メイド・ザ・リッパー

雛夢

#01 薄明(脚本)

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雛夢

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〇名門校の校門
北園朝咲「わぁ、ここが峰ヶ丘学園かぁ」
佐倉真桜「朝咲(あさ)お嬢様、段差にお気をつけて」
北園朝咲「あ、うんっ!」
北園朝咲「・・・遂にこの日が来たんだね」
佐倉真桜「はい、お側にいれることを光栄に思います」
北園朝咲「真桜(まお)ってば、表情固いよぉ。 ほら、笑って笑って」
佐倉真桜「あ、う、こう、でしょうか」
北園朝咲「ふふふ、やっぱり真桜の笑顔好きだなぁ。 安心する」
佐倉真桜「ありがとうございます」
北園朝咲「真桜、絶対にプルミエになろうね」
佐倉真桜「はい、お嬢様ならば必ず成し遂げられると信じております」

〇大広間
  全国のお嬢様が上流階級を学ぶために集まる花園、私立峰ヶ丘学園。
  資産家や政治家の愛娘が通うこの学園では、在学中外に出ることは許されていない。
  各自連れてきたメイドと二人一組で寮生活する決まりになっている。
  学園に通うお嬢様たちにはそれぞれランクが付与される。
  その頂上がプルミエである。
  頂上に到達したお嬢さまは絶対的王者に君臨でき、卒園後は上流階級としての未来が約束されることになるのである。
学園長「ここにいる貴女達は現状に満足しない者、何かを変えなくてはいけない者、それぞれ目的のために入園を決意したことでしょう」
北園朝咲(そう、私は北園家再興のためにここへ来た)
北園朝咲(妹の夜留(よる)のため、そして私自身のためにも、この学園で勝ち上がっていかなくてはならない)
学園長「貴女達の中の誰がプルミエにふさわしいのか、しかと見極めさせてもらいます」
北園朝咲(プルミエ・・・必ず・・・!)
学園長「ひとつだけ注意点を申し上げておきます」
学園長「深夜二時から三時にかけては何があっても、学園側は責任を負いません」
学園長「それでは、良き学園生活を──」

〇お嬢様学校
  学園長のスピーチの後、入園式は社交ダンスパーティに時を移している。
佐倉真桜(・・・二時から三時は責任を負わないというのは、どういうことでしょう?)
北園朝咲「真桜見て! あの人、すごい人気だよ」
佐倉真桜「あちらは善哉寺家(ぜんざいじけ)のご息女様ですね」
佐倉真桜「オリンピックのトップスポンサーとして、以前ニュースに出ておりました」
北園朝咲「やっぱりそうだよね!?」
北園朝咲「うわぁ、善哉寺さんだぁ、すっごいなぁ、オーラが違うというか・・・私もあんな風になれるかなぁ」
佐倉真桜「はい、きっと」
北園朝咲「よぉし! 真桜、私たちも踊ろっか!」
佐倉真桜「お相手いたします」
  朝咲と真桜が手を繋ぎ、軽快なステップを踏み始める。
北園朝咲「えへへ、真桜、迷惑かけちゃうかもしれないけど、これからもよろしくね」
佐倉真桜「お嬢様の幸せが私の幸せです。 迷惑なことなどひとつもありません」
  そのとき、庭の中央で驚きの声が上がった。
  騒ぎの中心にいたのは、うずくまった善哉寺だった。
北園朝咲「善哉寺さん!?」
善哉寺鏡日「だ、大丈夫。挫いただけですわ」
北園朝咲「待って、動かさないで」
  朝咲は自分のドレスの裾を破き、手際良く善哉寺の足首に巻いた。
北園朝咲「これで固定できたよ。 はい、私の肩に掴まって」
善哉寺鏡日「あ、ありがとうございます」

〇お嬢様学校
北園朝咲「善哉寺さん、足の具合どう?」
善哉寺鏡日「大丈夫、ただの捻挫ですわ。それよりも、素敵なドレスだったのに・・・」
北園朝咲「私が勝手にやったことだから、気にしないで!」
北園朝咲「憧れの人の助けになれてよかったよ〜」
善哉寺鏡日「まあそんな、憧れだなんて」
北園朝咲「私も善哉寺さんみたいに活躍したいなぁってずっと思ってたんだぁ」
善哉寺鏡日「北園家の秀才にそう言われますと、なんだかむず痒いですわね」
北園朝咲「私のこと知ってるの?」
善哉寺鏡日「もちろん存じていますわ。北園家を躍進させたのは貴女だったのでしょう?」
善哉寺鏡日「一度、お会いしたいと思ってたの」
北園朝咲「うわぁ、感激・・・」
善哉寺鏡日「今日は知り合えてよかったですわ。 これから共に切磋琢磨してまいりましょう」
北園朝咲「うんっ! 頑張ろうね!」

〇寮の部屋(ポスター無し)
北園朝咲「ね、ね、真桜! 善哉寺さんと友達になれちゃったよ、私!」
佐倉真桜「はい、良いスタートを切れましたね」
北園朝咲「しかも私のこと知ってた!」
佐倉真桜「お嬢様のご活躍は広まっているようです」
北園朝咲「えへへ、夜留への良いお土産話が出来たなぁ」
佐倉真桜「そうですね、喜ぶ姿が目に浮かびます」
北園朝咲「・・・ね、真桜」
北園朝咲「夜留のためにも、必ず一位に、プルミエになろうね」
佐倉真桜「はい、必ず」
佐倉真桜「さあお嬢様、もうお休みになって──」
  ジリリリリリリリ
北園朝咲「わっ!?」
  突如鳴り出す部屋の電話に驚く二人。
  時計の針は丁度二時を指している。
佐倉真桜「はい、北園朝咲の寮室です」
善哉寺鏡日「善哉寺です! ごめんなさいこんな時間に」
佐倉真桜「善哉寺様。どうされました?」
善哉寺鏡日「友人と連絡が取れないのよ。あの子、学園の秘密を暴いてきますって言って聞かなくて」
佐倉真桜「秘密?」
善哉寺鏡日「学園長が言ってたでしょう? 二時からは責任を持てないって」
佐倉真桜「それを調べに行ったのですか?」
善哉寺鏡日「きっとそうですわ! もう、わたくし心配で心配で」
佐倉真桜「事情はわかりました」
佐倉真桜「しかし、私はメイドとしての立場上、お嬢様の側を離れるわけには──」
北園朝咲「真桜、行ってきて。 善哉寺さんが困ってるんでしょう?」
北園朝咲「私は大丈夫だから」
佐倉真桜「お嬢様・・・」
佐倉真桜「わかりました」
佐倉真桜「私が出て行ったら鍵をかけてくださいね。念の為、誰が来ても開けないようにお願いします」
北園朝咲「うん、わかった」

〇広い廊下
  真桜は懐中電灯の光を頼りに、真っ暗な廊下を進んでいく。
佐倉真桜「誰か、いるのですか?」
佐倉真桜「・・・・・・」
佐倉真桜(心当たりのある場所は回ったけれど、異常は見られませんね)
佐倉真桜(一度戻って、善哉寺様に報告しましょう)

〇おしゃれな廊下
佐倉真桜(・・・お嬢様のお部屋が開いてる!?)

〇寮の部屋(ポスター無し)
佐倉真桜「お嬢様!?」
  部屋に飛び込んだ真桜が目にしたのは、血まみれで横たわる朝咲の姿だった。
佐倉真桜「あ・・・ああ・・・なんで・・・!?」
北園朝咲「ごめんね・・・真桜」
北園朝咲「開けちゃダメって言われたのに・・・私ね、助けたかったの・・・」
佐倉真桜「喋らないでください! すぐに救急車を呼びますから!」
北園朝咲「善哉寺さんが来て・・・すごく、怯えてて・・・」
???「あらあら、可哀想に」
  廊下の明かりが灯った。
  善哉寺と数名の生徒、そのメイド達が朝咲の部屋の前に立っている。
北園朝咲「ぜん・・・ざいじさん・・・」
佐倉真桜「・・・・・・」
善哉寺鏡日「三時になってしまいましたか。 残念、時間切れですわ」
善哉寺鏡日「もう救急車呼べますわよ。ああ、必要ないかしら。霊柩車も呼べますわ」
佐倉真桜「貴様・・・」
  真桜がゆっくりと立ち上がる。
善哉寺鏡日「あら、いけませんわね。 何をしようというの?」
善哉寺鏡日「この時間の殺しは犯罪ですわ」
佐倉真桜「なんだと」
善哉寺鏡日「まだわからない? 二時から三時は何をやっても許されるのです」
善哉寺鏡日「殺人だってそう、むしろ推奨されていますわ」
佐倉真桜「そんなこと──」
善哉寺鏡日「あるわけない、かしら?」
善哉寺鏡日「でしたら、そこに転がっているお間抜けさんはなに?」
佐倉真桜「貴様、殺すぞ」
善哉寺鏡日「まあ、怖いわ」
  善哉寺をとりまく生徒たちが彼女の前に躍り出る。
善哉寺鏡日「朝咲さん、とっても綺麗なドレスを着る最後の機会だったのに、破いてしまうなんてね」
善哉寺鏡日「ああ可哀想」
北園朝咲「どう・・・して・・・?」
善哉寺鏡日「わたくしを助けるなんて、そんな無礼をこの善哉寺鏡日が許すと思って?」
北園朝咲「そんな・・・理由で?」
善哉寺鏡日「あの世で後悔しなさいな。 それでは、ごきげんよう」
北園朝咲「・・・・・・」
北園朝咲「私、何か間違って・・・たのかなぁ・・・」
佐倉真桜「お嬢様・・・お嬢様ぁ・・・喋らないで、こちらを見てください、ゆっくり息を、息をするんです、大丈夫ですから・・・!」
北園朝咲「ねえ、真桜。笑ってほしいなぁ」
佐倉真桜「・・・ほ、ほら、笑ってますよ。 お嬢様、目をあけてください。お嬢様!」
北園朝咲「・・・真桜の・・・笑顔・・・私ね、大好きなんだぁ・・・」
北園朝咲「夜留を・・・お願いね・・・」
  朝咲の手から力が抜けた。
佐倉真桜「お、じょ、さま・・・」
佐倉真桜「嘘だ・・・逝かないでください・・・お嬢様・・・」
佐倉真桜「うわああああああああああっ!」

〇豪華なベッドルーム
  その頃。北園家の一室で、夜留が眠たげな眼をこすり、ベッドから体を起こした。
北園夜留「ん・・・寝れない」
北園夜留(お姉ちゃん、真桜・・・今頃はどうしてるのかな・・・)

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