プロフェティック・ドリーム

坂道月兎

#4 アリスの夢(脚本)

プロフェティック・ドリーム

坂道月兎

今すぐ読む

プロフェティック・ドリーム
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇男の子の一人部屋
  八神とともに兄の探偵事務所を訪れてから、数日が過ぎた。
  翌日のトップニュースや天気などちょっとした正夢はみるものの、今までのような自分の未来に関わる夢は一度も見ていなかった。

〇教室
八神直志「今朝のメールにはビックリしたわ」
八神直志「まさか俳優の力丸とアイドルの優実が電撃結婚とはね・・・」
八神直志「涼平の情報が一番早かったな!」
百瀬涼平「俺はもうちょっと役に立つ正夢を見たいんだけど・・・」
八神直志「十分スゴイし、面白いと思うけど」
百瀬涼平「・・・うまくコントロールする方法ってないのかな」
  力めば力むほど、見る夢が細切れになっているような気がする。
八神直志「・・・事務所に行ってもう一度生方さんに相談してみるのは?」
百瀬涼平「そうだな」
  俺たちは帰りにまた探偵事務所に寄ってみることにした。

〇応接室
生方千尋「見たい正夢を見られるようにする方法、かあ」
百瀬涼平「生方さんなら、なにかいい方法を知ってるんじゃないかと思って」
生方千尋「言霊って言葉があるのは知ってるよね。 口に出した言葉が現実になる ・・・」
生方千尋「正夢も同じようにコントロールできるんじゃないかな」
八神直志「ただ頭の中で願うだけじゃだめだってことですか?」
生方千尋「うん。言葉として口に出して初めて意味を持つんだよ」
八神直志「なるほど」
生方千尋「それも、具体的な方がいいよ」
生方千尋「たとえば一週間後の夢を見たい、誰かに関する夢がみたい・・・そんな風にね」
百瀬涼平「やってみます!」
生方千尋「あと、リョウの夢ノートを見て思ったんだけど、夢の中でも、自分の意志で動くことができるんだよね?」
百瀬涼平「はい」
生方千尋「だったら、夢の中で日付や時間を確認する癖をつけておくといいよ」
百瀬涼平「わかりました」
  元々オカルトオタクの生方さんは、スラスラとアドバイスしてくれた。
生方千尋「ねえ、リョウ」
生方千尋「この正夢、これからどう転ぶかわからないけど、生かしてみる気はない?」
百瀬涼平「生かすって?」
生方千尋「この事務所も忙しくなってきたし、人手が欲しいんだよね」
生方千尋「仕事してみない?」
  そろそろ定期バイトを探したいと思っていた俺には、願ってもない申し出だ。
百瀬涼平「やりたいです!」
生方千尋「なら、決まり」
生方千尋「テツも、全然知らないところでバイトされるより安心だろう?」
百瀬哲平「それはそうだけど・・・」
  心配性の兄は乗り気ではなさそうだったが、八神も一緒に・・・ということで最終的には許可してくれた。

〇住宅地の坂道
百瀬涼平「ごめんな、八神。 なんか巻き込むことになって」
八神直志「いや、むしろラッキーって思ってるけど」
八神直志「探偵事務所でバイトなんて、めちゃくちゃ面白そう」
百瀬涼平「・・・ありがとう」
八神直志「お前の正夢のことも、生方さんや哲平さんがいればいい方向に導いてくれそうだし」
百瀬涼平「そうだな」

〇男の子の一人部屋
  その夜、俺は生方さんからのアドバイスを実践してみることにした。
百瀬涼平(わざわざ口に出すってのは意外と勇気がいるけどな)
  そうは思ったが、照れている場合ではない。
  ベッド脇にノートとペンを用意すると、布団をかぶり、声に出して呟いてみた。
百瀬涼平「探偵のバイトで役に立つ夢を見たい。 なるべく一週間以内に起きる出来事」
  目を閉じると、すぐに眠りが訪れた。

〇応接室
  気づくと、探偵事務所に立っていた。
  これは夢だ。俺はすぐに気がついた。
百瀬涼平(そうだ、日時の確認!)
  生方さんに言われたことを思い出し、俺はポケットに入れている携帯電話を取り出した。
百瀬涼平(明日の18時20分か・・・)
  ソファには兄が座り、何かの書類に目を通していた。
百瀬涼平「兄貴・・・」
百瀬哲平「お、悪いな、涼。 もうちょっと待っててくれ」
百瀬哲平「そろそろ生方が戻ってくるはずだ」
  ちょうどその時、ガチャリと事務所のドアが開いた。
生方千尋「テツ! ああ、リョウもいたの」
  腕に抱えていたのは、まだら模様の可愛い猫だ。
百瀬哲平「見つかったのか!?」
生方千尋「うん、見ての通りね」
  今回の依頼は、迷い猫の捜索だったらしい。
  猫はすっかり生方さんに懐いている。
百瀬涼平「生方さん、この子はどこで?」
生方千尋「この近くの公園で見かけたって情報があったから、探してみたらツツジの植え込みの中で丸くなってたんだよ」
百瀬哲平「よかった! すぐに飼い主連絡しよう」
  兄はそう言ってパソコンを開いた。

〇男の子の一人部屋
  ハッと目を覚ました。
百瀬涼平(迷子の猫か ・・・正夢通りなら、公園にいるはずだ)
百瀬涼平(先回りして探してみよう)

〇広い公園
  事務所に行く前に、公園のツツジを調べてみた。
  夢で生方さんが言っていた通り、植え込みの隅に猫がいる。
百瀬涼平「よし、おいで!!」
  猫は怯えた様子で今にも逃げてしまいそうだった。
  慌てて、持ってきたキャットフードを出して誘う。
  にゃおん、と近づいてきた猫を何とか捕まえ、俺は事務所に向かった。

〇事務所
  いきなり迷い猫を連れて訪れた俺に驚いていたふたりだったが、改めて正夢を本物だと確信してくれたらしい。
生方千尋「リョウをバイトに誘って正解だったな~」
生方千尋「テツ、今日の分はリョウにボーナス上乗せしてあげよう」
百瀬哲平「了解。飼い主の子も喜ぶぞ」
  哲平が連絡すると、飼い主はすぐに事務所にやってきた。

〇事務所
???「・・・こんにちは」
百瀬涼平(うわ、すごい美少女だな・・・)
  猫を引き取りに来たのは同じぐらいの年の、お人形のような華やかな容姿の少女だった。
  さらり、と長い黒髪が揺れる。
生方千尋「この子で間違いない?」
  生方さんが聞くと、目を見開いて猫に駆け寄った。
???「鈴! よかった」
  猫の方も嬉しそうにゴロゴロと喉を鳴らした。
???「ありがとう、ございました」
  深々とお辞儀し、代金を支払う少女は、喜びの対面だというのにまったく表情には出ていない。
  よく見ると、猫を見る目が優しい・・・というぐらいだった。
百瀬涼平(笑ったら、きっともっと可愛いだろうになあ)
  その時、美少女はキッと俺を見て冷たい視線を浴びせた・・・ように見えた。
百瀬涼平(な、なんだ!? 今、睨まれたような・・・)
  少女が帰った後、哲平が呟いた。
百瀬哲平「すごいきれいな子だったな」
百瀬涼平「ああ。まるで芸能人みたいだった」
生方千尋「ん? リョウが好きなのはユイちゃんだと思ってたけど・・・浮気?」
百瀬涼平「そんなんじゃないですって! だって、すごい美少女だったでしょ?」
生方千尋「うーん、確かに綺麗な子だったけど、美形は自分の顔で見慣れてるからなあ」
百瀬哲平「・・・呆れたナルシストだな」
生方千尋「俺は外見の美醜に惑わされないんだよ」
百瀬哲平「物はいいよう、だな」

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:#5 心を読む力

成分キーワード

ページTOPへ