第86話 変化武器クロノス(脚本)
〇ダブルベッドの部屋
2021年 イリノイ州 ピオリア郡 ピオリア市内 とあるホテルの一室
斎王幽羅「これでひとまず一件落着だね。一時はどうなるかと思ったけど···」
キング「だなー··· ··· ···あ、そういえばレッドスモーク捕まってんだろ?ツラでも見に行こうぜ」
凪園無頼「俺も行きてー!どうせ能力無効のお香焚いてんでしょー?なら『ツブシ』やりてー!」
斎王幽羅「え、何それ···」
凪園無頼「椅子で縛って足の指一本一本工業用ハンマーで潰す拷問だけどー?」
キング「怖ぇって!発想がヤクザだなこいつ···」
フェード「拷問の話か?私は墨(スミ:体に文字を掘る)と臏(ビン:膝の皿を無理やり取る)が好きだな。効果が出やすいし」
斎王幽羅「ど、どんな拷問か聞かない方がいいよねこれ···」
キング「あぁもう!痛ェ話はなしだ!それよりフェード、お前が着けてるグローブに魂の欠片与えねぇのか?」
キングのその発言に皆の注目がグローブに集中した。フェードは少し迷う様子を見せながら近くのテーブルにグローブを脱ぎ置いた
フェード「正直言ってこのグローブがキングが言ってる『クロノス』になるかはわからないし、なったとしてもきっと···」
フェード「『私を憎んでいるはずだ』」
斎王幽羅「自分から人格を消した組織の人間だから?でもそれは過去の話でしょ···?」
斎王幽羅「それにフェードが直接手を下した訳でもないし、紅色派から与えられ今の今まで大事に使ってきたんだったらさ···」
斎王幽羅「恨んでるのかな···?どう思う?キング」
キング「何とも言えねェな···まぁでもクロノスは変わったヤツだけどアーサーみたいな『人間嫌い』じゃねェし」
キング「フェードに対して『危害を加えてやろう』なんて思わねェと思うぜ?それにずっと肌に離さず着け続けたんだ」
キング「俺ら変化武器は『必要とされる』のが一番嬉しいからよ!あいつもわかってくれると思うぜ!」
フェードはそんなキングの言葉を受け止めると、ジャケットの中から『ボロボロのヘアゴム』を取り出した
斎王幽羅「これは···?」
フェード「朝鮮に居た頃、お母さんから貰ったヘアゴムで···辛い時はいつもジャケット上から握っていた···」
斎王幽羅「思い出の品なんだね··· ··· ···その···えっと···」
フェード「いや、言わなくても大丈夫だ···斎王の想像通りこれは『母さんの遺品』でもある」
フェード「父さんは徴兵されて、上官に意見したという理由で銃殺された。そして母さんは···」
フェード「脱北の時に川を渡っている最中、人民解放軍に見つかって···私を庇って死んだ」
斎王幽羅「ご、ごめん··· ··· ···言わせるつもりは···」
フェード「いや、いい···私だけ出生を隠してるのは良くないだろうし、話した方が···よりお互いを知れるだろう?」
斎王幽羅「う、うん··· ··· ···じゃあひとまず!クロノスを目覚めさせよう!」
フェードがグローブの上にヘアゴムを置くと、ヘアゴムはグローブに吸い込まれるように消失し
グローブはみるみる人の形を取った。その姿を表し新たな仲間を歓迎するムードになっていた最中
キングは明らかに『焦りの表情』を見せていた
キング「てめェ··· ··· ···『誰だ!!?』」
フェード「こいつ、キングが言っていたクロノスじゃないのか!?」
キング「違ェ!クロノスはもっとこう···『胡散臭い』感じだった!こんな···こんな『化け物』みたいな見た目じゃねェ!」
皆が一斉に戦闘態勢に入る中、渦中のクロノスは真っ直ぐフェードに向かうと
じっくりと顔を覗き込んでいた
フェードはそれに動じず、腰に差している環首刀に手をかけていた。そして相手は口を開いた
クロノス「お前が···フェードか···?」
フェード「だったら何だ、この距離ならどんな攻撃も通るぞ?下手なことはしない事だな」
クロノスはフェードが手にかけている環首刀に手を伸ばすが、フェードは直ぐさまそれに察知し抜刀する
しかし、振り下ろされた環首刀をクロノスは掴むと驚きの行動に出る
クロノス「ずるいずるい!お前はクイーンに1番信頼されてるのがずるい!ボクだってクイーンと一緒に居たのに!」
フェード「な···なんだ急に···誰に話しかけている···?」
キング「もしかして···その『環首刀』に言っているのか···?」
クロノス「ボクがクイーンの一番なんだ···いつもボクの異能力に頼ってくれてるんだ、お前なんか居なくてもクイーンは代わりを見つけるさ」
キング「話聞いてねェし···こういうトコは似てるな···」
クロノス「お前はクイーンに直接触れられなかったけど、ボクはクイーンにいつも触れてもらってる」
フェード「おい、お前···1人で勝手に喋るな。というかお前名前はなんだ?」
するとクロノスはフェードの手を握り、彼女に話した
クロノス「クイーンがつける名前なら何でもいいよ♡ボク、クイーンから与えられるモノ全部嬉しいんだ···♡」
フェード「キッ···じゃなくて、クロノスって名前じゃないのかお前」
クロノス「そこの小汚い髭ヅラはそう言ってたらしいけど、ボクその記憶が『無いんだ』」
キング「ハァ!?じゃあどっから記憶あるんだよお前!!」
キングの発言に対してクロノスはキングを睨みつけながら言った
クロノス「うるさい···クイーンとボクの時間にお前みたいなのが邪魔するな。消えろ」
フェード「おい、今この場にいる者は皆仲間だ。何が気に入らんかは知らんが、お前が敵の可能性がある以上」
フェード「皆の質問には答えてもらうぞ」
クロノス「うん、クイーンが言うならいくらでも答えるよ♡ボクはクイーンの『信頼の厚い武器』だもんね♡」
To Be Continued··· ··· ···