ハレの惡左府

山本律磨

Ⅷ(脚本)

ハレの惡左府

山本律磨

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〇後宮の廊下
  頼長の随身 公春(こうしゅん)
鬼丸「すっげー(凄い)ひっれー(広い) おっきー(大きい)」
公春「この東三条殿は藤原摂関家の本拠地。 本来は儀式用の館なの」
公春「我が君は氏長者としての自覚を その身に染み渡らせるため、 常時ここに滞在されているってわけ」
鬼丸「えっれー(偉い)かっけー(恰好良い)」
公春「鬼丸ちゃんと言ったわね。 改めて左府様にご挨拶なさい」
鬼丸「もう何べんも何べんも会ってるよ」
公春「そんな汚くてクッサイ恰好じゃなくて、 改めて身ぎれいにして挨拶なさいって 言ってるの」
公春「見た所『素材』はいいんだから」
鬼丸「ソザイ?」
公春「はい。これを着て」
鬼丸「なんだこのヒラヒラ」
公春「お気に召さないなら他にもあるわよ」
公春「殿は衆道を嗜まれているの。 アナタもここで漢を磨きなさい」
鬼丸「しゅどー?何それ?」
公春「夜のお相手ってこと」
鬼丸「短い間でしたがお世話になりましたァ!」
公春「逃がすかァーーーッ!」
鬼丸「やめろ!放せ!ばか!ヘンタイ!」
公春「こらこら~ そういう多様性の無さでは、 都で暮らしていけないぞ~」
鬼丸「いやだ!けえる(帰る)! オラ、田舎さけえる!」
公春「大丈夫大丈夫。 夜の左府様はとってもお優しいから」
公春「そしてあの方の最初のお相手は何を隠そう」
鬼丸「あーあーあー!聞きたくありませーん!」
「いやああああああん!」

〇英国風の図書館
左府「似合うではないか」
鬼丸「オソレイリマース・・・」
左府「では、着替えて次の勤めに移れ」
鬼丸「何ですかこの箱?」
左府「中に文が入っておる。通告書だ」
鬼丸「通告?」
左府「私は愚者共に裂く時など一刻もないゆえな」
鬼丸「なんか凄く嫌な予感のする仕事っすね」
左府「疾く、勤めよや」

〇後宮前の広場
  平安京 某公達邸
貴族「・・・」
鬼丸「・・・」
貴族「承知した」
鬼丸「あの~お返事を頂くよう言われまして~」
貴族「承知した!それでよいだろう! とっとと左府に伝えよ!」
鬼丸「は、ははーっ!」
  某神社
宮司「よよよ。何たる無体な言いざまか」
鬼丸「あの~泣く前にお返事を・・・」
宮司「左府様に伝えられませ! 断じて隠し金などございませぬ!」
鬼丸(オイラに言われてもなあ・・・)
宮司「ええい、今に神罰が下ろうぞ!」
鬼丸(オイラに下られてもなあ・・・)
  某諸大夫の舘
貴族「ひ、ひ、ひゃあああああ~!」
鬼丸「あの~お返事を~」
貴族「あひゃあああ!ひぎゃあああ!」
鬼丸(何書かれてたんだろ?)

〇屋敷の一室
鬼丸「あ~疲れた~。 心っ底くたびれた~」
鬼丸「どこに行っても文句言われてばかり。 山暮らしの方がよっぽど気楽だよ」
信西「お待たせ致しました」
  雅仁皇子の側近 信西入道
鬼丸「ああ、いえ、全然・・・」
信西「すぐにお返事を書きますので、 斯様なものでよろしければお食べ下さい」
鬼丸「い、いいんすか?」
信西「唐菓子ゆえお口に合いますかどうか」
鬼丸「あ、合います! 合わせます! 合わせてみせます!」
信西「泣くほど喜んで頂けて何よりです」
信西「お急ぎの所、申し訳ありません。 ゆっくりと墨を擦り魂を込め、 しかる後一気に書き上げる性分にて」
鬼丸「一気に擦って 更に一気に書き上げる人もいますけどね」

〇英国風の図書館
左府「おりゃああああああ!」

〇屋敷の一室
鬼丸「もうええわ!」
鬼丸「ああ、いや、独り言です」
信西「悲しいことですね」
鬼丸「悲しい?」
信西「そういうお方は、恐らく 思考に筆が追いつかないのでしょう」
信西「世の人々もしかり。 またその考えに追いつけません」
信西「なんという、孤独」
鬼丸「・・・」
信西「はい。出来ました」
信西「遅くなりましたね。 左府殿に叱られませんか?」
鬼丸「平気っす。今夜は出かけてるんで」
鬼丸「天下の白面武者平清盛公にご推参! ・・・つって」
信西「・・・清盛」
信西「ふむ・・・」

〇城の会議室
  『それは何より・・・』
  CONTINUED

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