僕の時間を彼女に。。。(脚本)
〇図書館
この物語が始まったのは。。
そう、あれは。。
本が好きで良く図書館に通ってた時に、
僕と同じで本を何冊も積み上げて
真剣に読んでいる彼女を見つけた時から始まっていた。
灯羽(とわ)(あっ、今日も同じ席。同じ量を読んでる。。 凄いなぁ、あんなに沢山の本を真剣に読めるのは)
次の日も、そのまた次の日も。。
彼女は、同じ席で同じ量の本を真剣な眼差しで読んでいた。
ふと、彼女が次の本へ移ろうとした時に顔を上げ僕と視線が重なった気がした。
灯羽(とわ)(あっ。。彼女が僕を見てくれた? いや、違う、ただ、本を読み終わって一息ついただけだ。)
そう心の中で呟いて、ふぅと一息ついてから読みかけだった、
【時の女神クロノス】にまつわる神話に目を落とした時。
怜愛(りあ)「ねぇ、キミ。いつも同じ席で、いつも同じ本読んでるよね?」
突然、彼女から声をかけられてびっくりして本から顔を上げて彼女の顔を凝視してしまった。
灯羽(とわ)「あっ。。うん。。キミも、いつも同じ席で同じ量の本読んでるよね。」
そう僕が彼女へ話しかけると、
彼女はくすくすと小さく笑ってから、
「そうだね」と短く返事をし、少し困った表情をしていた。
それに気づいた僕は、咄嗟に声をかけてしまった。
灯羽(とわ)「ねぇ、どうして困ってるの?」
彼女は、まさか自分が困った表情を
していた事に気づいていなかった様だった。
怜愛(りあ)「っえ? 私、困った表情してた?」
灯羽(とわ)「うん。してたから、気になって。。ごめん。見ず知らずの僕が心配して。」
怜愛(りあ)「んーん。心配してくれてありがとう。。キミの読んでる本はいつも同じ。 【時の女神クロノス】にまつわる神話だね」
そう言って、僕の持っている本をそっと指さす彼女。
灯羽(とわ)「あっ。。うん。」
怜愛(りあ)「ねぇ、キミは、【時の女神クロノス】を信じているの?」
灯羽(とわ)「んー。。信じてるか、信じてないかって聞かれると。。そうだね。信じたいかな。」
そう返事を返す僕を見た彼女は、
小さく「そっか。」と呟いて、
持っている本に視線を落とし、目を通していた。
何で【時の女神クロノス】を信じてるのか?
何て聞いてきたんだろうか。。
彼女も、信じている?
いや、それとは別の何かがあるのかな?と
この時の僕はそう感じていた。
季節は春、夏、秋、冬と流れ。
彼女と、図書館で毎日言葉を交わし、
仲良くなり、また同じ席で会おう。
と僕たちの中で決まった約束だった。
何度目だろうかまた春に戻って
行く中で、いつもの図書館に足を運んだ僕は、
いつもの席に座っているであろう彼女の姿を探した。
でも、見当たらなかった。。
どうしたんだろう? 何か用事かな?
そう思って僕は、いつもと変わらず、
同じ本を本棚から取り、
同じ席に座ろうと、
図書館の窓から彼女が僕に手を振って
居るのに気づいて、手を振り返そうと
した瞬間。。
彼女の身体が宙にまったのだった。。
僕は何が起きたのか、思考が停止してしまった。
灯羽(とわ)「お願いだ。。身体動いて。」
何度もそう自分の身体に願い続けて
ようやく、動けるようになった時には、
図書館前に、救急車とパトカーが来ていた。
手に持っていた本を持ったまま、
図書館から駆け出して行く。
〇市街地の交差点
灯羽(とわ)「だめだ。。まだ、キミに伝えられてない。」
僕が駆けつけると、血まみれの彼女が
救急車の担架に乗せられて、
病院へと向かって行ってしまった。。
恐らく、あの出血量と損傷じゃ。。
助からないだろうと。。
その時に僕は手にしていた、本の中で
【時の女神クロノス】の所に行く方法を
急いで探した。
震える手で、ページをめくり、次のページもめくり。。
ようやく見つけた僕は、そのページに
書かれている事をその日の夜に
自宅で実施した。
〇男の子の一人部屋
灯羽(とわ)「時の女神クロノス様、本当にいらっしゃるのなら、僕の時間で彼女を助けたいんです!!」
そう僕が願いを口に出して、
誰もいない部屋で声を上げると、
急に当たりが真っ暗になり。。
〇魔法陣2
気がつくと、
【生と死の時の狭間】と思われる場所に立っていた。
大きな時の歯車が宙へ浮かんでいて、
その前に立っていたのは。。
時の女神クロノス「私を呼んだのは、貴様か?」
本で何度も見た、時の女神 クロノスだった。
銀の長い髪に、青紫の瞳、妖美な服を纏った神秘的な姿。
目の前に居るクロノス様に僕は自分の願いを告げる。
灯羽(とわ)「貴女が。。時の女神 クロノス様ですか?」
目の前にいるのが本当にクロノス様なのか
実感がなかった僕は、失礼かと思ったが
確認をした。
時の女神クロノス「そうだ。私が時の女神クロノスだ。 私の空間に入って来た人間は、 貴様が初めてだ」
クスッと楽しそうに口角をあげた
クロノス様はとても綺麗だった。
時の女神クロノス「して、貴様の願いはなんだ?」
灯羽(とわ)「はい、僕の時間で彼女が死ぬ前に 助けたいんです!! どうか、どうか。。お願いします!!」
僕にはもう、クロノス様を
頼るしかなかった。
それだけ切羽詰まっていたのだ。
時の女神クロノス「ふむ、いいだろう。 そこまでの強い思いがあるならば、 貴様の生きる時間で彼女の時を戻してやる」
そういったクロノス様は、僕の額に
人差し指を当て、僕の生きれる時間を、
病院で白い布をかけられた彼女へ
分け与えた。
時の女神クロノス「これでいいか? 貴様が目覚めた時、彼女と出会った頃に 時が戻っているはずだ」
時の女神クロノス「どんな選択を選んで彼女を助けるかは、 貴様次第だぞ」
クロノス様がそう告げると、
僕の目の前が真っ黒になり、
気がつくと、いつもの図書館にいた。
〇図書館
同じ席、同じ本の量を読む彼女が
僕の視線に入り
[今度は死なせたりしない!]と、
心に刻んだのだった。
灯羽(とわ)「ねぇ、いつも同じ本を読んでるね」
今度は、僕から彼女へ声をかけてみた。
怜愛(りあ)「っえ? あ、そ、そうだね。」
急に声をかけられた彼女は、
僕の事を不審そうに見ていた。
灯羽(とわ)「ご、ごめん。。 急に話しかけられて怖いよね。。 いつも同じ量の本読んでたから。。 気になってて。」
僕が、そう話すと彼女は。。
怜愛(りあ)「そうだったんだね。。 でもそう言うキミも、同じ本を 毎日読んでるけど、飽きない?」
前回には、なかった会話が始まった。
灯羽(とわ)「う、うん。 クロノス様の神話に興味があって」
怜愛(りあ)「そうなんだ。。本当に、 【時の女神クロノス】は存在するのかな?」
灯羽(とわ)「い、いると思うよ!」
だって、と言いかけたのを飲み込んだ僕は。
いきなり、キミを死から助ける為に
時を巻き戻したなんて話は、
信ぴょう性もないし、
信じて貰える訳がないと。。
そう思って、言うのをやめた。
怜愛(りあ)「そっか、本当にいるのなら、会ってみたいな。。 【時の女神クロノス】に。」
そう小さく呟いた彼女の瞳には、不安と悲しみが伺えた。
何がそこまで彼女を
追い詰めているのか分からず。
僕は何と声をかけたら正解なのか。。
悩んでいた。。
怜愛(りあ)「ねぇ、キミは、時の女神クロノスに会えたら何を願うの?」
彼女からの言葉に、
一瞬思考が停止仕掛けたが。。
僕は、はっきりと告げた。
灯羽(とわ)「大切な人を死ぬ運命から助けたい」
僕の答えを聞いた彼女は、
「そっか。。そうだよね。。」と
呟いて少し暗い表情になっていた。
この時は、僕は何も知らなかった。。
彼女の言葉に含まれてる意味も、
彼女の不安そうな表情も。。
彼女の想いも何も、
知らないで僕の生きる時間を使って、
時を巻き戻していた事に。
〇市街地の交差点
また季節が移り行き、何度目かの春。。
僕は、彼女が図書館前に来るまで
ずっと外で待っていた。
僕を見つけた彼女が、
信号が青になった横断歩道を走って
図書館の方に向かっている時、
彼女に迫るトラックが見えて僕は、
急いで彼女の元へ走り出し、
彼女の腕を掴んで自分の方に引っ張った。
彼女が図書館の前に行ったのを
見た僕は、自分の身体がトラックと
ぶつかる寸前だと気づいた時。。
せっかく死から助けた彼女が、
横断歩道に戻ってきて、
僕の事を力いっぱい突き飛ばした。
突き飛ばされた僕は、
彼女の方を見ると「ごめんね。」と
声がしたと思うと、
彼女の身体がトラックに轢かれ宙をまい、
また血だらけで道路に投げ出されたのを
目の当たりにして、こんなはずじゃと
涙で前が滲んで行く。
灯羽(とわ)「だめだ。。だめだよ。。 キミがいなくちゃ。。僕は。。 嫌なんだ。。。こんなはずじゃ。。 なかった。」
〇図書館
涙を流しながら僕はまた、
図書館に入り、急いでクロノス様の本を
手にし、クロノス様のいる空間に行く。
〇魔法陣2
【生と死の時の狭間】に帰ってきた僕を、
クロノス様は訝しげに見ていた。
時の女神クロノス「貴様、失敗したのか。。せっかく私が時を巻き戻してやっと言うのに。」
時の女神クロノス「助けたとおもったら、逆に助けられて、 彼女を死なせるとはな」
灯羽(とわ)「クロノス様、申し訳ありません!! もう一度、もう一度、僕の生きる時間を 彼女に渡してください!! 次は、必ず。」
時の女神クロノス「なぜ、そんなに彼女にこだわる?」
灯羽(とわ)「大好きなんです。。 僕のエゴだってわかってます!!」
灯羽(とわ)「僕の1人よがりだともわかってます!! でも、どうしても、僕は彼女と共に 生きたいんです!!お願いします!!」
必死に僕が懇願すると、
クロノス様は「そうか。」と呟き、
また僕の額に人差し指を当て、
病院で白い布をかけられた彼女へと
僕の生きる時間を与え、
時をまた巻き戻したのだった。
〇図書館
同じ日常を繰り返し、同じ会話をし、
時には違う会話も楽しんでいた僕は。。
助けようとしても、助けられずに
何度も彼女の死を目の前で見るのだった。
〇魔法陣2
その度に、クロノス様の所へ訪れる僕に
対して、呆れた様な哀れんでる様な
そんな表情で。。
時の女神クロノス「また、貴様か。。。 はぁ(ため息)、もう何度目だ? ここに来るのは!!」
そういったクロノス様も、
僕の目を見ては、ため息をついて、
仕方なく、僕の額に人差し指を当て、
彼女に生きる時間を分け与え、また、
彼女を助ける為に時を巻き戻して
貰うのを幾度となく繰り返した。
そして今現在。。。
クロノス様のいる
【生と死の時の狭間】で僕は、泣き叫んだ。
灯羽(とわ)「どうしてっ。。。どうしてだよっ。。どうして、何度も助けようと動いているのにっ。。。何で助けられないんだよぉっ!!!」
叫び声が聞こえたのか、クロノス様は
哀れんだ目を僕に向けていた。
時の女神クロノス「貴様は、本当に何も分かっていないのだな」
何も分かっていない?とは、
どういうことだろうか。。
僕は、助けたい一心で
自分の生きる時間を彼女へ分けている
だけなのに。。
灯羽(とわ)「それはっ。。どういう事ですかっ!!!」
泣きながら声を張り上げてしまった
僕に対して、クロノス様は
冷たく言い放った。
時の女神クロノス「貴様の生きる時間を私に捧げる事が、 どういう事なのか。」
灯羽(とわ)「そんな事考えてる余裕はないっ!! 僕の生きる時間は、僕のものだっ!!! 大好きな彼女を死なせたくないだけなんだっ!」
僕の悲痛な叫びを聞いたクロノス様は、
深いため息を吐いた後に、
最後の通告を下した。
時の女神クロノス「貴様に残された時間は、ほんの僅かだ」
ほんの僅かだとしても、
助けられる可能性があるのなら。。
彼女の為に、喜んで捧げよう。。
灯羽(とわ)「時の女神クロノス様!! 最後のお願いです!! 僕の残りの時間で、もう一度彼女を!!」
時の女神クロノス「それが貴様が出した答えか。。 最後の通告をしたというのに。」
それだけ言うと、また僕の額に
人差し指を当てた。
【生と死の時の狭間】に佇んだ
クロノスはというと、目の前の女の子に
視線を落とした。
時の女神クロノス「貴女も、報われないわね。。 あの男の子と同じ願いを何度も 繰り返してるなんて。。」
目の前にいる女の子にも、
先程の男の子と同じ様に、
額に人差し指を当てたのだった。
時の女神クロノス「やはり、人間は。愚かだ。。 何故自分の気持ちだけで 行動をするのか。。 私には理解が出来ない。」
静かに呟いたクロノスは、
姿を消すのだった。
〇市街地の交差点
時間が巻き戻った世界に戻ってきた僕は。。
また、彼女の死ぬ運命から助けようと
必死に動いていたが、決まった運命を
覆す事は禁忌とされている事など。。
僕には、考えるだけの余裕も、
理解するだけの知識もなかった。
僕に残された時間は本当に残り僅かだと、
【時の女神クロノス様】に言われるまで、
気づけなかった。
それだけ、必死だったからだ。
彼女が死ぬ運命をどうにかして、
助けたかったから
僕にとって大切なキミが。。
何度も僕の目の前で命が消えていくのは。。。
耐えられなかった。。。
トラックが迫っている事に気づいた僕は、
彼女を抱きしめて、
僕がトラックの背になるように立つと、
彼女は悲痛な目に涙を溜めていた。
トラックに跳ねられ、
宙をまった僕達は、道路に投げ出されて、
血まみれになりながらも、
彼女の手を握り、消えゆく意識の中、
彼女へ想いを伝えていく。
灯羽(とわ)「助け。。。られなくて。。。。 ごめん。。。。一緒に。。。。。 生きられ。。。なくて。。。ごめん。。 僕は。。。」
灯羽(とわ)「怜愛の事が。。。。大切で。。。 失いたく。。。。なかった。。 怜愛と共に。。。。生きたかった。。。 大好き。。。だよ。」
【時の女神クロノス様】
僕の生きていた証は。。。
クロノス様が持っていて下さい。。
大好きな彼女を護れなくて。。
ごめんなさい。。。
でも、最後は。。。
彼女を1人にせずに。。。
一緒に。。。居れたので。。。
感謝。。。してます。。。
どうか。。。。
僕と同じ過ちを。。。。
他の人が。。。
犯しませんように。。。。