僕と半分ゾンビな妹は対話でゾンビを理解する。

薊未ヨクト(あざみよくと)

泥団子事件(脚本)

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〇工事現場
樺島 ここね(かばしま ここね)「お兄ちゃーん!早く早く〜!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「そんなに焦らなくてもアイス屋は逃げないぞ」
「危ないだろう!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「工事現場ってよく大きな声が聞こえてくるよな」
「じゃあこのゾンビはどうするんだ!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「悪い!少し様子を見てくる! アイス屋は後で必ず行くから」

〇倉庫の裏
作業員1「こんなもの渡してきました! 妨害のつもりでしょうか?」
作業員2「俺に聞くな!石でも投げて追っぱらえ!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「失礼、ゾンビと聞こえたもので。どうかしましたか?」
作業員2「あいつが土山から動かないせいで作業が進まないんだよ」
樺島 一心(かばしま いっしん)「うぎゃあぁ!近あ!」
ゾンビ「うーあー♪」
樺島 一心(かばしま いっしん)「こ、ここね!この人は、なんて言ってるんだ?」
作業員2「君、小学生?何で子供が出てくるんだ」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ここね、僕の後ろへ」
樺島 一心(かばしま いっしん)「これからゾンビと接触します。 大変危険なので避難して下さい」
作業員2「仕方ないな さっさと終わらせてくれよ」
樺島 ここね(かばしま ここね)「これが終わったらアイス屋さん行くんだからね」
ゾンビ「うーあー♪」
樺島 ここね(かばしま ここね)「おひとつ召し上がれ♪だって」
樺島 一心(かばしま いっしん)「この泥団子をか?」
樺島 ここね(かばしま ここね)「食べないとお話し、してくれないかも」
樺島 一心(かばしま いっしん)「う、仕方ない」
樺島 一心(かばしま いっしん)「モグモグ! オイシイナー⤴コノダンゴー!」
ゾンビ「あー?あーうー♪」
樺島 ここね(かばしま ここね)「塩が効いてておいしいだろう?だって」
樺島 一心(かばしま いっしん)「しまった、おにぎりだったか」
樺島 ここね(かばしま ここね)「お兄ちゃん、なんだかおままごとしてるみた〜い」
樺島 一心(かばしま いっしん)「泥団子だぞ。食べるフリするしかないだろう」
樺島 一心(かばしま いっしん)「それよりどこから来たのか聞いてくれ」
樺島 ここね(かばしま ここね)「うーあー?」
ゾンビ「・・・」
樺島 ここね(かばしま ここね)「答えてくれないみたい。また泥団子を丸め始めちゃったよ。どうしよう?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ありがとうここね と、なると」
樺島 一心(かばしま いっしん)「お疲れ様です。迷いゾンビを発見しましたが、通訳が困難で」
「え?ああ、はい。妹も一緒ですが」
樺島 ここね(かばしま ここね)「げ、お兄ちゃん その協力者って」

〇研究施設の一室
円谷 理子(つぶらや りこ)「どうしよう。久しぶりだから練習しようかしら」
円谷 理子(つぶらや りこ)「お久〜!ここねちゃあん、元気してた〜?」
円谷 理子(つぶらや りこ)「や、馴れ馴れし過ぎるわ!ここねちゃんと対等な立場で接するなんて出来ない!」
円谷 理子(つぶらや りこ)「おかえりなさいませ♡ここねお嬢様 なんなりとご命令をこの」
樺島 一心(かばしま いっしん)「こんにちは、円谷さん」
円谷 理子(つぶらや りこ)「あわわ!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「大丈夫ですか」
円谷 理子(つぶらや りこ)「おホン、お待ちしてました。樺島さん」
円谷 理子(つぶらや りこ)「と、ここねちゃん」
樺島 ここね(かばしま ここね)「・・・」
樺島 一心(かばしま いっしん)「すみません。いつもこんな調子で」
円谷 理子(つぶらや りこ)「いえ、全く気にしていません」
円谷 理子(つぶらや りこ)(ここねちゃんに避けられたここねちゃんに避けられたここねちゃんに避けられたここねちゃんに避けられたここねちゃん)
樺島 一心(かばしま いっしん)「ご協力、感謝致します。泥団子用の土もこんなに沢山用意してくださったんですね」
円谷 理子(つぶらや りこ)「ゾンビ(とここねちゃん)の為ですから。それで、こちらが例の?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「何処からやってきたのか手がかりがあればいいのですが」
円谷 理子(つぶらや りこ)「必ず見つけますので、この人が泥団子を作っている間、調査させて頂きます」

〇黒
円谷 理子(つぶらや りこ)「年齢は50代後半から60代、性別は女性」
円谷 理子(つぶらや りこ)「女性の割に随分とゴツゴツした手ですね」
樺島 一心(かばしま いっしん)「手仕事の多い職人だったのでしょうか 爪が異様に短いですね」
円谷 理子(つぶらや りこ)「足の方も見てみましょう。何処を歩いてきたかヒントがあるかもしれません」
樺島 一心(かばしま いっしん)「工事現場の土山にいたから泥だらけで、分からないと思いますが」
円谷 理子(つぶらや りこ)「樺島さん、付着している土を見て下さい」
円谷 理子(つぶらや りこ)「この部分と、この部分、違いがわかりますか」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ここは赤土の様で乾いていますね 恐らく工事現場の物だ」
樺島 一心(かばしま いっしん)「こっちは、黒くて湿って、いる?」
円谷 理子(つぶらや りこ)「恐らく工事現場へ来る前に、湿地を通って来たのでしょう」
円谷 理子(つぶらや りこ)「足に草が付着しています」

〇研究施設の一室
円谷 理子(つぶらや りこ)「何の種類の植物か調べてきます 手がかりになるかもしれません」
樺島 一心(かばしま いっしん)「円谷さんは僕達の味方だよ 挨拶くらいはしないと」
樺島 ここね(かばしま ここね)「分かってるけどあの人、色んな意味で怖いだもん」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ここね、円谷さんが戻ってくるまでに予測を立てよう」
樺島 一心(かばしま いっしん)「思うにこの人は弁当屋の店員だったんじゃないかと思うんだ」
樺島 ここね(かばしま ここね)「おにぎりは手で握るし塩もふるもんね」
樺島 一心(かばしま いっしん)「工事現場の周りだけでも店がこんなにあるぞ」
樺島 ここね(かばしま ここね)「一件一件回ってると大変そうだね」
円谷 理子(つぶらや りこ)「結果が出ました。付着していた植物はヒノキゴケでした」
樺島 一心(かばしま いっしん)「コケってあのジメジメした所に生える?」
円谷 理子(つぶらや りこ)「街中には生えない少々珍しい種類のようで・・・マップを貸してください」
円谷 理子(つぶらや りこ)「見てください。工事現場からそう遠くない山に川が流れています」
円谷 理子(つぶらや りこ)「恐らくこの辺りから来たのではないかと」
樺島 一心(かばしま いっしん)「となると、弁当屋はここだけか」
樺島 ここね(かばしま ここね)「うまく握れなくなっているなら、こっちのいなり寿司専門店も怪しいね」
樺島 一心(かばしま いっしん)「さすが円谷さん!ありがとうござ」
円谷 理子(つぶらや りこ)「それにしても驚きですね。ゾンビは自分で制作したものを他人に分け与える、これは今まで明らかになっていない事実で」

〇シックなカフェ
樺島 一心(かばしま いっしん)「迷いゾンビを保護しています。見覚えはありませんか」
弁当屋「この弁当屋を開いてからゾンビになった従業員は一人もおりませんよ」
ゾンビ「あーうー♪」
樺島 一心(かばしま いっしん)「それは失礼。ほ、ほら行きますよ〜」

〇テーブル席
弁当屋「すみませんが、見覚えありませんね」

〇店の入口
樺島 一心(かばしま いっしん)「・・・なぜだ」
樺島 ここね(かばしま ここね)「どっちも違ったね」
樺島 一心(かばしま いっしん)「う〜ん、見当は外れていないと思うんだが」
ゾンビ「うーあー♪」
樺島 ここね(かばしま ここね)「おひとつ召し上がれ♪だって」
樺島 一心(かばしま いっしん)「あ、はぁ、どうも」
樺島 ここね(かばしま ここね)「はあ〜今頃アイスを食べてる筈だったのに」
樺島 ここね(かばしま ここね)「バニラにチョコチップ、抹茶、マンゴー、塩キャラメル〜」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ここね、さっきのマップもう一度見せてくれ」
樺島 一心(かばしま いっしん)「塩は甘い物にも使われるよな」
樺島 ここね(かばしま ここね)「もしかしてアイス屋さん!?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「違うよ、この辺りの甘味屋は一件だけだ」
樺島 ここね(かばしま ここね)「このお店評価高いね! 名物は、店主のおばあちゃんの作る──」
「塩の効いた餡ころ餅」

〇風流な庭園
樺島 一心(かばしま いっしん)「すみませーん!」
樺島 ここね(かばしま ここね)「誰もいないんじゃない?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「どなたかいらっしゃいませんかー!」
亀之井 陽子(かめのい ようこ)「あ、お客さんですか? すみません。うちは閉店していて」
樺島 一心(かばしま いっしん)「突然で申し訳ありません。実は──」
ゾンビ「あーうー♪」
亀之井 陽子(かめのい ようこ)「もしかして、お母さん?」

〇狭い畳部屋
亀之井 陽子(かめのい ようこ)「散々探したのよ」
亀之井 陽子(かめのい ようこ)「もう、会えないと思ってた」
ゾンビ「あーうー♪」
亀之井 陽子(かめのい ようこ)「え?お母さん、泥団子がどうかしたの?」
樺島 一心(かばしま いっしん)「この人達はゾンビになる前の残留思念から、同じ行動を繰り返します」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ここへ来る途中もおひとつ召し上がれ、と皆に泥団子を差し出していました」
亀之井 陽子(かめのい ようこ)「そっか。それ口癖だったもんね」
亀之井 陽子(かめのい ようこ)「皆の笑顔が見たくて、よく試食を配り過ぎちゃってさ」
亀之井 陽子(かめのい ようこ)「おかえり」
樺島 一心(かばしま いっしん)「お母様が作ったあんころ餅、きっと凄くおいしかったんでしょうね」
亀之井 陽子(かめのい ようこ)「ええ、そりゃあもう」
亀之井 陽子(かめのい ようこ)「私なんかじゃ代わりは務まらないくらいに」
ゾンビ「あーうー」
亀之井 陽子(かめのい ようこ)「お母さん、変わらないね。ゾンビになってもずっとこの店が好きなんだ」
亀之井 陽子(かめのい ようこ)「あの、二人共お願いがあるんだけど」

〇広い厨房
亀之井 陽子(かめのい ようこ)「餅を丸めて」
亀之井 陽子(かめのい ようこ)「小豆を茹でる」
亀之井 陽子(かめのい ようこ)「あんこを包む」
亀之井 陽子(かめのい ようこ)「お母さん、手袋つけて丸めて! 今度は泥団子じゃないわよ」
  こねこね

〇水玉2
亀之井 陽子(かめのい ようこ)「じゃーん!」
(え〜っと見た目、さっきの泥団子)
樺島 ここね(かばしま ここね)「でも、クンクン!お兄ちゃん!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「い〜匂いだな〜!」
亀之井 陽子(かめのい ようこ)「これが亀之井の餡ころ餅よ!おひとつ召し上がれ♪」
「ぱくり」
樺島 一心(かばしま いっしん)「しょっぱい!しかし奥深い甘さがある」
樺島 ここね(かばしま ここね)「こんなに、おいしい餡ころ餅食べたことないよ」
ゾンビ「あーうー」
樺島 ここね(かばしま ここね)「合格、だって」
亀之井 陽子(かめのい ようこ)「お母さんが居なくなってからずっと考えていたの。私があんころ餅を作っていいのか」
亀之井 陽子(かめのい ようこ)「でも決心がついたわ!これからは私が亀之井の味を守っていく」
亀之井 陽子(かめのい ようこ)「お店を再開したら遊びに来てね。 二人は、一生餡ころ餅食べ放題よ」
樺島 ここね(かばしま ここね)「本当に!?やった〜!」
樺島 一心(かばしま いっしん)「ここね、今日は連れ回して悪かったな」
樺島 ここね(かばしま ここね)「もういいよ。最後にご褒美があったし」
樺島 ここね(かばしま ここね)「次のデートはここだからねっ」
ゾンビ「うーあー」
亀之井 陽子(かめのい ようこ)「そうだね。お客さんが笑ってるね」
亀之井 陽子(かめのい ようこ)「さあ!開店に向けてやる事いっぱい!頑張るぞー!」

コメント

  • ゾンビの女性が作っていた泥団子はお握りではなく、あんころ餅。
    食べたくなってしまいました……。🤤

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