白鳥の歌

Reika

高い背(脚本)

白鳥の歌

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〇おしゃれなリビングダイニング
小雀音羽(明らかに和泉さんの顔色が悪くなっているわね)
三好「そうか、歌姫事件を調べてるんだな」
  三好は二人をリビングに案内すると席に座るよう、促した
三好「もう知ってると思うけど、最後に三郎と話したのは俺だ」
小雀音羽「そう、ですね」
小雀音羽「内容は?」
三好「よくある愚痴だよ」
三好「仕事辛い〜とか、意地悪されてばっかだ〜、とか」
小雀音羽「日常的にパワハラを受けていた、と」
三好「ああ」
三好「それはそうと・・・」
  三好の目が和泉の方を向く
三好「大丈夫?玲くん」
和泉玲「あ、大丈夫です!」
  慌てた様子で作り笑いを浮かべると
  コップの水を一口飲んだ
和泉玲「三郎さんは、その歌姫?」
小雀音羽「ソラさん」
和泉玲「あ、ああそうそうソラさんに恨みはあったんですね」
三好「ん?まあ捜査上ではな」
小雀音羽「はい?」
三好「いやさ、一回言ってみたことがあるんだ」
三好「『こんな嫌なら殺しちゃえば』って」
「えっ」
三好「でもあいつは血相変えてさ」
三好「『慶次さん、こんなこと思っちゃいけませんよ。殺しちゃったらもう獣ですよ』って」
和泉玲「いいこと言うなあ」
和泉玲「でもこの人は結局、獣になっちまうんだよなあ」
  和泉はどこか遠くを見つめている。彼に思いを馳せているのだろうか
小雀音羽「──何か事件を起こす前に聞いていたことはありませんでしたか?」
小雀音羽「生活が厳しいとか」
三好「いや、生活のことは・・・」
三好「いや?待て、確かあいつ母親が入院してたな」
小雀音羽「病気とか?」
三好「いいや、入院だ。集団で殴られたらしくてさ」
小雀音羽「集団で殴られた!?」
三好「『どうにかして入院費を稼がなきゃいけないんだ』とか言ってたと思う」
和泉玲「あの、犯人は?」
三好「不明だ。警察も追ってみたらしいが逃げられたようだぞ」
小雀音羽「そうですか・・・」
小雀音羽(暴行を加えた集団もあの黒幕の息が掛かってるとしたら?)
小雀音羽(探す価値もありそうね)
三好「おい、音羽」
小雀音羽「はい?」
三好「玲くんの顔色が悪い。早く帰りなさい」
  チラリと隣の和泉を見る
和泉玲「あっ」
  和泉は下手な作り笑いを浮かべ、誤魔化そうとする
小雀音羽「そうですね」
小雀音羽「帰ります」
和泉玲「いや、俺大丈夫だから」
小雀音羽「大丈夫な人間はこんな顔色悪くないから」
  席を立ち、和泉の体を引っ張る
和泉玲「おわっ!!」
小雀音羽「お忙しい中、今日はすみませんでした」
和泉玲「えっちょっ」
小雀音羽「私たちは暴行事件の方を調べていきます」
三好「うん、そうしてくれ」
三好「頑張れよ、君たち」
小雀音羽「はい」
三好「玲くんもお大事にな」
和泉玲「す、すみません」
小雀音羽「それでは、失礼します」
三好「おう、またな」
  和泉の体を軽く引っ張りながら、三好の家を後にした

〇街中の道路
小雀音羽「はあ、どうしたの」
小雀音羽「いつものバカ元気はどこいったのよ」
和泉玲「ごめん、邪魔だったよね」
小雀音羽「はあ」
小雀音羽「少し、休みましょうか」
和泉玲「どこで?」
小雀音羽「公園」

〇公園のベンチ
小雀音羽「ほら、お茶。飲める?」
和泉玲「ありがと」
  沈黙の時が流れる
  思い返せば、様子がおかしかったのは三好と会ってからだった
和泉玲「びっくりしたよな」
小雀音羽「えっ」
和泉玲「オレさ、背が高い男が苦手でさ」
小雀音羽「そう」
和泉玲「理由、聞かないの?」
小雀音羽「言いたいなら、言えばいい。聞いてほしいなら聞くし」
和泉玲「そっか」
小雀音羽「・・・」
和泉玲「・・・」
和泉玲「昔さ、家帰ったら親父がぶら下がってた」
小雀音羽「ぶら下がってた?」
和泉玲「うん、足元には椅子が倒れてて母さんはまだ帰ってきてなかった」

〇アパートのダイニング
和泉玲「お父さん?遊んでるの?」
和泉玲「はやくあそぼ」
和泉玲「お父さん、わあ!」
和泉玲「おもたいよ、はなれて」
  親父の体から変な匂いがしてさ
  子供ながらに、これは普通じゃねえなってわかった
  そんな時、母さんが帰ってきて一目散に駆け寄ったんだ
母「お父さん!?」
母「ねえ大丈夫、あなた」
和泉玲「お母さん、お父さんどいてくれないの」
和泉玲「冷たいの」
母「──っ救急車」
  親父はその後、病院に運ばれたものの死亡が確認された

〇公園のベンチ
和泉玲「重いだろ?」
和泉玲「聞きたくなかったよな、ごめん」
小雀音羽「別にいいわ。私こそ、無神経でごめんなさい」
和泉玲「いや、いいよ。わかるわけねえじゃん 俺の過去なんて」
和泉玲「うっし!辛い時は美味しいものを食べんだ」
小雀音羽「ん?」
和泉玲「行こうぜ、ラーメン屋」
小雀音羽「待って、ラーメン?」
和泉玲「そうそう、俺の昔話を聞いたんだ」
和泉玲「付き合ってもらうぜ〜」
小雀音羽「わかったわ、私の奢りね」
和泉玲「え、いいの?」
小雀音羽「あなたが辛い思いをしたのは私の責任。 だから奢る」
和泉玲「よっしゃ〜!田中からもちもち」
小雀音羽「棚からぼたもち」
和泉玲「あーそれ!」
和泉玲「やっぱ賢いねえ音羽さん」
小雀音羽「一般常識でしょ」
和泉玲「あはは!!」
  少し先をいく、彼を追う
  急に立ち止まり、彼は言った
和泉玲「聞いてくれて、ありがとう」
和泉玲「音羽さんのも、ちゃんと聞くから」
  微笑んで、私に手を差し出す
  この笑顔が眩しくて少し目を細めた
小雀音羽「ごめん、私はまだ言えない」
  ははっ
  私ってほんとずるい女

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