ケガとかしてない?」
白鳥 季(しらとり すもも)「怪我はなさそうです」
  西中、陸上部のジャージ
白鳥 季(しらとり すもも)「私、白鳥季と言います」
安彦 星絆(やすひこ せな)「俺は安彦星絆」
  知ってる──
  長距離で有名な“西中の彦星”
白鳥 季(しらとり すもも)「何かお詫びを・・・」
安彦 星絆(やすひこ せな)「じゃあ・・・」
安彦 星絆(やすひこ せな)「この先の自販機でスポドリ一本買ってよ」
白鳥 季(しらとり すもも)「はい!」

〇郊外の道路
安彦 星絆(やすひこ せな)「『ベガ』って星の名前?」
白鳥 季(しらとり すもも)「よく分かりますね」
安彦 星絆(やすひこ せな)「俺の名前、続けて読むと“彦星”になってさ」
安彦 星絆(やすひこ せな)「よく揶揄われて詳しくなったの」
白鳥 季(しらとり すもも)「私も『白鳥』だから デネブなんて言われてました」
安彦 星絆(やすひこ せな)「そうすると──ベガもあわせて」
「“夏の大三角形”だな(だね)」

〇山間の田舎道
  その日から、私達は出会うたびに
  ベガの散歩をするようになった
  退屈だった田舎の道が
  少しずつ輝きを帯び始めた

〇公園のベンチ
  彼はいつも前向きで
  どこかキラキラしていた

〇桜並木
  甘えず、その先を目指している姿に
  私は惹かれていく

〇競技場のトラック
  走ることに真っ直ぐで
  努力を結果に繋げる星絆

〇銀杏並木道
  中学三年生、秋──
安彦 星絆(やすひこ せな)「金メダルを取りたいんだ」
安彦 星絆(やすひこ せな)「まだ遠い夢だけどね」
白鳥 季(しらとり すもも)「私、応援するよ」
  時折、星絆の背中が遠く感じていく

〇住宅地の坂道
  私も頑張れば
  何か変わるのかな──
白鳥 季(しらとり すもも)「ベガ、どう思う?」
白鳥 季(しらとり すもも)「こら、顔舐めないの」

〇一軒家

〇シックな玄関
季の母「ベガ、妊娠してたわ」
白鳥 季(しらとり すもも)「赤ちゃんいるんだ」

〇川に架かる橋の下
  中学三年生、冬──
安彦 星絆(やすひこ せな)「受験で会えなくなるな」
安彦 星絆(やすひこ せな)「だけど、その──」
安彦 星絆(やすひこ せな)「クリスマスの日だけ会えないかな」
白鳥 季(しらとり すもも)「うん」
白鳥 季(しらとり すもも)「遅れたら、また来年ね」

〇一軒家
  クリスマス当日──

〇シックな玄関
白鳥 季(しらとり すもも)「ベガ!ベガ大丈夫!?」
季の母「病院に連れてくわ、季は?」
  心の中で何度も繰り返す
  ベガの側にいてあげたい──でも
  待ってる星絆を裏切りたくない──
白鳥 季(しらとり すもも)「私も・・・ついて行く」

〇クリニックのロビー

〇病院の診察室

〇タンスの置かれた部屋
  その夜──
  ベガも無事で、嬉しいはずなのに
  会いに行けなかった後悔が
  心を締め付けた

〇土手
  次の日も

〇土手
  その次の日も

〇川に架かる橋の下
  星絆の姿はなかった

〇住宅地の坂道
  何度後悔しても時間は戻らない
  もっと早くわかってれば
  気持ちを伝えられたのに──

〇一軒家
  一年後のクリスマス──

〇住宅地の坂道
  まだ私は、心のどこかで期待している

〇通学路

〇イルミネーションのある通り

〇クリスマスツリーのある広場
  いない──よね
白鳥 季(しらとり すもも)「帰ろ」
白鳥 季(しらとり すもも)「そっちは雪が多いよ!」

〇土手
白鳥 季(しらとり すもも)「仕方ないか」
白鳥 季(しらとり すもも)「プロキオン、初めての雪だもんね」

〇川に架かる橋の下

〇川に架かる橋の下

〇川に架かる橋の下

〇川に架かる橋の下
安彦 星絆(やすひこ せな)「探した」
安彦 星絆(やすひこ せな)「『遅れたら来年』って言ってたろ」
安彦 星絆(やすひこ せな)「俺、長距離だけじゃなく」
安彦 星絆(やすひこ せな)「待つのも得意なんだ」
白鳥 季(しらとり すもも)「──」

〇宇宙空間
  私が星絆に抱きつくと
  プロキオンの白い体が
  雪の上を跳ね回った──

コメント

  • ベガの出産に寄り添うか。星絆とクリスマスを過ごすか。
    悩んだ季は前者を選び、涙を流す。見ている僕も複雑な気分でした。😑

    それから1年後、まさか星絆と再会出来るなんて。
    こんなに嬉しい事は無い……!😭

    ベガの血を継いだプロキオンが雪の上ではしゃぐ姿が尊いですね。❄️

    2人の高校生活は輝かしいものになるでしょうね。

  • 寒さを感じる風景なのに(だからこそ)逆に心は温かくなる、素敵な青春ストーリーですね。
    スチルが効果的で(絵もかわいくて)すごいです。
    「長距離も得意だけど、待つのも得意」のセリフもカッコいいです。彼はモテそう……

  • 主要キャラが夏の大三角なのになぜプロキオン?と思っていましたが、なるほどの展開です。大切な家族である2匹が、まるで星座を結ぶように、出会いと再会をもたらしてくれるとは…心に沁みました^^
    漫画風のスチルは過去作でも使われていましたが、1枚絵と比べて情景がより伝わりやすく、感動が倍増でした!

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