プロフェティック・ドリーム

坂道月兎

#5 心を読む力(脚本)

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〇住宅地の坂道
  早朝にメッセージを送ると、八神は約束通り待ち合わせ場所に来てくれた。
八神直志「おはよう、涼平」
八神直志「どうしたんだよ、朝っぱらから呼び出すなんて」
  朝からさわやかな八神に、俺は美少女に会った話と、昨夜見た夢の話をした。
八神直志「・・・なるほどな、お前の正夢だと、その子はうちの学校に転校してくるのか」
百瀬涼平「ああ、たぶん同じクラスに」
八神直志「・・・でも、なんでつき合ってると思われるんだ?」
八神直志「オレも勘違いしてたんだろ」
百瀬涼平「多分、探偵事務所で会ってるから・・・」
百瀬涼平「転校早々に、ふたりきりで話してたのが噂になった・・・って感じだった」
八神直志「ふうん? けど、事務所では会話もしてないんだろ?」
八神直志「なんでその美少女とふたりきりで話すことになったんだろ?」
百瀬涼平「まったくわからない。心当たりもない」
八神直志「なら、そのふたりきりの状況を回避することだな」
八神直志「そこにオレが入ってれば多分誤解されることはないだろ」
百瀬涼平「ああ、おそらく・・・」
八神直志「なら、オレに任せとけ、協力するからさ」
八神直志「花ノ木さんに誤解されるとか、最悪だもんな」
  八神の笑顔に、ホッとする。
  やはり今回のポイントは八神に話して味方につけておくことなのかもしれない。
百瀬涼平(もしあの夢を見てなかったら・・・美少女のこと、わざわざ八神に話すって発想がなかったからな)
  正夢のまま、誤解されたとしても、うまく弁解することもできなかっただろう。
  正夢を見られてよかった・・・心からそう思った。

〇教室
  教室がざわざわと騒がしい。
  八神には敵わないものの、長身で女子に人気のある四谷慧が教室に飛び込んできた。
四谷慧「おい、今日転校生来るらしいぜ!」
  八神が振り返って俺を見る。
  俺は黙って頷いた。
  美少女──笹島アリスが俺たちの学校に転校してきたのは、正夢を見た翌日だった。

〇まっすぐの廊下
笹島アリス「ねえ」
百瀬涼平「・・・・・・」
  転校初日の昼休み、笹島アリスが俺を呼び止めた。
  その美少女ぶりにクラス内は騒然としたものの、当のアリスは皆からの質問攻撃にはまったく反応しなかった。
  そのため、すぐに「変わり者」「お高くとまってる」と悪評を轟かせてしまっていた。
  なるほど、その変わり者が自分から話しかけた相手──それだけで注目されるには十分だろう。
  実際、何人かの生徒は足を止めて興味深そうにこちらをうかがっていた。
八神直志「笹島さん、だよね? 涼平に何か用?」
笹島アリス「アンタに話してない」
八神直志「・・・それは失礼」
百瀬涼平「・・・なに、笹島さん」
笹島アリス「・・・探偵のところで会った」
百瀬涼平「覚えてる。・・・鈴は元気?」
笹島アリス「・・・別に、普通」
百瀬涼平(そっちが話しかけてきたのに、つんけんしすぎだろ・・・)
  アリスがギロリ、とこちらをにらむ。
笹島アリス「話があるの」
  チラリ、と視線を八神に向けた。
八神直志「・・・オレに消えろってこと?」
笹島アリス「そう」
八神直志「それは無理だなー」
八神直志「事情があってオレ、今涼平から離れられないんだよね」
  アリスは挑むように八神を見たが、意外にもすんなりと引いた。
笹島アリス「ならいい・・・一緒で」
  俺たちは3人で屋上へ向かった。

〇学校の屋上
  屋上へ着くなり、アリスは俺に人差し指を突き付けた。
笹島アリス「変わった能力、持ってる」
百瀬涼平「・・・!?」
  反応したのは、八神が先だった。
八神直志「なんで知ってるんだ?」
笹島アリス「・・・この人に、話してるの」
八神直志「知ってるけど! 気になるだろ。なんで?」
笹島アリス「見えるから」
八神直志「見える!? なにが?」
笹島アリス「私にも・・・力がある。だから見える」
八神直志「・・・マジ?」
笹島アリス「・・・信じるの?」
八神直志「まあ、涼平って前例があるからな」
  アリスは自分で言っておいて、驚いたように八神を見ている。
笹島アリス「あなたは?」
百瀬涼平「俺も・・・信じる」
百瀬涼平「何より俺に能力があるって言い当ててるんだから」
  アリスはじっと俺を見据えた。
笹島アリス「・・・未来が見える、の?」
  確認するような言葉に俺は頷いた。
百瀬涼平「ああ。正夢を見る」
  笹島は大きく目を見開いた。
笹島アリス「正夢・・・そう」
百瀬涼平「笹島の能力は?」
笹島アリス「苗字は嫌い、呼ぶならアリスにして」
  言いにくそうに俯いた後、決心したように息を吐いた。
笹島アリス「私は人の心が読めるの」
  その言葉には、なぜか苦悩がにじんでいた。

〇応接室
生方千尋「いい感じにたまり場になってきたね」
  そう言いながら、生方さんは手慣れた動作で紅茶を淹れてくれた。
八神直志「すみません、なんか学校では詳しく話したくないってことで」
百瀬哲平「深刻な話なのか?」
  八神は、アリスが言っていた能力の話をする。
  アリスは黙ってその様子を眺めていた。
生方千尋「人の心が読める・・・読心術ってやつだね」
百瀬哲平「本当に、そんなことが?」
笹島アリス「・・・所長さんの考えてること」
百瀬哲平「えっ・・・!?」
笹島アリス「・・・『涼は、結衣からアリスに乗り換えるつもりなのか・・・?』 ユイって誰?」
百瀬哲平「・・・・・・」
笹島アリス「生方さんは、面白がってる・・・?」
生方千尋「こんな身近にすごい能力持った子がいるなんて、面白いに決まってるでしょ?」
笹島アリス「・・・八神直志・・・半信半疑だったけど今やっと信じた?」
笹島アリス「私が生きづらそう? そう、その通り。 おかげでずっと苦しかった」
笹島アリス「こんな能力いらない」
八神直志「・・・・・・」
笹島アリス「百瀬涼平は・・・私が近づくことを恐れてる? 」

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